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陰謀
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スーリャンを振り返り罵倒を浴びせつつもダーウバンは既に逃げ腰だ。目の前に向かって迫り来る周にどう立ち向かおうかと、この寒空の中、額にはドッと溢れ出た冷や汗がぐっしょりと濡れて滴り落ちる。それでもこの場には七人もの仲間がいることで、よもや負けるとは思っていないのだろう。その仲間たちもすぐに懐から刃物などをちらつかせては、八対一で何ができるわけもなかろうと薄ら笑いを浮かべてよこす。
「落ち着け、ダーウ! マフィアだか何だか知らねえが、たった一人でノコノコ乗り込んで来るなんざ自信過剰もいいところの抜け作だ!」
「違いねえ。てめえがマフィアだっつーだけで何でも思い通りになると勘違いしてやがんじゃねえのか? 俺たちも舐められたもんだぜ! それとも女の手前、ええカッコしいに出てきたってわけかー?」
男たちは言いたい放題だ。やはり他勢に無勢で気がデカくなっているのだろう。調子づいているのは彼らの方だということにすら気付いてもいない。あまりのバカさ加減に呆れを通り越してげんなりとさせられそうだ。誠、馬鹿に付ける薬はないといったところだ。
一方、男たちの意識が一斉に周へと向いたところで、物陰に潜んでいた鐘崎らは皆で加勢のタイミングを打ち合わせていた。人質のあるこの状況下で誰一人とて傷を負うことなく制圧するに当たって、僚一が手順を組み立てていた。
「いいか、皆。相手は八人だ。幸い銃は所持していないようだ」
この時点で銃を隠し持っていれば、必ずこれ見よがしにチラつかせるはずだ。だがダーウバンら八人が八人とも懐から取り出したのは短刀の類のみ――。察するに武器は刃物だけと見受けられる。
「女と息子がいなけりゃ憂いはねえが、ヤツらは皆刃物を所持している。焔が応戦している間に母子を人質に取られる可能性が高い。銃撃で刃物を撃ち落とすにしてもこの暗がりだ――。ひとつ間違えれば女や息子に当たる。そこで――だ。まずは紫月のヤッパで一先ず撹乱してくれ。遼二は他のことに一切気を回さずに紫月の援護のみに集中しろ。紫月が敵の意識を逸らしたと同時に李は母子を保護。俺と曹来で一挙に敵を制圧する」
「了解! 斬り込み隊は引き受ける。あとを頼むぜ」
まず紫月が日本刀で突進、この長刃を見ただけで相手は動揺するはずだ。その隙をついて僚一と曹で迅速に敵を制圧。万が一取り逃したとて、母子の側から連中が離れれば倉庫欄干で待機している狙撃組からも狙いやすくなる。表にはファミリーの側近たちが車を制圧して待ち受けてくれている。李は母子を保護。二人を盾にされる憂いが無くなれば周も動きやすくなろう。
作戦が決まったところで一行は即刻制圧に向けて動き出すこととなった。
闇の中から物音ひとつしない忍びの動作で紫月が長刃を手にして斬り掛かる。静寂の霧の中から突如目の前に現れたような光る切先に、ダーウバンらは絶叫さえ一瞬遅れるほどに驚いては腰を抜かした。
数秒後、何が何やらわけの分からないままに、気付けば自分たちのズボンが床へとずり落ちたり、長髪を結っていた者はそのゴム紐が飛んでバサリと髪が垂れたりしたことに気がついて絶句――。闇の中に光る切先の動きだけがスローモーションのように視界を脅かす。手にしていたはずのナイフもいつの間に落としたのか見当たらず、やっとのことで誰かに斬り掛かられたのだと気付いた時には鐘崎親子と曹らによって意識を刈り取られていた。
「落ち着け、ダーウ! マフィアだか何だか知らねえが、たった一人でノコノコ乗り込んで来るなんざ自信過剰もいいところの抜け作だ!」
「違いねえ。てめえがマフィアだっつーだけで何でも思い通りになると勘違いしてやがんじゃねえのか? 俺たちも舐められたもんだぜ! それとも女の手前、ええカッコしいに出てきたってわけかー?」
男たちは言いたい放題だ。やはり他勢に無勢で気がデカくなっているのだろう。調子づいているのは彼らの方だということにすら気付いてもいない。あまりのバカさ加減に呆れを通り越してげんなりとさせられそうだ。誠、馬鹿に付ける薬はないといったところだ。
一方、男たちの意識が一斉に周へと向いたところで、物陰に潜んでいた鐘崎らは皆で加勢のタイミングを打ち合わせていた。人質のあるこの状況下で誰一人とて傷を負うことなく制圧するに当たって、僚一が手順を組み立てていた。
「いいか、皆。相手は八人だ。幸い銃は所持していないようだ」
この時点で銃を隠し持っていれば、必ずこれ見よがしにチラつかせるはずだ。だがダーウバンら八人が八人とも懐から取り出したのは短刀の類のみ――。察するに武器は刃物だけと見受けられる。
「女と息子がいなけりゃ憂いはねえが、ヤツらは皆刃物を所持している。焔が応戦している間に母子を人質に取られる可能性が高い。銃撃で刃物を撃ち落とすにしてもこの暗がりだ――。ひとつ間違えれば女や息子に当たる。そこで――だ。まずは紫月のヤッパで一先ず撹乱してくれ。遼二は他のことに一切気を回さずに紫月の援護のみに集中しろ。紫月が敵の意識を逸らしたと同時に李は母子を保護。俺と曹来で一挙に敵を制圧する」
「了解! 斬り込み隊は引き受ける。あとを頼むぜ」
まず紫月が日本刀で突進、この長刃を見ただけで相手は動揺するはずだ。その隙をついて僚一と曹で迅速に敵を制圧。万が一取り逃したとて、母子の側から連中が離れれば倉庫欄干で待機している狙撃組からも狙いやすくなる。表にはファミリーの側近たちが車を制圧して待ち受けてくれている。李は母子を保護。二人を盾にされる憂いが無くなれば周も動きやすくなろう。
作戦が決まったところで一行は即刻制圧に向けて動き出すこととなった。
闇の中から物音ひとつしない忍びの動作で紫月が長刃を手にして斬り掛かる。静寂の霧の中から突如目の前に現れたような光る切先に、ダーウバンらは絶叫さえ一瞬遅れるほどに驚いては腰を抜かした。
数秒後、何が何やらわけの分からないままに、気付けば自分たちのズボンが床へとずり落ちたり、長髪を結っていた者はそのゴム紐が飛んでバサリと髪が垂れたりしたことに気がついて絶句――。闇の中に光る切先の動きだけがスローモーションのように視界を脅かす。手にしていたはずのナイフもいつの間に落としたのか見当たらず、やっとのことで誰かに斬り掛かられたのだと気付いた時には鐘崎親子と曹らによって意識を刈り取られていた。
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