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陰謀
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「そんなお前が大人になり、俺を訪ねてくれた時は本当に嬉しかった。ずっと思い描いてきたお前の側で暮らすということが叶ったのだ。俺の出来得る限りのすべてを捧いでお前を幸せにしてやりたい。美味いものを食わせてやりたい、欲しい物があれば与えてやりたい、快適な暮らしをさせてやりたい、そんな思いは俺の生きる糧にもなった。共に過ごす内に――肉親的な可愛さや愛情といった気持ち以上に大きな恋情を抱いていることにも気付いた。俺はお前を――お前のすべてを、気持ちも身体もすべてを自分に向けてもらいたいと思うようになった」
自分だけを見つめ、慕い、頼みにし、いつでも側でその可愛らしい笑顔を見せて欲しい。そんなふうに望んだ。彼もまた自分と同じように気持ちを傾けてくれていることが分かった時は本当に嬉しかった。高揚し、気持ちだけではなく身体も――すべてを手に入れたい、生涯を共にしたいと思ったものだ。
「俺は――お前を誰よりも何よりも可愛いと思っている。この世で唯一無二の、何ものにも変え難い――自分の命よりも大切な存在だと思い、心から愛している。だがそれ以上に――もっと深い……どういうふうに伝えればいいのか分からないほどの思いがあるのだということに気がついたんだ」
「白……龍……?」
愛情以上の思い――それはいったいどういうことなのだろう。少しの不安と不思議な気持ちに瞳を揺らしながら、冰は愛しい亭主を見上げた。
「愛している、可愛い、好きだ――すべてを我がものにしてこの腕の中に閉じ込めておきたい。誰にも渡したくはない。俺はずっとそんな強欲な愛情を抱いてきた。だが――それと同時に、俺はお前を――敬ってやまない気持ちが大きいのだと気付き、今……この気持ちをどう伝えればいいのか戸惑っている」
「白龍……そんな……」
敬うだなんて――畏れ多いよ! そんな思いに頬はボッと真っ赤に染まり、恐縮して顔さえまともに見られないまま、冰はしどろもどろで視線を泳がせた。
だが周は大真面目な表情でじっと――射るように見つめてよこし、続けた。
「俺は――お前を心の底から敬ってやまない。これまで――欲しいと思う気持ちのままに我が物顔で抱いてきたことが悔やまれるほどに、触れることさえ畏れ多く尊いと思う。今のこの気持ちを――どんな言葉で伝えればいいのか分からないこんな俺だが――生涯ずっと側で生きていきたい。妾腹として生まれ、自分自身でも周囲からも望まれていない人間なのではないかと思ったこともあった。そんな俺がこの世に生を受けた意味があるならば、それはすべて唯一人の為なのだと、そう思うのだ」
そっと、言葉通りに畏れ多いといったようにわずか震える指で手を取られ、敬うように手の甲にくちづけられた。
「冰――俺はお前を、いや――あなたを――心から尊く思い、愛している」
膝を折って、まるで従者か騎士のように体全体で敬意を表す。そんな亭主の姿に、思わず込み上げた熱い雫がポロポロとこぼれては冰の色白の頬を伝った。
自分だけを見つめ、慕い、頼みにし、いつでも側でその可愛らしい笑顔を見せて欲しい。そんなふうに望んだ。彼もまた自分と同じように気持ちを傾けてくれていることが分かった時は本当に嬉しかった。高揚し、気持ちだけではなく身体も――すべてを手に入れたい、生涯を共にしたいと思ったものだ。
「俺は――お前を誰よりも何よりも可愛いと思っている。この世で唯一無二の、何ものにも変え難い――自分の命よりも大切な存在だと思い、心から愛している。だがそれ以上に――もっと深い……どういうふうに伝えればいいのか分からないほどの思いがあるのだということに気がついたんだ」
「白……龍……?」
愛情以上の思い――それはいったいどういうことなのだろう。少しの不安と不思議な気持ちに瞳を揺らしながら、冰は愛しい亭主を見上げた。
「愛している、可愛い、好きだ――すべてを我がものにしてこの腕の中に閉じ込めておきたい。誰にも渡したくはない。俺はずっとそんな強欲な愛情を抱いてきた。だが――それと同時に、俺はお前を――敬ってやまない気持ちが大きいのだと気付き、今……この気持ちをどう伝えればいいのか戸惑っている」
「白龍……そんな……」
敬うだなんて――畏れ多いよ! そんな思いに頬はボッと真っ赤に染まり、恐縮して顔さえまともに見られないまま、冰はしどろもどろで視線を泳がせた。
だが周は大真面目な表情でじっと――射るように見つめてよこし、続けた。
「俺は――お前を心の底から敬ってやまない。これまで――欲しいと思う気持ちのままに我が物顔で抱いてきたことが悔やまれるほどに、触れることさえ畏れ多く尊いと思う。今のこの気持ちを――どんな言葉で伝えればいいのか分からないこんな俺だが――生涯ずっと側で生きていきたい。妾腹として生まれ、自分自身でも周囲からも望まれていない人間なのではないかと思ったこともあった。そんな俺がこの世に生を受けた意味があるならば、それはすべて唯一人の為なのだと、そう思うのだ」
そっと、言葉通りに畏れ多いといったようにわずか震える指で手を取られ、敬うように手の甲にくちづけられた。
「冰――俺はお前を、いや――あなたを――心から尊く思い、愛している」
膝を折って、まるで従者か騎士のように体全体で敬意を表す。そんな亭主の姿に、思わず込み上げた熱い雫がポロポロとこぼれては冰の色白の頬を伝った。
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