5 / 25
4章 ー 戦士 ー
しおりを挟む
「これからはハルも俺たちの仲間ってわけだな」
アゲパンが座学の休憩時間に俺へ声を掛けた。
「これからは、って、今までは仲間じゃなかったみたいな言い方だな」
笑うアゲパン。
「あっはっは、そうだぜ。今までは仲間っていうより、雲の上の人って感じだったからな」
「雲の上の人って、どういうことだよ」
「なんつーかさ、俺らのことを見下してるっていうか、相手にしてないような感じだったんだ」
「貴族ってだけでそうなるものか?」
「俺はそういうイメージだけどな、おい、マイクロジャムはどう思う?」
席が少し離れた斜め前のところへ声を掛けるアゲパン。
「え? なにが?」
「聞いてなかったのかよ、貴族が偉そうかどうかっていう話だよ」
マイクロジャムは立ち上がって近づいてきた。
「ああ、そういう話? みんながみんな偉そうってこともなかったけどね」
「え? マイクロジャムって、貴族の知り合いいたっけ?」
「一応、親戚の姉ちゃんに、貴族と結婚した人がいて、会ったことがあるんだ」
アゲパンが露骨に驚く。
「マジかよ! じゃあマイクロジャムも貴族の一族じゃん!」
「なんだよ貴族の一族って、違うよ。姉ちゃんだけだよ。一目惚れされたんだってさ」
「すげー、パーティとか? なんか参加したのか?」
マイクロジャムは笑う。
「そんなわけないだろ、パーティなんて行けるわけないじゃん、ただの村娘だぞ」
「貴族に会う機会なんて、パーティくらいしかねーじゃん。お前んちって仕立て屋とかだっけ?」
「俺んちは仕立て屋だけど、お客さんに貴族なんていないよ。姉ちゃんは小さいお菓子屋さん。露店で売ってたところで声掛けられたんだ」
「へー、そんな美人なのか?」
「どうだろーな。俺の好みじゃないけど、たぶん美人なんじゃない?」
「お前の好みとかどうでもいいから、しかも親戚だろ? 感覚が麻痺してんだよ。でもそうか、すげー美人なんだろうな」
「とにかく、その時に連れられてって、それ以来会ってないよ」
「親はなんて言ってた?」
「どうだろうな。なんか贈り物を貰ったらしいことは分かるんだけど、それ以外はさっぱりだ」
「いいねー、後ろ盾があるってのは」
「俺の家は関係ないよ。親戚っつっても、たまに会う程度だし」
「で、その貴族の男と話したわけだろ? どうだったんだ?」
「優しい人だったよ。お菓子くれたし」
「ガキかよ!」
「ガキだよ。4年前だしな」
「お菓子くれたらいい人か、ま、そんなもんだよな」
「でも、そのお菓子はその人の手作りだったんだ。姉ちゃんとも、お菓子作りの話で盛り上がったとか言ってた。お菓子作りが趣味なんて、人は良さそうだろ」
「なるほどねー、趣味の中じゃ、たしかに平和な方かもな。それだけでいい人かどうかってのは分からないぜ。お前も結局、そのお菓子で買収されただけだし」
「買収されてはないよ! そのお菓子が美味しかったから、評価しているんだ」
「子どもが評価? 美味しいお菓子作ってるからいい人ってか? どう思うよハル」
急に俺に振ってくるアゲパン。
「――ん~、どうだろうな。俺の周りにいた人も、お菓子作ってる奴は繊細なタイプが多かった気はする」
そういえば、悠もお菓子作りは好きだった。バレンタインに手作りのブラウニーを貰ったことがある。
美味しかったなー、そういや。
本命って言ってたなアイツ。
だが本命とは? 義理チョコをほかの男にあげたのだろうか? 別に何でもいいのだが。マジで。
「繊細だからって良い人ってわけじゃないだろう」
「良い人に繊細な人が多いってのはあるだろうけど、あくまで傾向の話だからな」
「そりゃそうだ。をっと、次の授業の時間だ」
席に戻るマイクロジャム。
少なくともアゲパンは貴族を一部敵対視しているようだ。俺も貴族なのだとしたら、ずっと敵対視していたということだろうか。
転生して、中身が俺になったことで、本心を出しやすくなったのかもしれない。
たしかに俺の場合は、自分の家柄も育ちも前世が平民なのだから、アゲパン達と同じ視点になる。
ただ、前世と言っても、あの世界は今、ケットシーによって凍結されているから、俺の場合は前世とも言えない気がする。
そもそも、悠と違って死んでこっちに来たわけじゃないからなぁ。
そういや、ケットシーと会うことはできるのか?
会える時間が23時59分の設定ではあるが、この世界だと時計が24時間で動いていない。一日が8つの記号で分けられている。
光の刻、火の刻、風の刻、水の刻、
天の刻、土の刻、闇の刻、霊の刻、
という8時間だ。
だいたい、3時間区切りだと考えれば辻褄が合うのだが、どうも体感では3時間というより2時間くらいしか経っていない気がする。
地球じゃないと考えると、惑星としては少し小さめで自転も早いのかもしれない。
朝は『光』、午前から午後過ぎまでが『火』、そこから夕方までが『風』、夕方から日没までが『水』。
夜の稼働時間は『天』、皆が家に帰り、就寝の時刻までが『土』、眠る時間が『闇』、
そして、日が昇り始めるまでが『霊』というわけだ。
ちなみに、時刻の区分についてはマイクロジャムに聞いた。
そういえば、と、さも知っているように聞いたので、上手くいった
しかし勘ぐられることがなくて助かった。
さらに座学で分かったのが、魔法もこの8つの区分で分けられるそうだ。ただ、少し呼び名が違った。
光魔法、闇魔法、風魔法。この3つは魔法区分
火の術、水の術、土の術。この3つは術区分
天と霊は、区分がない。
敢えて、天の力、霊の力と考えると、天に関しては、神や精霊から力を借りて、霊に関しては、死霊や、怨念のような、負のエネルギーを利用して現象を起こすらしい。
天に関しては、魔法と言えば魔法っぽい気はするが、霊に関してはかなり危うい。呪いの類は、だいたい霊の力だそうだ。
闇魔法が存在するのに、霊の力が別であるというのは、恐ろしい限りだ。
コントロールできるものが闇魔法だと考えると、コントロール不可なものが霊ということかもしれない
どういう使い手がいるのだろう?
ちなみに今俺がいる島は、クロムランドという場所らしい。
かつて、鉄鉱石がこの地で多く採れたそうで、武器の開発に関して最先端だったそうだ。
だが、時代が移り変わり、剣より魔法が主体になると、人はどんどん島を離れていったそうだ。
島にいても儲からない、大陸へ渡り、魔導書を売った方が良いと考えたらしい。
結局、この地は大陸の都市、フォースインゴットの政府によって買い取られ、戦士の養成や、人体実験のための島になっているのだそうだ。
教官のディークも、フォースインゴット出身らしい。
午後、風の刻から水の刻の半ば辺りまで、戦闘訓練があるそうだ。
どんな戦闘訓練なのか。少し内心ワクワクしているところもあった。
転生して辛い目に遭いたくはないが、魔法の存在があるのであれば、戦闘もただの肉体強化だけに留まらないはずだ。
どんなメニューを課されるのか、楽しみでもある。
「また地獄の始まりだよ」
アゲパンが物騒なことを言った。
◇ ◇ ◇
火の刻。
戦闘訓練前、訓練校の一室。
教官のディークが昼食後にお茶を飲んで休憩していると、作戦指揮官のロベルトが彼の元を訪れた。
ディークは、珍しい人間が来たものだと、内心驚いていた。
「ディーク教官、今日の訓練のことなんですが」
「どうした? 私に急用か」
「はい、フォースインゴットからの伝令です。実は、この訓練校の北東にある研究所で事故がありまして」
「事故? 実験体でも逃げ出したか? まさかな」
ディークは笑った。
ロベルトは、少し俯き加減に、少し下にズレたシルバーの眼鏡の位置を、中指で戻した。
「その、まさかです」
ディークは目を閉じ、怒りを沈下させようと心の中で数を数えた。
ゆっくり抑えながらディークは話した。
「――何をやっているんだ。今何人の子どもたちがここで訓練していると思っている」
ロベルトはディークの怒りを察しつつも話を続ける。
「彼らは、『殺人犯』です。この訓練校にいられるだけでも、感謝するべきでしょう」
「まぁ、インゴットの奴らならそう言いかねないだろうな。彼らは罪人ではない」
「そうですか、ディーク教官はお優しいですね」
「皮肉か?」
「いえ、そのままの感想を申し上げたまでです」
「だとしても、似たようなものだ。信じるというのは、時には愚かにも映る」
「教官は、彼ら一人一人と面接をしていましたね。その上でのご決断でしょう? あなたはフォースインゴット訓練校の戦士としても高い評価を受けていました。彼らを疑っても、ディーク教官を疑う者はいないでしょう」
「お前はどうなんだロベルト」
「私がディーク教官を疑うかということですか?」
「そうだ」
「そりゃあ、信じておりますよ」
「安い言葉だな」
「信じるという言葉がですか? それとも私自身の言葉がお安いと?」
「後者だ。お前は俺のことを愚かだと思っているだろう」
「私に本心を語れと仰るというなら、それに関してだけは、愚かだと申しておきましょう」
「語ってはくれないんだな」
「ええ、私はあなたとは違いますからね」
「お前は逃げるのか? この島から」
「もちろんです。教官も、ご希望があれば、取り計らって差し上げますよ」
「馬鹿を言うな、それで、子供たちは?」
「実験体が見つかり、安全性が確認されれば、こちらへも船を出されることでしょう」
「フォースインゴットの作戦本部がそう言っているのか?」
「ええ、仰っておりますよ」
「お前は、それが実行されると本気で思うか?」
「もちろん思いませんとも。『殺人犯』が大陸へ戻ってくることを歓迎する民衆はおりませんからね。作戦本部が、彼らを国に戻したとなれば、降格は免れません。そんなメリットの少ない、危ない橋を渡ろうとするのは、あなたくらいでしょう」
「そうか、わかった。今、実験体を追っている者はどのくらいいる?」
「別の施設にいる待機中の戦士が何人か捜索しているでしょう。せいぜい20名といったところでしょうね」
「感知と捜索のスキルを持った者はいるのか?」
「風魔法を持つ戦士は、たぶん居なかったと思われますね」
「実験体の名前は?」
「リトルシャドウ。デーモンの亜種です」
「リトルシャドウか、それは難易度が高いな。ランクは?」
「Bプラスですね。一部A級の闇魔法を使えるので、気を付けてください」
「何の魔法だ?」
「『憑依』です」
ディークは頭を抱えて俯いた。
「――最悪だな」
「あなたが憑依されると、子供たちは全員死ぬでしょう。頑張ってくださいね。では、私はフォースインゴットでお待ちしておりますよ、人間のままの状態で会えることを楽しみにしております」
ロベルトは一礼すると、部屋を出ていった。
ディークは思考する。
憑依、つまり、他の3つの施設で、だれかに憑依していたとしたら、その人間を生かしたまま捕らえて『悪魔祓い』をしなくてはならないというわけだ。
もし、リトルシャドウが、捜索隊の戦士に憑依していたとなると、油断すればこちらが殺されるということになる。
せめて、『風魔法』を使える人間がいれば、何とか作戦を練ることができるというのに。
捜索と感知のスキル。
まず、捜索のスキルがあれば、この島のどこにリトルシャドウがいるのか、ある程度の予測を立てることもできる。
感知のスキルがあれば、憑依されていることを瞬時で見極めることができるだろう。
だが、このスキルは、体質によるものが大きい。風魔法自体、器用でなければ扱いが難しいのだ。
風魔法が使える者がいるか、探す必要がある。
この島にそんな者がいるのか? ということだが。
◇ ◇ ◇
「マリア! マリアって、魔法は詳しいのか?」
昼食の後、広間で本を読みながら休憩をとっているマリアに声を掛けてみた。
「あ、は、はい、―――ハル、なんでしょうか? 魔法?」
この前は、タメ語だったのに、敬語になっている。
アゲパン達がいないからだろうか。
どうもまだ記憶喪失のことを疑っているようだ。よっぽど俺は悪い奴だったんだろうなと思った。
「そうそう、俺さ、できれば、この周辺のことが分かるような魔法を使いたいんだ」
マリアは本を閉じて、少し考える。
「この周辺、ですか。でしたら、私の知る限りでは、『捜索』と『感知』のスキルになりますね」
「そう! それだ! そういうのが欲しかったんだよ。俺、ちょっと色々と調べないといけないことがあって、できるなら、地理に詳しくなりたいと思ってさ。俺って、もともと地理の教科は得意だったからな」
「何を言ってるのか分かりませんが、風魔法はそんな簡単に身につくものではありませんよ」
「良いから良いから、たぶん、だいたいの容量は掴めているから」
マリアは凄く訝しげに俺を見ている。
魔法自体が、簡単なことではないことは知っている。だが、一応糸くずとはいえ、火を出すことができたのだ。
低レベルであっても、何かしらの魔法は使えるに違いない。
なんせ、魔法剣士の素質を持って転生しているのだ。
「風魔法は、魔法の中でも、一番繊細と言われています。無骨な方に扱えるものではありませんよ」
「マリアは使えるのか?」
「使えないです」
「だったら、分からないじゃないか」
「なんですか? その言い方は。やっぱり私のことを馬鹿にしているのではありませんか?」
マリアはムッとしている。
「とにかく、基本の部分だけ知識が欲しいんだ。何を意識して、何をイメージすればいいのか」
「まぁいいでしょう。風は、流動的なものです。風の精霊の声に耳を傾けてください、それから――」
「よし、分かった、風の精霊の声を聞けば良いんだな」
俺は風の精霊の声を聞く!
俺は風の精霊の声を聞く!! 集中しろ俺。俺ならできるはずだ。
「ちょっと、まだ何も言っていないでしょ?」
さすがにマリアもタメ語でキレてくる。
「待てマリア、俺は今、集中しているんだ。精霊をイメージだ。あ、そうだ、マリア、風の精霊ってどんな奴なんだ?」
「し、知らないわよ。会ったことないのに」
「ったく、実践的じゃないんだよ、本当に魔法使う気あるのかってんだよ」
「何よ! せっかく教えてあげてるのに」
「分かった分かった。せめて、イメージだけでいいから」
「風の精霊は、緑の姿をしていて、羽が生えていてね。それで―――」
急に、マリアの声が遠くなり、視界がぼんやりしてきた。
『おや? キミは転生者かい?』
「だれだ!? 俺に話しかけているのか?」
『僕を呼んだのはキミだろう、だれだ!っていうのは失礼な気がするな』
そうか、てことは、もしかして、風の精霊か!?
俺が転生者だって知ってるのか?
『知ってるとも、キミはケットシーに時間を凍結させている存在だからね』
え? ケットシーのことも分かるんだな、てか心が読めるのか。
『まぁね。ケットシーはかなり頑固だからね、人のために時間を凍結することなんて、滅多にないよ』
それはアレだろ、ノルン様のお導きなんだろ? よくは分からないけど。
『ケットシーがそう言っているだけだよ。 一部はそういうところもあるかもしれないけど』
そうなのか、で、本当に風の精霊なのか?
『正確に言うと、僕は精霊ではないよ。大気の管理人って言った方がいいね。精霊と僕はほとんど無関係だ』
なんで、俺の呼びかけに応じてくれたんだ?
『君がケットシーによって転生させられた、稀有な存在だからだよ。ケットシーは僕の友達だから、キミには興味があったんだ』
そうなのか、でも、俺としては、今、風魔法を使いたいと思っているんだ。
捜索と感知のスキルってのを使えるようになりたくてさ。
『なるほど、マッピングの魔法が欲しいのか』
そうだな、簡単に言うとそういう魔法だ。
『いいよ、なら君には、コネクターのスキルをあげよう』
コネクター? なんだそれは?
『捜索の風魔法ってのは、精霊に地図を見せてもらう魔法なんだ。感知は、対象となる生物の状態を把握する魔法。キミの元居た世界で言えば、レントゲン検査みたいな感じだね。いずれ、精霊に力を借りなくてはならない。でも、いちいち精霊に力を借りるのも面倒だろう。だから、自分でコネクトするんだ』
でも、どうやって使うんだ、そのスキルは
『マップの知識がある人間にコネクターを使えば、その部分の地図がキミの頭の中で把握できる。ただ、効果を持続させるには精神力が必要だ。寝たらリセットされるから、マッピングの魔法でちゃんと記録しておくんだぞ』
マッピングの魔法なんて持ってないぞ、てかマッピングの魔法がないって最初に言っただろうが。
『そうなのかい? 仕方ないなー、じゃあ、おまけでマッピングも付けといてあげるよ』
すまん! 恩に着る!
『ちなみにマッピングの魔法は風じゃなくて土だけどね』
風の精霊を呼んだはずだったんだけどな
『魔法の属性区分に関しては、君たち人間の都合じゃないか、僕らには何の関係もないよ。コネクターのスキルは天の区分だからね。こっちも風じゃないよ』
どういうことだよ。
『まぁ、そのうち分かってくるさ。気にするな』
分かった。とにかくありがとう、これでこの島の謎も解けるかもしれない。
そういや、名前はなんて言うんだ?
『ケツァルコアトルだよ! 覚えておいてね。じゃあ、そろそろ帰るよ。キミの運命に幸あれ!』
「ねぇ、ハル! 聞いてるの?」
視界がクリアになり、目の前にマリアの顔があった。
「あぁ、マリアか、わるい、ちょっと精霊というか、管理人と話していてね」
「管理人? 何言ってるの?」
「別に何でもない。とにかく、スキルは手に入れたから、大丈夫だ。ありがとうマリア」
「変なの。もうすぐ、戦闘訓練の授業でしょ? 早く行った方がいいよ」
「あ、ああ、そうだな! じゃあ、また後でな!」
こうして俺は、『コネクター』と『マッピング』という天と土の術スキルを手に入れた。
この、超特殊なスキルが、この先の俺の運命を大きく変えることになる。
アゲパンが座学の休憩時間に俺へ声を掛けた。
「これからは、って、今までは仲間じゃなかったみたいな言い方だな」
笑うアゲパン。
「あっはっは、そうだぜ。今までは仲間っていうより、雲の上の人って感じだったからな」
「雲の上の人って、どういうことだよ」
「なんつーかさ、俺らのことを見下してるっていうか、相手にしてないような感じだったんだ」
「貴族ってだけでそうなるものか?」
「俺はそういうイメージだけどな、おい、マイクロジャムはどう思う?」
席が少し離れた斜め前のところへ声を掛けるアゲパン。
「え? なにが?」
「聞いてなかったのかよ、貴族が偉そうかどうかっていう話だよ」
マイクロジャムは立ち上がって近づいてきた。
「ああ、そういう話? みんながみんな偉そうってこともなかったけどね」
「え? マイクロジャムって、貴族の知り合いいたっけ?」
「一応、親戚の姉ちゃんに、貴族と結婚した人がいて、会ったことがあるんだ」
アゲパンが露骨に驚く。
「マジかよ! じゃあマイクロジャムも貴族の一族じゃん!」
「なんだよ貴族の一族って、違うよ。姉ちゃんだけだよ。一目惚れされたんだってさ」
「すげー、パーティとか? なんか参加したのか?」
マイクロジャムは笑う。
「そんなわけないだろ、パーティなんて行けるわけないじゃん、ただの村娘だぞ」
「貴族に会う機会なんて、パーティくらいしかねーじゃん。お前んちって仕立て屋とかだっけ?」
「俺んちは仕立て屋だけど、お客さんに貴族なんていないよ。姉ちゃんは小さいお菓子屋さん。露店で売ってたところで声掛けられたんだ」
「へー、そんな美人なのか?」
「どうだろーな。俺の好みじゃないけど、たぶん美人なんじゃない?」
「お前の好みとかどうでもいいから、しかも親戚だろ? 感覚が麻痺してんだよ。でもそうか、すげー美人なんだろうな」
「とにかく、その時に連れられてって、それ以来会ってないよ」
「親はなんて言ってた?」
「どうだろうな。なんか贈り物を貰ったらしいことは分かるんだけど、それ以外はさっぱりだ」
「いいねー、後ろ盾があるってのは」
「俺の家は関係ないよ。親戚っつっても、たまに会う程度だし」
「で、その貴族の男と話したわけだろ? どうだったんだ?」
「優しい人だったよ。お菓子くれたし」
「ガキかよ!」
「ガキだよ。4年前だしな」
「お菓子くれたらいい人か、ま、そんなもんだよな」
「でも、そのお菓子はその人の手作りだったんだ。姉ちゃんとも、お菓子作りの話で盛り上がったとか言ってた。お菓子作りが趣味なんて、人は良さそうだろ」
「なるほどねー、趣味の中じゃ、たしかに平和な方かもな。それだけでいい人かどうかってのは分からないぜ。お前も結局、そのお菓子で買収されただけだし」
「買収されてはないよ! そのお菓子が美味しかったから、評価しているんだ」
「子どもが評価? 美味しいお菓子作ってるからいい人ってか? どう思うよハル」
急に俺に振ってくるアゲパン。
「――ん~、どうだろうな。俺の周りにいた人も、お菓子作ってる奴は繊細なタイプが多かった気はする」
そういえば、悠もお菓子作りは好きだった。バレンタインに手作りのブラウニーを貰ったことがある。
美味しかったなー、そういや。
本命って言ってたなアイツ。
だが本命とは? 義理チョコをほかの男にあげたのだろうか? 別に何でもいいのだが。マジで。
「繊細だからって良い人ってわけじゃないだろう」
「良い人に繊細な人が多いってのはあるだろうけど、あくまで傾向の話だからな」
「そりゃそうだ。をっと、次の授業の時間だ」
席に戻るマイクロジャム。
少なくともアゲパンは貴族を一部敵対視しているようだ。俺も貴族なのだとしたら、ずっと敵対視していたということだろうか。
転生して、中身が俺になったことで、本心を出しやすくなったのかもしれない。
たしかに俺の場合は、自分の家柄も育ちも前世が平民なのだから、アゲパン達と同じ視点になる。
ただ、前世と言っても、あの世界は今、ケットシーによって凍結されているから、俺の場合は前世とも言えない気がする。
そもそも、悠と違って死んでこっちに来たわけじゃないからなぁ。
そういや、ケットシーと会うことはできるのか?
会える時間が23時59分の設定ではあるが、この世界だと時計が24時間で動いていない。一日が8つの記号で分けられている。
光の刻、火の刻、風の刻、水の刻、
天の刻、土の刻、闇の刻、霊の刻、
という8時間だ。
だいたい、3時間区切りだと考えれば辻褄が合うのだが、どうも体感では3時間というより2時間くらいしか経っていない気がする。
地球じゃないと考えると、惑星としては少し小さめで自転も早いのかもしれない。
朝は『光』、午前から午後過ぎまでが『火』、そこから夕方までが『風』、夕方から日没までが『水』。
夜の稼働時間は『天』、皆が家に帰り、就寝の時刻までが『土』、眠る時間が『闇』、
そして、日が昇り始めるまでが『霊』というわけだ。
ちなみに、時刻の区分についてはマイクロジャムに聞いた。
そういえば、と、さも知っているように聞いたので、上手くいった
しかし勘ぐられることがなくて助かった。
さらに座学で分かったのが、魔法もこの8つの区分で分けられるそうだ。ただ、少し呼び名が違った。
光魔法、闇魔法、風魔法。この3つは魔法区分
火の術、水の術、土の術。この3つは術区分
天と霊は、区分がない。
敢えて、天の力、霊の力と考えると、天に関しては、神や精霊から力を借りて、霊に関しては、死霊や、怨念のような、負のエネルギーを利用して現象を起こすらしい。
天に関しては、魔法と言えば魔法っぽい気はするが、霊に関してはかなり危うい。呪いの類は、だいたい霊の力だそうだ。
闇魔法が存在するのに、霊の力が別であるというのは、恐ろしい限りだ。
コントロールできるものが闇魔法だと考えると、コントロール不可なものが霊ということかもしれない
どういう使い手がいるのだろう?
ちなみに今俺がいる島は、クロムランドという場所らしい。
かつて、鉄鉱石がこの地で多く採れたそうで、武器の開発に関して最先端だったそうだ。
だが、時代が移り変わり、剣より魔法が主体になると、人はどんどん島を離れていったそうだ。
島にいても儲からない、大陸へ渡り、魔導書を売った方が良いと考えたらしい。
結局、この地は大陸の都市、フォースインゴットの政府によって買い取られ、戦士の養成や、人体実験のための島になっているのだそうだ。
教官のディークも、フォースインゴット出身らしい。
午後、風の刻から水の刻の半ば辺りまで、戦闘訓練があるそうだ。
どんな戦闘訓練なのか。少し内心ワクワクしているところもあった。
転生して辛い目に遭いたくはないが、魔法の存在があるのであれば、戦闘もただの肉体強化だけに留まらないはずだ。
どんなメニューを課されるのか、楽しみでもある。
「また地獄の始まりだよ」
アゲパンが物騒なことを言った。
◇ ◇ ◇
火の刻。
戦闘訓練前、訓練校の一室。
教官のディークが昼食後にお茶を飲んで休憩していると、作戦指揮官のロベルトが彼の元を訪れた。
ディークは、珍しい人間が来たものだと、内心驚いていた。
「ディーク教官、今日の訓練のことなんですが」
「どうした? 私に急用か」
「はい、フォースインゴットからの伝令です。実は、この訓練校の北東にある研究所で事故がありまして」
「事故? 実験体でも逃げ出したか? まさかな」
ディークは笑った。
ロベルトは、少し俯き加減に、少し下にズレたシルバーの眼鏡の位置を、中指で戻した。
「その、まさかです」
ディークは目を閉じ、怒りを沈下させようと心の中で数を数えた。
ゆっくり抑えながらディークは話した。
「――何をやっているんだ。今何人の子どもたちがここで訓練していると思っている」
ロベルトはディークの怒りを察しつつも話を続ける。
「彼らは、『殺人犯』です。この訓練校にいられるだけでも、感謝するべきでしょう」
「まぁ、インゴットの奴らならそう言いかねないだろうな。彼らは罪人ではない」
「そうですか、ディーク教官はお優しいですね」
「皮肉か?」
「いえ、そのままの感想を申し上げたまでです」
「だとしても、似たようなものだ。信じるというのは、時には愚かにも映る」
「教官は、彼ら一人一人と面接をしていましたね。その上でのご決断でしょう? あなたはフォースインゴット訓練校の戦士としても高い評価を受けていました。彼らを疑っても、ディーク教官を疑う者はいないでしょう」
「お前はどうなんだロベルト」
「私がディーク教官を疑うかということですか?」
「そうだ」
「そりゃあ、信じておりますよ」
「安い言葉だな」
「信じるという言葉がですか? それとも私自身の言葉がお安いと?」
「後者だ。お前は俺のことを愚かだと思っているだろう」
「私に本心を語れと仰るというなら、それに関してだけは、愚かだと申しておきましょう」
「語ってはくれないんだな」
「ええ、私はあなたとは違いますからね」
「お前は逃げるのか? この島から」
「もちろんです。教官も、ご希望があれば、取り計らって差し上げますよ」
「馬鹿を言うな、それで、子供たちは?」
「実験体が見つかり、安全性が確認されれば、こちらへも船を出されることでしょう」
「フォースインゴットの作戦本部がそう言っているのか?」
「ええ、仰っておりますよ」
「お前は、それが実行されると本気で思うか?」
「もちろん思いませんとも。『殺人犯』が大陸へ戻ってくることを歓迎する民衆はおりませんからね。作戦本部が、彼らを国に戻したとなれば、降格は免れません。そんなメリットの少ない、危ない橋を渡ろうとするのは、あなたくらいでしょう」
「そうか、わかった。今、実験体を追っている者はどのくらいいる?」
「別の施設にいる待機中の戦士が何人か捜索しているでしょう。せいぜい20名といったところでしょうね」
「感知と捜索のスキルを持った者はいるのか?」
「風魔法を持つ戦士は、たぶん居なかったと思われますね」
「実験体の名前は?」
「リトルシャドウ。デーモンの亜種です」
「リトルシャドウか、それは難易度が高いな。ランクは?」
「Bプラスですね。一部A級の闇魔法を使えるので、気を付けてください」
「何の魔法だ?」
「『憑依』です」
ディークは頭を抱えて俯いた。
「――最悪だな」
「あなたが憑依されると、子供たちは全員死ぬでしょう。頑張ってくださいね。では、私はフォースインゴットでお待ちしておりますよ、人間のままの状態で会えることを楽しみにしております」
ロベルトは一礼すると、部屋を出ていった。
ディークは思考する。
憑依、つまり、他の3つの施設で、だれかに憑依していたとしたら、その人間を生かしたまま捕らえて『悪魔祓い』をしなくてはならないというわけだ。
もし、リトルシャドウが、捜索隊の戦士に憑依していたとなると、油断すればこちらが殺されるということになる。
せめて、『風魔法』を使える人間がいれば、何とか作戦を練ることができるというのに。
捜索と感知のスキル。
まず、捜索のスキルがあれば、この島のどこにリトルシャドウがいるのか、ある程度の予測を立てることもできる。
感知のスキルがあれば、憑依されていることを瞬時で見極めることができるだろう。
だが、このスキルは、体質によるものが大きい。風魔法自体、器用でなければ扱いが難しいのだ。
風魔法が使える者がいるか、探す必要がある。
この島にそんな者がいるのか? ということだが。
◇ ◇ ◇
「マリア! マリアって、魔法は詳しいのか?」
昼食の後、広間で本を読みながら休憩をとっているマリアに声を掛けてみた。
「あ、は、はい、―――ハル、なんでしょうか? 魔法?」
この前は、タメ語だったのに、敬語になっている。
アゲパン達がいないからだろうか。
どうもまだ記憶喪失のことを疑っているようだ。よっぽど俺は悪い奴だったんだろうなと思った。
「そうそう、俺さ、できれば、この周辺のことが分かるような魔法を使いたいんだ」
マリアは本を閉じて、少し考える。
「この周辺、ですか。でしたら、私の知る限りでは、『捜索』と『感知』のスキルになりますね」
「そう! それだ! そういうのが欲しかったんだよ。俺、ちょっと色々と調べないといけないことがあって、できるなら、地理に詳しくなりたいと思ってさ。俺って、もともと地理の教科は得意だったからな」
「何を言ってるのか分かりませんが、風魔法はそんな簡単に身につくものではありませんよ」
「良いから良いから、たぶん、だいたいの容量は掴めているから」
マリアは凄く訝しげに俺を見ている。
魔法自体が、簡単なことではないことは知っている。だが、一応糸くずとはいえ、火を出すことができたのだ。
低レベルであっても、何かしらの魔法は使えるに違いない。
なんせ、魔法剣士の素質を持って転生しているのだ。
「風魔法は、魔法の中でも、一番繊細と言われています。無骨な方に扱えるものではありませんよ」
「マリアは使えるのか?」
「使えないです」
「だったら、分からないじゃないか」
「なんですか? その言い方は。やっぱり私のことを馬鹿にしているのではありませんか?」
マリアはムッとしている。
「とにかく、基本の部分だけ知識が欲しいんだ。何を意識して、何をイメージすればいいのか」
「まぁいいでしょう。風は、流動的なものです。風の精霊の声に耳を傾けてください、それから――」
「よし、分かった、風の精霊の声を聞けば良いんだな」
俺は風の精霊の声を聞く!
俺は風の精霊の声を聞く!! 集中しろ俺。俺ならできるはずだ。
「ちょっと、まだ何も言っていないでしょ?」
さすがにマリアもタメ語でキレてくる。
「待てマリア、俺は今、集中しているんだ。精霊をイメージだ。あ、そうだ、マリア、風の精霊ってどんな奴なんだ?」
「し、知らないわよ。会ったことないのに」
「ったく、実践的じゃないんだよ、本当に魔法使う気あるのかってんだよ」
「何よ! せっかく教えてあげてるのに」
「分かった分かった。せめて、イメージだけでいいから」
「風の精霊は、緑の姿をしていて、羽が生えていてね。それで―――」
急に、マリアの声が遠くなり、視界がぼんやりしてきた。
『おや? キミは転生者かい?』
「だれだ!? 俺に話しかけているのか?」
『僕を呼んだのはキミだろう、だれだ!っていうのは失礼な気がするな』
そうか、てことは、もしかして、風の精霊か!?
俺が転生者だって知ってるのか?
『知ってるとも、キミはケットシーに時間を凍結させている存在だからね』
え? ケットシーのことも分かるんだな、てか心が読めるのか。
『まぁね。ケットシーはかなり頑固だからね、人のために時間を凍結することなんて、滅多にないよ』
それはアレだろ、ノルン様のお導きなんだろ? よくは分からないけど。
『ケットシーがそう言っているだけだよ。 一部はそういうところもあるかもしれないけど』
そうなのか、で、本当に風の精霊なのか?
『正確に言うと、僕は精霊ではないよ。大気の管理人って言った方がいいね。精霊と僕はほとんど無関係だ』
なんで、俺の呼びかけに応じてくれたんだ?
『君がケットシーによって転生させられた、稀有な存在だからだよ。ケットシーは僕の友達だから、キミには興味があったんだ』
そうなのか、でも、俺としては、今、風魔法を使いたいと思っているんだ。
捜索と感知のスキルってのを使えるようになりたくてさ。
『なるほど、マッピングの魔法が欲しいのか』
そうだな、簡単に言うとそういう魔法だ。
『いいよ、なら君には、コネクターのスキルをあげよう』
コネクター? なんだそれは?
『捜索の風魔法ってのは、精霊に地図を見せてもらう魔法なんだ。感知は、対象となる生物の状態を把握する魔法。キミの元居た世界で言えば、レントゲン検査みたいな感じだね。いずれ、精霊に力を借りなくてはならない。でも、いちいち精霊に力を借りるのも面倒だろう。だから、自分でコネクトするんだ』
でも、どうやって使うんだ、そのスキルは
『マップの知識がある人間にコネクターを使えば、その部分の地図がキミの頭の中で把握できる。ただ、効果を持続させるには精神力が必要だ。寝たらリセットされるから、マッピングの魔法でちゃんと記録しておくんだぞ』
マッピングの魔法なんて持ってないぞ、てかマッピングの魔法がないって最初に言っただろうが。
『そうなのかい? 仕方ないなー、じゃあ、おまけでマッピングも付けといてあげるよ』
すまん! 恩に着る!
『ちなみにマッピングの魔法は風じゃなくて土だけどね』
風の精霊を呼んだはずだったんだけどな
『魔法の属性区分に関しては、君たち人間の都合じゃないか、僕らには何の関係もないよ。コネクターのスキルは天の区分だからね。こっちも風じゃないよ』
どういうことだよ。
『まぁ、そのうち分かってくるさ。気にするな』
分かった。とにかくありがとう、これでこの島の謎も解けるかもしれない。
そういや、名前はなんて言うんだ?
『ケツァルコアトルだよ! 覚えておいてね。じゃあ、そろそろ帰るよ。キミの運命に幸あれ!』
「ねぇ、ハル! 聞いてるの?」
視界がクリアになり、目の前にマリアの顔があった。
「あぁ、マリアか、わるい、ちょっと精霊というか、管理人と話していてね」
「管理人? 何言ってるの?」
「別に何でもない。とにかく、スキルは手に入れたから、大丈夫だ。ありがとうマリア」
「変なの。もうすぐ、戦闘訓練の授業でしょ? 早く行った方がいいよ」
「あ、ああ、そうだな! じゃあ、また後でな!」
こうして俺は、『コネクター』と『マッピング』という天と土の術スキルを手に入れた。
この、超特殊なスキルが、この先の俺の運命を大きく変えることになる。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
いなくなった伯爵令嬢の代わりとして育てられました。本物が見つかって今度は彼女の婚約者だった辺境伯様に嫁ぎます。
りつ
恋愛
~身代わり令嬢は強面辺境伯に溺愛される~
行方不明になった伯爵家の娘によく似ていると孤児院から引き取られたマリア。孤独を抱えながら必死に伯爵夫妻の望む子どもを演じる。数年後、ようやく伯爵家での暮らしにも慣れてきた矢先、夫妻の本当の娘であるヒルデが見つかる。自分とは違う天真爛漫な性格をしたヒルデはあっという間に伯爵家に馴染み、マリアの婚約者もヒルデに惹かれてしまう……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる