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封印せし宝物
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香港――。
あれから冰の精神状態は比較的落ち着いていた。近く皆で香港への小旅行という楽しみが不安を軽減させたのだろう。周は普段と変わりなく過ごしながらも、極力冰の側でぴったりとスキンシップを増やしながら見守るように心掛けていた。寝る時もしっかり手を繋ぎ、社への行き帰りなど連絡通路を歩く時も体温を感じられるくらいの近い位置で肩を抱きながら過ごした。冰にとってはいつでも周という大いなる存在が側に在るといったことで、安心感を覚えたようだった。
そして待ちに待った清明節の日、今回も周のプライベートジェットで空港へと降り立った四人は、早速に黄老人の墓参りへと向かった。
「前にここへ来たのは去年の夏だったな。あの時はちょうど――俺も気持ちの整理ができなくて苦しかった時だった」
墓の前で手を合わせながら鐘崎がそうつぶやいた。当時、紫月が逆恨みによって誘き出され、命を狙われたという非常に重い事件の直後だった。少しでも気持ちが落ち着けばいいと、周と冰で鐘崎らをこの香港への休暇旅行に誘ったのだ。その時も鐘崎はこうして黄老人の墓の前で手を合わせながら、長い間じっと何かを祈るようにしていたのをよく覚えている。
「俺は黄のじいさんに会ったことはなかったが、氷川を通して冰と知り合って――冰のやさしい性質や、どんな困難なことにぶち当たってもその時々で非常に賢明な判断をし、例え理不尽な悪党相手でも真っ直ぐに向き合う様をこの目で見てきた。そんなふうに冰を育てた黄のじいさんが生きていたら――俺にどんな言葉を掛けてくれただろうかと思ったものだ」
縋るような気持ちで天国のじいさんに話し掛けたのだと言って鐘崎は瞳を細めた。
「あの時、迷いの中にいて藻搔いていた俺を――氷川や冰、そして紫月や皆が支えてくれた。自分を取り戻すきっかけをくれた。どんなに有難かったか知れねえ。今こうして――またお前らと共に黄のじいさんに会いに来られたのも、皆のお陰だと思っている」
感謝している――鐘崎はそう言って今一度老人の墓に手を合わせた。
そんな様子を見つめながら、冰もまたあたたかい皆に囲まれて過ごしていられる幸せをしみじみと感じるのだった。
「あの――鐘崎さん、紫月さん、それに白龍。それは俺も同じです」
うつむきながらもそう言った冰に、三人はハタと彼を見やった。
「このところずっと……皆さんに心配を掛けてしまっていると思ってます、俺……」
「冰――お前……」
「紫月さんがお食事に誘ってくれた時、俺……変なこと言っちゃって。白龍も鐘崎さんも……もう知ってるんですよね? 鐘崎さんたちが汐留のお家に泊まってくれたり、白龍には忙しい時期にこうして香港にまで連れて来てもらったり、心配掛けてると思ってます。ごめんなさい、俺……」
冰には紫月を通してあの昼食の際に言ったことが周や鐘崎に伝わっているはずだと分かっていたようだ。もちろん紫月が告げ口をしたなどと思っているわけじゃなく、心から心配してくれているからこそ周らに報告してくれたのだと理解していた。もしも逆の立場だったら自分もそうすると思うからだ。
あれから冰の精神状態は比較的落ち着いていた。近く皆で香港への小旅行という楽しみが不安を軽減させたのだろう。周は普段と変わりなく過ごしながらも、極力冰の側でぴったりとスキンシップを増やしながら見守るように心掛けていた。寝る時もしっかり手を繋ぎ、社への行き帰りなど連絡通路を歩く時も体温を感じられるくらいの近い位置で肩を抱きながら過ごした。冰にとってはいつでも周という大いなる存在が側に在るといったことで、安心感を覚えたようだった。
そして待ちに待った清明節の日、今回も周のプライベートジェットで空港へと降り立った四人は、早速に黄老人の墓参りへと向かった。
「前にここへ来たのは去年の夏だったな。あの時はちょうど――俺も気持ちの整理ができなくて苦しかった時だった」
墓の前で手を合わせながら鐘崎がそうつぶやいた。当時、紫月が逆恨みによって誘き出され、命を狙われたという非常に重い事件の直後だった。少しでも気持ちが落ち着けばいいと、周と冰で鐘崎らをこの香港への休暇旅行に誘ったのだ。その時も鐘崎はこうして黄老人の墓の前で手を合わせながら、長い間じっと何かを祈るようにしていたのをよく覚えている。
「俺は黄のじいさんに会ったことはなかったが、氷川を通して冰と知り合って――冰のやさしい性質や、どんな困難なことにぶち当たってもその時々で非常に賢明な判断をし、例え理不尽な悪党相手でも真っ直ぐに向き合う様をこの目で見てきた。そんなふうに冰を育てた黄のじいさんが生きていたら――俺にどんな言葉を掛けてくれただろうかと思ったものだ」
縋るような気持ちで天国のじいさんに話し掛けたのだと言って鐘崎は瞳を細めた。
「あの時、迷いの中にいて藻搔いていた俺を――氷川や冰、そして紫月や皆が支えてくれた。自分を取り戻すきっかけをくれた。どんなに有難かったか知れねえ。今こうして――またお前らと共に黄のじいさんに会いに来られたのも、皆のお陰だと思っている」
感謝している――鐘崎はそう言って今一度老人の墓に手を合わせた。
そんな様子を見つめながら、冰もまたあたたかい皆に囲まれて過ごしていられる幸せをしみじみと感じるのだった。
「あの――鐘崎さん、紫月さん、それに白龍。それは俺も同じです」
うつむきながらもそう言った冰に、三人はハタと彼を見やった。
「このところずっと……皆さんに心配を掛けてしまっていると思ってます、俺……」
「冰――お前……」
「紫月さんがお食事に誘ってくれた時、俺……変なこと言っちゃって。白龍も鐘崎さんも……もう知ってるんですよね? 鐘崎さんたちが汐留のお家に泊まってくれたり、白龍には忙しい時期にこうして香港にまで連れて来てもらったり、心配掛けてると思ってます。ごめんなさい、俺……」
冰には紫月を通してあの昼食の際に言ったことが周や鐘崎に伝わっているはずだと分かっていたようだ。もちろん紫月が告げ口をしたなどと思っているわけじゃなく、心から心配してくれているからこそ周らに報告してくれたのだと理解していた。もしも逆の立場だったら自分もそうすると思うからだ。
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