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おまけ SS 師匠と弟子
しおりを挟む無事に体を繋ぐことができた新米領主夫妻だが、その後もケェアの暴発癖は治らなかった。
エトレの全裸を見たがり、全身を舐めたがり、舌技で息も絶え絶えになっている姿に興奮しすぎて、うまく入れられずに外で暴発してしまう。
愛されている実感はある。
実感があるから困る。
領主として、男爵家の血を引く子を残すためには、このままでは困る。
そう思ったエトレは、恥を忍んで師匠に相談をした。
「舐めるのを禁止すれば良いのではないの?」
「禁止?」
「興奮させなければ良いのではないかしら?」
「なるほど……」
エトレの色事の師匠であるルナルは、弟子が夫の影響でどんどん変になっていくわ、と思いつつも相手は現領主なので、見捨てるわけにもいかない。
二人がどうやって体をつないでいるのか、を恥ずかしがって頭部を赤く青くする気持ち悪いエトレから、なんとか聞き出してため息をついた。
英雄は思っていた以上に変態なのね、と。
まさか孕み腹の全身を、腹の中まで舐めるなんて。
どうしようもないほど変態だ。
信じられない。
さすがのルナルも、股間を嗅がせるならともかく、舐めさせたことなんてない。
あんなに見目が良くて逞しいオスなのに、救いようがないほど頭がおかしい夫だなんて、心の底から可哀想だわ。
久々にエトレへの哀れみを覚えるけれど、目の前のエトレが以前よりも自分に自信を持っているようだと感じ、喜ぶべきなのかしら、と思い直す。
ケェアは変態でも、妻を大事にする夫であることは間違いないようだ。
意味不明な言動は多いらしいけれど、暴力を振るわれることや罵倒されることはないという。
それ以前に、エトレに対しての不満を口にしないらしい。
醜すぎるエトレを女神と呼ぶ時点で、頭がおかしい。
婚姻の儀式の後も、自費で妻への贈り物を欠かさないオスだと聞けば、頭がかなりおかしくても、散財する夫よりは良いのかしら、と思い直す。
ルナルだって、人の夫を取っているつもりなんてないのだ。
店に来て勝手に貢ぐオスが悪い。
「……ルナル、わ、わたしは旦那様に、なんと言えば良いでしょうか、悲しませたくないのですっ」
「……」
そうくるのかー、とため息をつきそうになる。
立場としては、領主であるエトレの方が上のはずなのに、もともと執事になるように、と育てられたエトレは自己評価も低ければ、自分から意見を主張することも苦手だ。
「奥に子種を注いで欲しいの、とおねだりして御覧なさいな」
呆れてしまい、投げやりな助言をしてエトレを送り出したものの、その数日後にエトレが半泣きで駆け込んで来ることになるとは、さすがのルナルも予想できなかった。
「奥で出された後に、き、気絶するまで舐められるんですが、なんと言えば良いでしょうかっ」
エトレ本人は、本気で困っているようなのに。
ルナルとしては、どうにも惚気られているようにしか聞こえないのであった。
師匠と弟子の苦難は、まだまだ続きそうである。
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