極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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 邸の最奥にある応接室では鐘崎と紫月、周に冰といったお馴染みの面々が顔を突き合わせていた。
「は、なるほどな。そいつぁカネにとっても痛えところを突かれたな」
 鐘崎があらかた経緯を話して聞かせた後で、周がやれやれと肩をすくめては微苦笑していた。鐘崎にしてみても、こんなことを包み隠さず話せる相手は周や冰しかいない。当の紫月もまた、亭主を思いやる言葉をかけた。
「そっかぁ、駈飛ちゃんがそんなことをな。まあ俺もあのお嬢さんが遼に気があるんじゃねえかってのは薄々感じてたけどな」
 それは河川敷での一件でも明らかだ。紫月にはあれが鞠愛の仮病だったのだろうことが分かっていたからだ。
「顔色も悪くねえし脈拍も正常だった。俺に対する態度もよそよそしかったからさ。きっとこの子は遼に惚れちまってるんだろうなって思ったよ」
 それでもあの場で仮病と言わずに自律神経が弱っているんだろうと伝えたのは、彼女に恥をかかせない為の紫月なりの優しさだったのだ。
「まあ親父さんの休暇が明ければ、またすぐに海外へ戻ると思ってたから」
 彼女が鐘崎の命の恩人だというのは事実であるし、休暇中のひと時の思い出になってくれればと思い、あまり抵触せずにいたのだそうだ。
「しかしカネにとっちゃ災難というか、一之宮にしても毎度苦労続きだな。こうも次から次へと女にちょっかいを掛けられたんじゃ堪ったもんじゃねえのは確かだ。いくら二人の気持ちがしっかり揺るがねえといっても、おめえらにとっては少なからず気持ちのいいもんじゃねえだろうしな。カネにも一之宮にも気の毒なのは事実だろう」
 周が同情を口にする。
「でも……実際大変ですよね。誰かが鐘崎さんを好きになるのは……まあ、こればかりはどうにもならないというか仕方ないとしても、お二人がご夫婦って分かった時点でお相手の方が察してくれたらというか……諦めてくれるのが一番いいんですけどね」
 冰も何とかいい方法はないかと、我が事のように真剣だ。
「ねえ、白龍だったらそういう時どうする?」
 ふとそんなことを訊いた冰だったが、鐘崎自身はたいそう興味を引かれたのだろう。真顔で周の答えを待っているといった表情をしてみせた。
「そうだな。俺はカネよりも人間がやさしく出来てねえからな。ありのままを告げるのみだ」
「ありのままって?」
「てめえのココにある素直な気持ちを、まんま言葉に出して伝えるってことだ」
 心臓の位置を指でトンと指しながら周は続けた。
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