極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,148 / 1,212
封印せし宝物

20

しおりを挟む
「笑うな! てめえだって似たようなもんだろうが」
「ふ――俺は紳士だからな。てめえと一緒にするな。しかしてめえもいい歳こいて張り切るなぁ。一之宮がよく野獣だなんだと騒いでるが、まさにその通りってか」
「いい歳とはご挨拶だな! 俺はまだまだ若いっての! それに――野獣ってのはある意味褒め言葉だろうが」
 いつまで経っても嫁にぞっこんというのは誇れることだと、鐘崎は鐘崎で鼻息を荒くしている。旦那たちのくだらない会話の側で、冰は頬を染めて恥ずかしそうにモジモジと視線を泳がせるばかりだ。
「ふむ、カネ! 今夜の寝る場所だが――」
 突如真顔になったかと思うと、周は広大なベッドを指差しながら、『ふふん!』と堂々胸を張ってみせた。
「いいか、こっちから冰、俺、おめえ、一之宮の順だからな!」
 つまり冰には触れさせんぞとばかりの勢いで、お返しとばかり鼻息を荒くして見せているのだ。
「おいおい……俺が冰に手を出すとでも思ってんのか?」
「なんせ野獣だからな。油断はできん」
「バカぬかせ! 俺ァそんな……」
 まさにくだらない言い合いに、紫月と冰は大爆笑させられてしまった。
 皆でワイワイ、たわいのないひと時が冰の心を癒す。こうして騒いでいる間は例の不安もすっかり忘れてしまうほどだった。

 次の日、四人でブランチを摂りながら周が言った。
「冰、そろそろ清明節も近い。黄のじいさんの墓参りがてら一度香港に帰るか」
「……え? でも……」
 清明節というのは日本でのお盆のようなものだ。先祖を思い、お参りして過ごす、香港に住む者にとっての大切な日である。墓参りに行こうと言ってくれる周の気持ちは有難いことこの上ないのだが、ただその頃はちょうど入社式の直後で、それなりに忙しいはずだ。そんな時期に社を空けてしまっていいのかと戸惑うような表情を見せた冰に、周はやわらかに微笑んだ。
「まあ確かにな。社の方もそう長く空けるわけにはいかんから、週末の連休を利用してほんの三日程度になると思うが――」
 とんぼ帰りで慌ただしいかも知れないがと言う周に、冰は嬉しそうに頬を染めては小さくうなずいた。
「ありがと、白龍。会社の方が大丈夫なら俺はすごく嬉しいよ」
「実はな、前々からいつかお前にプレゼントしたいと思っていたものがあってな」
「プレゼント……? 俺に?」
「そうだ。清明節はちょうど良い機会だ。香港に行ったら渡したい」
 それを聞いた鐘崎と紫月も、それだったら自分たちも是非同行したいと言い出した。
「じゃあ四人で行くか! 今回は仕事絡みじゃねえし、特にこれをしなきゃいけねえってな予定もない。ゆっくりできるだろう。時間的には忙しねえかも知れんが、水入らずで週末を過ごすのもたまにはいいじゃねえか」
「うん。鐘崎さんと紫月さんも一緒なら楽しいね!」
 冰は嬉しそうだ。
「よし、決まりだ!」
 こうして四人は急遽香港への小旅行に出掛けることとなったのだった。



◇    ◇    ◇


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...