極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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 次の日にはアパートも決まった。結局、鐘崎組で過ごしたのはたったの二日ほどであったが、契約が決まり次第すぐにも引越しとなった。場所は鐘崎組から歩いて行ける近場である。組事務所の二階に登れば目視できる位置というのが、紫月にとっても冰にとっても安心できたことのようだ。
 ただ、一晩泊めてもらった鐘崎組の客室や、これまで住んでいた汐留の邸から比べれば、本当に真逆といっていいくらいの設えである。築年数も経っていて、外観からしてこれまでとはまるで違う。二階建てで、住居数は四世帯が住めるタイプだが、階段などはペンキが剥がれていたりして、洒落ているとは言い難い。紫月は冰が気落ちしないかとそれだけが心配であったが、当の冰は思ったよりもショックを受けなかったようである。
「うわぁ、何だか懐かしい感じ。じいちゃんと住んでたアパートに似てる!」
 香港で黄老人と暮らしていたアパートはもっと大所帯が住めるビルであったが、そちらも築年数はここよりもっと古かった。冰は部屋の中の雰囲気が似ていると言っては、大きな瞳をクリクリと輝かせている。
「お部屋が三つある! 真田さん、どこがいいですか?」
 冰らが住むのは二階だ。どうやら真田に一番好きな部屋を選んでもらいたいらしく、冰がニコニコと笑顔を見せながらひとつひとつ部屋を見て歩いている。その内の二つは寝室にもなる個部屋で、和室と洋室だった。もう一つはダイニングである。大きさはどれも一緒で、六畳ずつといったところだ。
「うは、ベッドを置いてきて良かった。これじゃベッドだけでいっぱいになっちゃう」
 家具類などはすべて汐留に置いてきた為、寝具やダイニングのテーブルなどはこれから揃えることになるのだが、これまで周と共に寝ていたベッドはそれこそ大きくて広かった為、この部屋には不向きだ。
「ベッドじゃなくて布団を敷いて寝た方がいいかも」
 冰は早速買う寝具などを思い描いているようだ。
 結局、真田が和室を取り、周と冰は洋室タイプの方に住まうこととなった。風呂とトイレ、ダイニングは三人で共有である。
「キッチンにはガステーブルも付いているんですね。じゃあ今日からもうお料理できますね!」
 冰はすっかりこれからの生活に馴染み始めているようだが、傍から見ている紫月らにしてみれば、どうしても気の毒な思いが拭えない。今は良くても、ゆくゆく彼が落ち込んだりしないかと危惧が否めなかったからだ。
 荷物を運び入れた後、午後からは寝具やダイニングテーブルなど必需品の買い出しで終わった。
 一文無しになったとはいえ、周の財布に残っていた現金だけは持って出られたとのことで、ふた月くらいは何とかしのげるだろうとのことだった。冰は真田と共になるべく安価で、且つ質もまあまあという家具類を一生懸命になって見繕っていった。寝具や家電製品といった大きい物はもちろんだが、シャンプーや洗剤など細かい備品を入れたら相当な量である。鐘崎自らがワゴン車を運転して、紫月も冰と共に必需品の買い出しに終始付いて回った。
 その夜は紫月らが是非にと言うので、鐘崎組で晩御飯をご馳走になることとなった。食事が済み、アパートに帰る三人を見送る紫月の表情は今にも泣き出しそうであったが、そんな彼の肩を抱きながら鐘崎もまた心の中で『すまない』と思うのだった。
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