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三千世界に極道の涙
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続いて周がその後の心境を想像してみせた。
「汰一郎は源次郎氏のお陰で無事に修業、就職して地道にやっていた。そんな中で偶然、二十年前の犯人・代田憲に再会した。きっとえらく驚いたことだろうな。と同時に、薄れていた記憶が蘇ったとしても不思議はねえ」
つまり、その時点で汰一郎が復讐を決意したとするなら、この偶然の再会がきっかけとなったのはほぼ間違いないだろう。皆から意見が出たところで、鄧が次なる段階へと話を進める。
「では、今度は町永汰一郎がなぜ代田憲を地下遊郭街に誘ったのか、その理由を考えてみることにいたしましょう」
「そうだな……証券会社と銀行で同じ営業マンであっても、仕事の上では大して接点が持てなかったのかも知れん。もっと代田に近付いて懇意になることで、ひょっとしたら二十年前の事件の話が出るかも知れないと思った――とか」
「そっか、そしたら当時の代田が何で父親を刺したりしたのか、その理由つか、当時の心境が聞けるかも知れないと思ったのかもな」
「そうですよね。何でお父さんが刺されなきゃならなかったのか、知りたいと思うのは当然だと思います」
「確かにな。代田の口から当時の心境を聞き出す為に地下遊郭街に誘って飲み仲間になるってのは一理あるだろうな」
これでひとまず汰一郎が代田を地下街に誘った理由は想像できた。
「では次に、懇意になった後、町永汰一郎はどうするつもりだったのかを考えてみましょう」
鄧が次の段階へと話を進めていく。
「そうだな。汰一郎の身になれば、やはり何らかの形で代田に復讐したいと考えたとしても不思議はねえといったところか――。例えばそれが極論の殺害ではないにしろ、代田の人生をちょっとばかし狂わせてやりてえ――くらいには思ったかも知れん」
鐘崎がテーブルに肘をつきながらそんな想像を口にする。周が続けた。
「とすれば、一之宮が言っていたように地下街で暴れた代田がパクられて、マスコミに取り上げられ、親子共々失脚させるってなところが妥当かも知れんな」
ところが当の紫月はまた違う考えも浮かび出したそうだ。
「まあなぁ……俺も確かに昨日はそう思ったんだけどー。でも、代田がパクられるように仕向けるだけだったら、わざわざあの地下街じゃなくても良くね? 汰一郎にとっちゃ結婚したい涼音がいる地下街だぜ? 彼女が危険な目に遭うかも知れないところよか、地上にだってバーやクラブはいくらもあるじゃねえの」
紫月曰く、昨日の時点では汰一郎の結婚相手があの地下街にいることを知らなかったからそんなふうに思ったらしい。
「紫月さんの言う通りですよ。わざわざ自分の彼女さんがいるお店を紹介して暴れさせるなんて……本当に彼女さんを大切に思うならそんなことしないと思います!」
冰も意気込んでそんなことを言う。
「ということは、汰一郎にはあの地下街でなければならない理由が別にある――ということになりますかね。あるいは、涼音といい仲になったのは代田を地下街へ誘い込んだ後だったという可能性も残ってはいますが」
鄧は一旦、地下街については置いておくとして、次に汰一郎が鐘崎組に盗聴器を仕掛けた件について想像してみましょうと促した。
「汰一郎は源次郎氏のお陰で無事に修業、就職して地道にやっていた。そんな中で偶然、二十年前の犯人・代田憲に再会した。きっとえらく驚いたことだろうな。と同時に、薄れていた記憶が蘇ったとしても不思議はねえ」
つまり、その時点で汰一郎が復讐を決意したとするなら、この偶然の再会がきっかけとなったのはほぼ間違いないだろう。皆から意見が出たところで、鄧が次なる段階へと話を進める。
「では、今度は町永汰一郎がなぜ代田憲を地下遊郭街に誘ったのか、その理由を考えてみることにいたしましょう」
「そうだな……証券会社と銀行で同じ営業マンであっても、仕事の上では大して接点が持てなかったのかも知れん。もっと代田に近付いて懇意になることで、ひょっとしたら二十年前の事件の話が出るかも知れないと思った――とか」
「そっか、そしたら当時の代田が何で父親を刺したりしたのか、その理由つか、当時の心境が聞けるかも知れないと思ったのかもな」
「そうですよね。何でお父さんが刺されなきゃならなかったのか、知りたいと思うのは当然だと思います」
「確かにな。代田の口から当時の心境を聞き出す為に地下遊郭街に誘って飲み仲間になるってのは一理あるだろうな」
これでひとまず汰一郎が代田を地下街に誘った理由は想像できた。
「では次に、懇意になった後、町永汰一郎はどうするつもりだったのかを考えてみましょう」
鄧が次の段階へと話を進めていく。
「そうだな。汰一郎の身になれば、やはり何らかの形で代田に復讐したいと考えたとしても不思議はねえといったところか――。例えばそれが極論の殺害ではないにしろ、代田の人生をちょっとばかし狂わせてやりてえ――くらいには思ったかも知れん」
鐘崎がテーブルに肘をつきながらそんな想像を口にする。周が続けた。
「とすれば、一之宮が言っていたように地下街で暴れた代田がパクられて、マスコミに取り上げられ、親子共々失脚させるってなところが妥当かも知れんな」
ところが当の紫月はまた違う考えも浮かび出したそうだ。
「まあなぁ……俺も確かに昨日はそう思ったんだけどー。でも、代田がパクられるように仕向けるだけだったら、わざわざあの地下街じゃなくても良くね? 汰一郎にとっちゃ結婚したい涼音がいる地下街だぜ? 彼女が危険な目に遭うかも知れないところよか、地上にだってバーやクラブはいくらもあるじゃねえの」
紫月曰く、昨日の時点では汰一郎の結婚相手があの地下街にいることを知らなかったからそんなふうに思ったらしい。
「紫月さんの言う通りですよ。わざわざ自分の彼女さんがいるお店を紹介して暴れさせるなんて……本当に彼女さんを大切に思うならそんなことしないと思います!」
冰も意気込んでそんなことを言う。
「ということは、汰一郎にはあの地下街でなければならない理由が別にある――ということになりますかね。あるいは、涼音といい仲になったのは代田を地下街へ誘い込んだ後だったという可能性も残ってはいますが」
鄧は一旦、地下街については置いておくとして、次に汰一郎が鐘崎組に盗聴器を仕掛けた件について想像してみましょうと促した。
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