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罠と囮と護衛は兼任できる
しおりを挟むその後、わたしのなにが気に入ったのか、猛烈な勢いで口説かれた。
継いだばかりの辺境伯として、長く領地を離れられぬ、と短期間に怒涛の勢いで迫られた。
黒髪が良いとか、銀の瞳が美しいとか。
月光のように控えめな態度が好ましいとか、簡単に頷かない高潔さが素晴らしいとか。
次々に褒め言葉を繰り出されて、狼狽えることしかできなかった。
美少女がわたしのような地味な男を口説く姿に、子爵家使用人たちの顔も引きつっていた。
わたしはただ、流されてしまうのが怖くて、男の嫁になるという意味がよく分からなくて頷けなかっただけだ。
……美少女にもっと口説かれたい、という下心が無かった、とは言えないけれど。
初めから逃げ道を塞がれていたわたしは、やけくそになって交換条件を出した。
薬物関係の諸々が解決したら、婚約しても良い、と。
その結果が、まさか、辺境伯本人が女子生徒のふりをしての学院潜入なんて、誰が考えるだろう。
疑わしい貴族への捜査を、国が行う傍らで。
疑わしい子息令嬢を揺さぶるために、殿下が囮として愚かに振る舞うことが提案された。
新たに側近になった、オグンベクザンティ侯爵家令息から。
彼は〝武のティグナレット辺境伯〟家出身だが、力としての武には秀でていないという。
策を練り、撹乱する側だとか。
見た目は優男なのに、中身は好戦的な武人で策士だ。
辺境では、見た目と中身が一致しないのが普通なのだろうか?
殿下に万が一のことがあってはならないが、警戒されないために護衛を増やすことはできない。
側近候補であるベェグウ伯爵家令息は、護衛でもある。
しかし、一人で常に殿下を守り続けることは難しい。
フェルレイク侯爵家令息は諜報を担当しているので、護衛として常に寄り添うわけにはいかない。
オグンベクザンティ侯爵家令息は、守ってもらう側だ、と胸を張っていた。
適当な者がいない、と計画が頓挫する前に。
殿下と兄の護衛兼任、囮兼任、罠兼任という形で、辺境伯本人が立候補したという。
わたしの側にいたいからだ!、などと言われたら、反論しようもない。
決定後に報告されたから、反論できなかったが。
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