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20章 ー 心情 ー

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「なんのことだ?」





俺はヨハン・ヴァイセンベルクの質問にしらばっくれてみせた。


「あなたが、異世界の住人なのではないかと、そう聞いたのです」

ヨハンが追撃する。

「……なにを言ってるのかまったくわからない」

出来る限り平静を装う。内心気が気ではない。

ふとディークの視線を感じた。もしかしてディークも疑っているのか?


冷や汗が出た。


なぜだ?


なぜバレている? そもそも、転生というのは記憶だけ持って別の人間に生まれ変わることだろう?

このヨハンっていう奴は何者だ?

確かに、雰囲気で優秀なのは分かる。とはいえ、もし、異世界の存在を知っているとして、それが俺とどう関連付けられるっていうんだろう。

この世界には魔法がある。ということは、俺が元居た世界と違って、そういう世界の存在を証明する何かがあるのかもしれない。

だが、例えそうだとしても、ヨハンが俺に気付く理由を知りたい。

なぜ分かった? と、問いたいが、それはあまりにも危険すぎる。今の段階では絶対に隠すべきだ。もちろん、隠さなくても良い相手が今後見つかる可能性はあるが、それでも、確実に味方と言える存在以外は、この奇妙でとんでもない事実は隠しておくべきだろう。

……それにしても、ヨハンは俺の何を見てそう言ったんだろう? 何か記憶を読んだり、正体を暴くようなユニークスキルを持っているというのか?

ユニークスキルはその人間の特性を示すものであると、魔術の座学でクローディアが言っていた。

仮に正体が分かっていて、それが当たっているとしても、それをこの場で告げることは、デメリットにならないか?

ヨハンは俺が、『はい、そうです。バレちゃったか―』とでも言うと思っているのだろうか?

そんなはずはないだろう。だとしたらカマをかけている。そうだ。敢えて疑わしい人間に、本当はそうなんだろうと聞いておいて、相手の反応からボロが出るのを待つのだ。そうに違いない。それくらいしか思いつかない。そもそも確信があるのであれば、いちいち聞く意味はないだろう。

正体が分かっているなら……正体? そうか、そういや、正体を暴くスキルなら、他にも持っている人間がいるじゃないか。


俺はカレンをチラッと、見る。


予想にも増して凄い形相だった。カレンは俺を穴が開くほど睨みつけている。

この見つめられ方は異常だ。

マリアや、ドレイクも俺を見ているが、二人とも、呆気に取られているような、よく分かっていない表情だ。ディークにしてもそうだ。何となく疑わしくは思っているだろうが、おそらく、彼が俺を過大評価していることとも関係しているはずだ。過大評価が過ぎれば、異世界人という選択肢も現れるかもしれない。

俺が少年らしくないという彼の指摘自体はすでに当たっているのだから、もし別の世界から来ていたとしても少しは信用してしまう可能性はある。

それに引き換え、マリアやドレイクは、俺に対して、そういう意味での特別視はしていないのだから、呆気にとられたような表情なのも頷ける。

ただ、カレンだけは別だ。

カレンはそもそも俺に対してライバル意識を持っているし、疑いという意味では一番濃いだろう。

そして、彼女のスキル【アンヴェール】は、俺の嘘を見事に暴いてしまう。

ただ、思考については読めないから、ただ、嘘をついているということが分かるだけだ。

つまり、ヨハンが言った、『あなたは別の世界の人ですか?』という問いに対して、俺が言った『いいえ』という答えが嘘であることを見抜いてしまったということだ。

そりゃ、凄い形相にもなるだろう。

このメンツの中で、一番驚いているのはカレンに違いない。

カレンは俺が『別の世界の人間』である可能性を今、感じているのだ。

俺はカレンの視線に吸い寄せられるように目を合わせてしまうが、その威圧感が凄すぎてまたすぐ逸らしてしまう。

カレンは俺に何も問うことはないだろう。

俺がカレンに、『何か見たか?』と一声かければ、宇宙人と出会ったようにびっくりするだろう。

まだ宇宙人の方が現実的だ。同じ世界に生きているのだから。

俺はヨハンの表情を確認する。

何も意に介していないような、無表情だ。だが、さっき一瞬驚いた表情を見せていた。俺の存在に対してだ。

あの瞬間驚いたということは、『何か』を察している。その『何か』の正体を知りたいが、今はそんなことをしている暇はない。イベリスたちを救う方が先決だ。

まずは、彼に協力して貰って、現状を打開することが最優先だ。

ややこしいことは、その後で考えればいい。

「異世界がどうとか、そんなことより、今は早くイベリス達を救いたい。何か質問があるなら、その後で何でも答えてやる。とにかく訓練校に行かせてくれ」

ヨハンに言う。一瞬眉をしかめたが、すぐ態度が元に戻った。

「なるほど、訓練校ですか。確かに、あなたの大事な方が危険にさらされているなら、その方を救ってからにしましょう」

ディークとドレイクは顔を見合わせた。

マリアは何が何だか分からない様子だ。

ディークはヨハンに告げる。

「そうだ。今は訓練校が危うい。助けに行かないといけない。ヨハン、君は何ができる? ここで留守番して貰ってても構わないのだが」

ヨハンは少し考えるしぐさをした。

「敵はリトルシャドウですか?」

「あぁ、シャドウは2体だ。対抗する手段があるなら着いてきても良いが。どんなスキルを持っている?」

「答えた方がよろしいですか?」

「愚問だ。緊急を要する」

「そうですか、では、助けていただいた特別サービスとしましょう。あまり人にユニークスキルを教えるものではないのですが、仕方ありませんね」

「重要性は個人の価値観による。好きにすればいい」

「そのように仰られると教えざるを得ませんね。僕のスキルは【吸収スクイズ】です。吸収。何を吸い取ると思います? ……魔力です。リトルシャドウというのは、あくまでコアから放出している魔力によって実体を保っているに過ぎませんから、僕なら一瞬で吸い取ってしまえます。信じられないかもしれませんので、こちらは現場でお見せした方がよろしいでしょうね」

ヨハンは自信満々な様子だ。少々鼻につく印象は拭えないが、もし彼の言葉が真実なら、有効打になるだろう。

ディークは半信半疑の様子だ。

「本当か? なら、現場で見せてもらうのが早いな。分かった。ついてくるがいい。着いて来られれば、だがな」

ディークは俺とカレンの方を見た。

「俺は先に向かっている。お前たちは、訓練校の校門で待っていろ。先に中を偵察してくる。状況が分かったら機会を見計らって突撃する。俺の指示を待て。くれぐれも独断で動くんじゃないぞ。誰も死なせたくなければな」

マリアが慌てている。

「あ、あの、私も行きます」

「お前はここにいろ。ロベルトの容体が急変する可能性もある。もしもの時は魔法で治療してやれ」

「……わかりました」

ディークの目線が、『足手まといだから付いてくるな』と語っているようだった。

だが、俺としては、【エイミング】を高精度で使うためにマリアにはいて欲しかったが、実際のところ、マリアを守りながら戦えるほど余裕はない。残るのが正解だろう。

悔しいが、別の方法を考えるか。

と、そんなことを思ってふとディークを見ると、もう消えていた。速すぎる。速いというか消えたぞ? どうなっているんだ? 忍者なのか? この世界の忍者か? 移動した痕跡はあるので、突然テレポートしたわけではないことは確かだ。仕方ない。俺たちは普通に走っていくしかなさそうだ。

……と思うと、ヨハンはすでに歩き始めていた。

「ヨハン! 訓練校の場所が分かるのか?」

「分かりますよ。先ほどディークが足跡を付けて行ってくれたではありませんか。あとは、魔力の残像を追いかけるだけですよ」

「魔力の残像?」

また意味の分からない言葉が出てきた。ヨハンという少年は、どれだけ魔術を習得しているのだろう。この世界ではあまり年齢は変わらないが、実際は年下なわけだから、何とも複雑だ。とはいえ、才能に年齢は関係ないのだから、素直に称賛しておくしかない。

チラッとカレンを見る。

ものすごい形相だ。目が血走っている。

俺は額に汗が出てきた。なんだ? まだ疑っていたのか。

とりあえず視線をマリアとドレイクに移す。

「じゃあ、俺たちはディークを追う。ロベルトを頼んだぞ、2人とも!」

「任せて!」

「任せろ!」

マリアは元気に応え、ドレイクは自分の右腕の力こぶを見せながらそのこぶを左手で叩いた。

足元をくるくる回っているナッツを肩に乗せると、ヨハンを追いかけた。

カレンも着いてくる。

さっきからカレン、一言も喋らないなと思った。

と、そんなことを思ったらカレンが言葉を発した。

「ハルって、別の世界の人なの?」

結局その質問なのかと思った。

「なんでだよ! そんなわけないだろ」

「ほら嘘! 嘘ついてる! 私は嘘が分かるって知ってるでしょ。なんで嘘つくの? わけわかんないんだけど。あーもう! 頭が壊れそう」

「そんなことで頭が壊れるなよ、説明がややこしいんだよ。別に何か隠しているわけじゃないよ」

「ああー、ほら、隠してるって私のスキルが言ってるうー! うそつきー!!」

カレンが感情丸出しで文句を言っている。普段の冷静さが抜けて、ただただ非難して疑っている様子だ。

「なんだよ、説明しにくいことの一つや二つあるだろカレンにも」

「説明しにくいことはあるけど、嘘つく必要はないもん。ハルは嘘をついてる。私、嘘つく男ってホント嫌い!」

「じゃあ嫌いでいいよ」

面倒だな。

「ああー、今めんどくさい女だって思ったでしょ!? 何でなのよ! 私と会えて良かったって、さっきあんなに真面目な顔で言ってたのに、私の目を見つめて、すっごく見つめて!! アレはなんだったの? 私、あんなに人に見つめられたこと、人生で一度もなかったんだけど!」

カレンが何を言いたいのか分からない。話の方向がズレている。

「どういう意味だよ、俺はべつにカレンを騙そうとか、そういうことは一度も思ったことはないよ」

「はい嘘! 今騙してますぅー、現在進行形で騙し中ですぅー。嘘つき男ハルぅー。ホント嫌い!」

感情的になっているのは分かるが、ここまであからさまに言われると本当に対応に困る。

「カレン、別にカレンを信用してないわけではないよ。もし納得いく説明が欲しいなら、イベリス達を救い出した後で、2人だけの狭い部屋で話そう。誰の声も届かないような場所で二人きりなら文句ないだろ?」

「え!!? 」

カレンは急に顔が赤くなって上気した。

「わわ、私と二人きりで、誰の声も届かない狭い部屋で話すの? なに? そんなとこに連れ込んで、私のことどうする気なの? そんなことできるわけないでしょ! 文句ないって? 文句だらけよ!」

確かに言い方はまずかったが、そんな反応をされるとこっちまで意識してしまう。

なぜ別の世界の話からカレンがこんなに盛り上がってるのか理解に苦しむが、とりあえず、話は逸らせることができたので結果オーライだ。これはこっちの方向で誤魔化した方が早い。

「なんだよ! カレンは俺と二人きりになるのが嫌なのかよ! そんな嫌わなくったっていいだろ」

「べつにイヤとは言ってないじゃん」

「だって文句あるって」

「あるわよ!」

「それが何かを聞いてるんだが」

「私への信頼が足りないって言ってんの!」

「だから信頼してるから、二人で密会しようって提案してるだろ」

「密会!!?」

カレンが大きな声を上げる。

「おかしくはないだろ? 大事な話なんだから」

「大事な話って、そんなに大事なことなの?」

「そりゃ、カレンじゃなきゃ話せないことだ」

アゲパン達に知られたら一瞬で広がるだろうというのは目に見えている。その点では、カレンのような少しプライドが高いタイプなら秘密を守れる気がした。

「私じゃないとダメなの?」

「そうだ。カレンなら、二人だけの秘密にできるだろ?」

「……ふ、ふたりだけの秘密!」

カレンが何やらテンションが上がっている。何を考えているんだ。

「ああ、だれにもバレないように、こっそり俺の秘密を見せてやるから」

「ハルの秘密!? 私だけに見せるの!?」

「そうだ、カレンにだけ特別にな。だけど知ってしまったら、今後俺たちは特別な関係になると思えよ。もしバラしたら、分かってるだろうな!」

敢えて少し釘を刺しておく。

「特別な関係!? そんな一方的な! 私の気持ちはどうなのよ!」

「何言ってるんだよ、カレンの気持ちなんて関係ないだろ? 俺がダメだって言ってるんだからダメなんだよ。カレンに決定権はない」

「ぇええ!? 強引よ! そんなこと言うんだったら聞かないわ!」

「頼んでないだろが初めっから。カレンのために言ってるんだ」

「私のためなのに、……私に決定権がないなんて、私をモノ扱いしないで!」

「してないだろが! どういう思考回路だ! カレンが嫌なら、わざわざ説明しないさ」

「……でも、ハルが、どうしても私と二人になりたいって言うなら、考えてあげなくもないけど」

「どうしてもって、そりゃ、どうしてもってほどじゃねーよ。てか別に二人になりたいなんて言ってないだろ」

「はぁあ!? 私と二人になるのが嫌なの? 二人になりたいって言ったじゃん」

「言ってねーよ!」

「言った!」

「なりたいとは言ってない!」

「言った!!」

「言ってねーって!」

「あの、さっきから何を痴話げんかしているのですか? そんなに2人きりになりたいのでしたら、お互いに素直にそう言えばいいじゃありませんか」
ヨハンが横から発言した。

俺はヨハンに聞こえていることをすっかり忘れていた。

「あ、いや、そういうことじゃないんだが、話すなら二人にならないといけないから」

「僕としても、話を伺いたいとは思いますが、ずいぶんと隠したがっているようですので、聞かないことにしておきますよ」

「そうしてもらうと助かるよ」

ヨハンは意外と話が分かる相手なのかもしれないと思った。そうなると、なおさらさっきの発言が謎だ。案外、普通に好奇心で話を聞きたいだけの可能性もある。

警戒し過ぎていたというか、少し自意識過剰なのかもしれない。

しかし、俺が転生していることが知れ渡るのは良いことではない。

転生というのは特殊能力者のようなもので、下手をすれば魔女狩りの対象になるだろう。特別な力や記憶を持った者は、権力によって見つけ出され捕らえられるのが世の常というものだ。そもそも、ブラックポンド自体も、そういう研究があるからこそ生まれたものなのだから。

今回の事件を探るためにも、フォースインゴットへ渡る必要があるだろう。

できることなら、アゲパン達も連れていきたいが、厳しいだろうな。イベリスは親元へ帰れるのだろうか? カレンの家系はどうなんだろう? そうだ、むしろ、二人で話すとしたら、カレンの家庭事情の方だろう。

このクロムランドへ連れられてきたからには、何か犯罪を犯したということだが、カレンの場合、きっと何かやむを得ない正義があったのだろう。それを聞きたい。

そう考えると、二人になって、事情を聞くのはアリだ。むしろ、カレンの話を聞くことで、俺自信の謎から注意をそらすことができるかもしれない。

カレンが口を開く。

「なによ、結局イヤなんだったら、初めからこっそり密会しようなんて言わなきゃいいじゃん。もういいわよ」

「カレン! やっぱ俺は、どうしてもきみと二人で会いたい」

カレンが飛び跳ねるように驚いた。そんなに驚くことなのかと思った。

「今さら遅いわよ!!」

「なぜ!? どうしてもって言ったら会ってくれるんじゃなかったのかよ」

「あの時の私はもういないのよ」

「1分も経ってないぞ。移り気にもほどがあるだろ」

「女の感情ってのは移りゆくものなのよ」

カレンの性格を女一般で語るのか? かなり個性的な方だぞカレンは。

「そうなのか。まぁいいよ、カレンが会っても良いと思ったら教えてくれ」

「期待しないことね!」

なぜ、いつの間にか俺がカレンに会って欲しいと頼む展開になっているんだ。心外だな。

そう思っているとヨハンがまた発言する。

「あなた達がのん気な話をしているうちに、訓練校に着きそうですよ。ここからは徒歩に変えます。できるだけ気配を消してください。一応聞いておきますが、【隠密ステルス】や【ミスト】のスキルはありませんよね」

「なんだそれは」
「なにそのスキル」

俺とカレンが同時に言った。

ヨハンは苦笑する。

「ずいぶん仲のよろしいことですね。いいでしょう。僕は中級の【ミスト】をマスターしていますので、あなた達と共有します。あまり距離を取れませんので、霧の外へ出ないように注意してください」

ヨハンが目を閉じ、両手を合わせ、額を指に近づける。

すると、彼の足元から薄いグレーの煙が立ち込めた。煙と言っても、特に何も感じず、俺たちの周辺だけが包み込まれた。グレーになっているので、境界線は分かる。確かに、気を付けなくてはすぐに煙の外へ出てしまいそうだった。

「コレが【ミスト】か。この中にいると、外から見たら透明なのか? ヨハン」

「いえ、このスキルは、透明化する擬態の魔法とは別物です。霧に隠れ、意識して見なくては、見つけられなくなるというスキルです。霧があると、内部はかなり目を凝らさなくては見えませんからね」

「俺たちのことを知っていると分かるのか?」

「いえ、そういうことでもありません。霧が立ち込めている空間というのは、避けたくなりますよね。つまり、見る人間の死角に入るということです。人は見たいものだけを見て、見たくないものは見なくなります。たとえ、そこに明らかに存在していたとしても」

「なんだか哲学的だな」

「魔術というのは、大半は、人の意識を操るものですからね。このスキルも、そういった魔術の一種ですよ」

「そうなのか」

「このまま、校門でディークを待ちましょう」

「ああ」

俺は後ろに着いてきているカレンを確認する。

カレンは俺と目を合わせると、真剣な顔で頷いた。

しっかりスイッチの切り替えができている。

ある意味、さっきの会話でリラックスできたかもしれない。あまり緊張感が続き過ぎると、気持ちが追い付かなくなる。

理由はどうであれ、カレンには感謝だ。

それにしても、このヨハンという少年は、本当に優秀なようだ。

初めはどうなるかと思ったが、こうして訓練校へ戻ってみると、魔術師の仲間がいることは本当に心強い。

突撃する前に、コネクトしておこうと思った。

俺はコネクターをヨハンに飛ばした。

「ん?」
俺は違和感で声を出す。

「どうかされましたか?」

ヨハンが振り向いた。

「いや、何でもない。気にしないでくれ」



カレンにコネクトしているため、【コネクター】と【アンヴェール】を同時に使える俺は、その対象の『特性』や『名称』をデータとして表示することができる。

以前、イベリスに対して、ネクロマンサーの表示を確認したことがあるが、それと同じだ。


そして、今回は、ヨハンに対し、そういった『特性』を見るつもりでコネクトしなかったが、カレンとのコネクトが強かったため、自動で表示された。

それで言うと、カレンはヨハンに対し、この表示を見ていたのだろうか?

いや、おそらくカレンには見えていない。見えていたらカレンはあの場で発言しているはずだ。もし発言しなかったとしても、ここへ来る道中で、何かしら俺やディークに伝える努力はしただろう。

ということは、これは、カレンには確認できない情報である可能性が大きい。

【コネクター】を使って接続したために、そういうヨハンの隠すための魔術を貫通できたのかもしれない。


俺はまた、額から大量に冷や汗が流れるのを感じた。



さすがにイレギュラー過ぎる。疑いはあったが、そんなはずはないと思っていた。


だが、この表示に対して、俺はどう対処すればいいのか。


全く正解が思いつかなかった。




表示の内容は以下である。





【個体名 ヨハン・ヴァイセンベルク 注 魔族 種別 デーモン亜種 呼称 リトルシャドウ】







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