極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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 辰冨が親娘揃って鐘崎組へとやって来たのはその翌々日のことだった。残り少なくなった休暇を前にして、どうしても話したいことがあるというので、鐘崎は第一応接室にて紫月と共に親娘と対面していた。
「遼二君、実は日本を発つ前に是非ともキミに相談したいことがあってね」
 辰冨は少々言いづらそうにしながらも、ちらりと紫月に視線をやった。どうやら鐘崎のみと話したい様子でいる。
 だが、鐘崎は二人で一緒に聞かせて欲しいと言った。
「私共は一心同体の夫婦です。俺に話していただける事柄であれば、妻にも話していただいて結構です」
 臆することなく堂々と言い切った鐘崎に、辰冨はやや苦笑ながらも分かりましたと言ってうなずいた。
「実はね、キミがその……妻……とおっしゃるお方だが。その方はキミと同じ男性だね?」
「はい、ご覧の通りです。男同士ではありますが、私共は世間一般の夫婦と何ら変わりないと思っております」
「はぁ、それは……そうなんだろうね。実は……失礼ながら調べさせてもらったんだが、戸籍の上ではキミが独身であることは事実だね? 彼、紫月さんとおっしゃったか。その方はキミのお父上と養子縁組をされてはいるが、キミの配偶者でないことは戸籍上明らかだ」
「――辰冨さん」
 さすがにその言い分はないだろうと鐘崎がギュッと拳を握り締める。
「まあ最後まで聞いてくれたまえ。そこでだね、娘とのことを一度考えていただけないだろうか。もちろん今すぐ返事をくれとは言わない。よく考えて、娘とも交流を重ねてもらってからでいいんだ」
 辰冨は、娘はずっと以前からキミに好意を抱いていてね、と言った。
「おそらくはこの子がキミを助けた幼い頃からずっと気に掛けていたんだと思う。大人になってからも事あるごとに日本に帰りたい帰りたいと言い続けてきたものでね。伴侶がいるといっても戸籍の上ではキミはまだ真っ白だ。極道の組を引っ張っていく若頭というお立場が大変なことも、仕事上の都合でパートナーという存在が必要なのも分かっているつもりだ」
 それが鐘崎にとってこの紫月であるのなら、自分たちも理解はできるし寛大な心で見守ることはやぶさかでないと言う。
「どうだろう、すぐに付き合うとか付き合わないとかの話ではなく、ゆっくりと将来を見据えて考えてくれたら嬉しいのだがね。今は良くても後々キミを支える姐さんも必要になってくるだろうし」
 このような話し向きになることは少なからず想像していたものの、まさか戸籍のことまで調べ上げて持ち出してくるとは思わずに、鐘崎も、そして紫月もまたひどく驚かされてしまった。
 だが、そうであれば尚のこときちんと自分たちの意思を伝えねばなるまい。
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