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三千世界に極道の涙
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「この店ってヤるのもオッケだったよなー? 俺ら六人いるけど、天下の花魁ならそんくらい相手にすんのワケねえだろ? 俺たちゃ皆んなアッチの方のテクも上手いしさ! 花魁の姉ちゃんにもいい思いさしてやるし!」
なんと、六人で花魁を輪姦しようとでも言わんばかりだ。
鐘崎にとってはこの場で即刻叩き斬ってやってもいい――そんな気にさせられたが、当の紫月は面白がって座敷の最奥から立ち上がってみせた。
「おやまぁ、何ともそれは面白いご提案でありんすねえ。受けて立ちましょ」
膝を降り、高身長を悟られないように歩きながら、手にしていた扇を開いては、優雅な仕草でヒラヒラと仰ぎながらやって来て、壺振りの脇へと腰を下ろしてみせた。
代田らは快諾に上機嫌でいたが、次の瞬間、目を疑うこととなる。花魁が下男に向かって賭け金の札束を用意させたからである。その額なんと、これまで代田らが稼いだ倍は優にあるというほどの現生であった。
「主さん、いかがです? わちきとサシで勝負と参りゃせんか?」
「……は? てめ……いったいどういうつもりでいやがる……」
さすがの代田も腰が引けた様子でいる。言葉じりは威勢がいいものの、声は明らかにうわずっている。
「主さんが勝てばコレとわちきは主さんたちのモノでありんすよ」
それまで仰いでいた扇を閉じて、スイとそれで札束の山を指す。代田がゴクリと生唾を呑み込むのが見てとれた。
「……は……ッ、ちょ、調子コキやがる……。そ、その代わり……俺が勝ったらその金全部よこせよ? ハッタリで『やっぱり無かったことにしましょう』なんて冗談じゃ済まねえからな……! それに――お前も俺たち全員でヤってやる! 一晩中嬲ってやっからな! それで間違いねえな……!?」
代田にとってはこれでも精一杯の粋がりなのだろうが、所詮は素人のチンピラだ。いかに丁寧な女言葉を使おうとも本物の極道の前では敵おうわけもないのだ。紫月も鐘崎らもこれまでは極力地を見せないようにしていたわけだが、やはり隠し通せないオーラが目に見えない光背の如く背中に漂っているのかも知れない。
「ようござんすよ。わちきは一度申し上げたこと、違えるなんてしやしません」
紫月は気品高くニコリと微笑んでみせた。
それと同時に壺振り冰の視線もまた、これまでとは打って変わって圧を纏う。ギラリと光るその上目遣いの瞳は薄く笑みを讃えていて、まるで『勝てると思うな』とでも言われているようだ。代田らは完全に腰が引けたようにして、勝負前からガクガクと足腰を震わせてしまった。
「か、構わねえ! どうせ負けたところでツケは町永が負うだけだ……! やってやろうじゃねえか!」
まるで武者震いのように全身をブルリとさせては、勢いよく賭場の上で片足をついてみせた。
「ほほ、威勢のよろしいこと。泣いても笑っても恨みっこなしで――ねえ、主さん?」
再び扇を広げてはヒラヒラと仰ぐ。
「どちらさんもようござんすか? では――入ります」
冰の白魚のような手にはおおよそ似合わないドスの効いた声色が座敷に響き渡った。
なんと、六人で花魁を輪姦しようとでも言わんばかりだ。
鐘崎にとってはこの場で即刻叩き斬ってやってもいい――そんな気にさせられたが、当の紫月は面白がって座敷の最奥から立ち上がってみせた。
「おやまぁ、何ともそれは面白いご提案でありんすねえ。受けて立ちましょ」
膝を降り、高身長を悟られないように歩きながら、手にしていた扇を開いては、優雅な仕草でヒラヒラと仰ぎながらやって来て、壺振りの脇へと腰を下ろしてみせた。
代田らは快諾に上機嫌でいたが、次の瞬間、目を疑うこととなる。花魁が下男に向かって賭け金の札束を用意させたからである。その額なんと、これまで代田らが稼いだ倍は優にあるというほどの現生であった。
「主さん、いかがです? わちきとサシで勝負と参りゃせんか?」
「……は? てめ……いったいどういうつもりでいやがる……」
さすがの代田も腰が引けた様子でいる。言葉じりは威勢がいいものの、声は明らかにうわずっている。
「主さんが勝てばコレとわちきは主さんたちのモノでありんすよ」
それまで仰いでいた扇を閉じて、スイとそれで札束の山を指す。代田がゴクリと生唾を呑み込むのが見てとれた。
「……は……ッ、ちょ、調子コキやがる……。そ、その代わり……俺が勝ったらその金全部よこせよ? ハッタリで『やっぱり無かったことにしましょう』なんて冗談じゃ済まねえからな……! それに――お前も俺たち全員でヤってやる! 一晩中嬲ってやっからな! それで間違いねえな……!?」
代田にとってはこれでも精一杯の粋がりなのだろうが、所詮は素人のチンピラだ。いかに丁寧な女言葉を使おうとも本物の極道の前では敵おうわけもないのだ。紫月も鐘崎らもこれまでは極力地を見せないようにしていたわけだが、やはり隠し通せないオーラが目に見えない光背の如く背中に漂っているのかも知れない。
「ようござんすよ。わちきは一度申し上げたこと、違えるなんてしやしません」
紫月は気品高くニコリと微笑んでみせた。
それと同時に壺振り冰の視線もまた、これまでとは打って変わって圧を纏う。ギラリと光るその上目遣いの瞳は薄く笑みを讃えていて、まるで『勝てると思うな』とでも言われているようだ。代田らは完全に腰が引けたようにして、勝負前からガクガクと足腰を震わせてしまった。
「か、構わねえ! どうせ負けたところでツケは町永が負うだけだ……! やってやろうじゃねえか!」
まるで武者震いのように全身をブルリとさせては、勢いよく賭場の上で片足をついてみせた。
「ほほ、威勢のよろしいこと。泣いても笑っても恨みっこなしで――ねえ、主さん?」
再び扇を広げてはヒラヒラと仰ぐ。
「どちらさんもようござんすか? では――入ります」
冰の白魚のような手にはおおよそ似合わないドスの効いた声色が座敷に響き渡った。
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