極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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「俺もちょっとマズイ話向きだなって思ったんだけども。けどまあ、社交辞令とも受け取れるし、実際ホントに飲みに行ってる暇なんてのはねえだろうなって思ってさ」
 その場の話で盛り上がっただけで三春谷の方でも仕事に結婚準備にと忙しいのは事実だろう。紫月としては実際に三春谷がいつどこどこで――などと本当に飲みに行くつもりでもないだろうと思っているようだ。
「ふむ、そうだな。まあもし――またその三春谷ってのが声を掛けてくるようなら一度くれえは付き合うことになることも念頭においておかにゃならんか――」
 鐘崎はその際、自分が行ければ一緒に行くとして、もしも都合が付かなければ春日野や橘といったお付きと一緒に行かせるかと言った。
「うん、まあそん時はまたおめえに相談するさ」
「ああ、そうだな」
「それよか晩飯! 今日はおめえン好きなハンバーグにしたぜー!」
「おお、そいつぁ楽しみだ」
 以後、三春谷については話題に上がらないまま、夫婦水入らずの夕膳を楽しんだのだった。

 翌朝、鐘崎は紫月側付きの春日野に話を通すことにした。何事につけても備えあれば憂いなしだからだ。
 春日野は自治会の飾り付けで三春谷と偶然会った時にも紫月と一緒にいたわけだし、その三春谷のことも当然目にしているだろう。その時の様子なども聞いておくに越したことはない。春日野もまた、三春谷と会ったことははっきり覚えていたようだ。
「ああ、姐さんの後輩だったという方のことですね。今は都内の建築会社に勤めているとおっしゃってました。割合残業が多いらしく、通勤時間を考慮して都内住みになさったとか」
 見たところ普通の青年でしたよと、春日野自身特には気に掛かったところもないようだ。
「ただ――そうですね。姐さんに会えてすごく嬉しいといった感情は感じましたが」
 多少興奮気味ではあったが、十何年ぶりというならそれもうなずけるかと思ったそうだ。
「ふむ、そうか――」
 鐘崎はその三春谷があの後道場を訪ねて来たことと、結婚祝いで飲みに行きたいと言ったことなども話し、一応気に掛けておいてやって欲しいと伝えた。
「承知いたしました。心に留めておきます」
 この春日野はまだ若いが実にしっかりとした考えの持ち主だ。実家が任侠一家というのもあり、裏の世界のことにも精通している。だからこそ紫月の側役に置いているわけだが、とにかく彼に任せておけば鐘崎としても安心できるといったところなのだ。

 それから半月程は何事もなく過ぎた。次の週にも三春谷は訪ねて来なかったし、やはり単なる社交辞令だったのだろうと思っていた時だった。再び三春谷から道場に連絡が来たというのだ。今度は電話だったそうだ。
 高校時代の伝手で電話番号を調べたのか、あるいは道場としては公の案内にも載っているのでそれ自体調べるのは誰にでも可能といえる。
 綾乃木が出て、今紫月は外出していると伝えると、自身の携帯番号を告げて折り返して欲しいと言ったそうだ。綾乃木もまた、先々週に突然訪ねて来た紫月の後輩というのは分かっていたので、とにかくは要件を聞いて通話を切ったそうだ。
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