【R18】ミスルトーの下で

Cleyera

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14 おねだり ※

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「満足したら、教えた通りにおねだりしろよ?」

 意味がわからないことを言われ、再び、尻の穴が冷たく濡れて撫でられる感触がやってくる。
 それでもさっきまでとは違う。
 さっきのは、体液を塗りつけるのが目的の行為だったのだろう。
 今、ジョーがおれにしているのは、明らかに愛撫だった。

「ひゃ、あっ、んっ、ああっ」

 じゅるじゅると音を立てて、舌の先が中に突き入れられる。
 尖った鉤爪の先で撫でるように、睾丸がたぷたぷと揺さぶられて持ち上げられてこねられて、柔らかく潰されるように形を変える。
 ニュプニュプと音がしそうな勢いで、器用な強い舌を使って穴を広げられる。

 同時に二箇所を責められて、腰が勝手に動く。
 腰から下がグズグズに溶けてしまいそうだ。
 ジョーの体液が原因なのか、おれがおかしくなってしまったのか、気持ちよくてたまらない。

「あぁっ、しりおかしくなるっ、ジョーゆるしてぇ」

 尻の穴が、ゆっくりと熱を持ってじわじわと痺れていく。
 もっと舐められたいと腰が揺れる。
 随意筋ではない腹の奥が動くのを感じられるはずがないのに、舌じゃ足りないと、もっと太くて長いのが欲しいと、望んで求めて誘うようにうごめくのを感じる。

「……」

 無言のジョーは、じゅるじゅると音を立てておれの尻の穴を甘やかし、まるで美味しいものを舐めているように執拗に舌を出し入れする。
 硬い鉤爪で引っ掛けるように包まれて、揺さぶられる睾丸と竿から快感が腰に走り抜ける。
 快感で、恥ずかしさで、嬉しくて頭の中がとろっとろに溶けていく。

「ジョー、っあ、ジョーっ」
「……」

 ジョーがおれの声に応えてくれない理由は、漠然と理解している。
 おれが口にしている言葉が〝おねだり〟じゃないからだ。
 無視しているわけじゃないのは、おれがジョーの名を呼ぶたびに、それに応えるように舌の動きが変わる事で感じられる。
 舐めて突いてこねて、舌べろってそんなに動くか?と思うような、複雑で繊細で力強い動きで、尻の穴がジョー専用の〝けつまんこ〟に変えられていく。

 鉤爪の先でくすぐられる睾丸が重い。
 腰が勝手に動く。
 イきたい、欲しい、もっと強い刺激が。
 でも刺激と快感が欲しいのは……おれが欲しいもの、本当に欲しいのは……。

「じょー、かっぱのまらいれて、おねがいぃ」

 おれが出した声は聞き取れないほどの涙声で、抱きしめていた枕も濡れてぐしゃぐしゃになっていた。
 なんでおれは泣いてるんだろう。

「……シゲ!?どうした、どっか痛いのか?」

 声を聞いて、初めておれが泣いてることに気がついたのか、ジョーが視界に姿を見せてくれた。

「わかんない、おれ、っわかんなっ」

 悲しいわけじゃない、嬉しいと思ってる。
 胸の奥がきゅうきゅうするのは、嬉しい時だろ?

「シゲ?どうした」

 うつ伏せで半分潰れたようになっていた体を起こされて、正面から抱きしめられた。

「思い出せなくても大丈夫だ、そんな顔すんなって」

 涙が止まらない。
 どんな顔してるのかなんて分からない。

「なんでジョーはおれなんか」
「なんかじゃない、シゲだけだ」

 他の誰も代わりにならねえ!ときつく抱きしめられて、痛かった胸の理由に気がついた。
 おれはきっと、子供の頃からずっと誰にも変われない存在だと、特別扱いされたいと、不相応に高望みしていたのだろう。

 他人よりも優れているわけじゃないと自覚してからも、おれを見て欲しい、認めて欲しいと一生懸命手伝いをしても、母親は「あら、やってくれたの」の一言しかくれなくて。
 唯一の居場所が欲しいと、溺れながら足掻いていた。

 代わりがいない人間なんて、この世にいない。
 大統領や王様だって、その気になればすげ替えができる。
 いくら寺の跡取りでも、妹や弟がおれの代わりになり得る。
 赤の他人に寺を任せたって構わないのだ。

 誕生日という、自分が主役になれる唯一の日を、家の事情でかまわれなかったおれは、諦めたつもりで諦められていなかったのだろう。
 大人になれば誕生日なんて嬉しくもなんともないのに、子供の頃のおれにとっては、年に一度の大事な日だった。

 それを、今になって与えてくれたのがジョーだった。
 記憶は細切れで、会話の内容も思い出せないけれど、それは理解した。
 今朝、ジョーに誕生日を祝ってもらったことで、これまでのことを吹っ切れたつもりでいたけれど、おれはひどく執念深いらしい。

 このままだと終わりなく、死ぬまで特別扱いを望み続ける気がする。
 埋められそうにない渇望を知り、自分の中のあまりにも深い泥沼を見てしまい、言葉をなくしていると、こつんと冷たいくちばしが鎖骨に当たった。

ウヌは、どこにでもいる河童だ。
 金持ちじゃねえし、イケメンでもねえ」
「……」
「そんなウヌでも、嫁くらいは唯一がいい」
「……」
「シゲをウヌのもんにする、絶対に」

 駄目だと思った。
 おれのような終わりない欲を抱えた始末に負えない者を、そばに置いておけば不幸になる。
 自分が家業を継ぐことを疑ったことはなかったし、御仏の教えを学ぶことは嫌いじゃない。
 だからこそきっと、おれは誰よりも煩悩を抱え込んでいるのだ。
 御仏による救済を周囲に説く前に、自分が今生の世で愛されたいと、みっともなくもがいている。
 御仏の愛なんて見えないものより、一心に向けられる情愛が欲しい。

 おれはこんなにも浅ましくて醜い。

「手放さねえからな」
「……ジョー」

 ジョーを不幸にすると知っているのに、どうして、この手を離せないのだろう。

「おれをはなさない?」
「もちろんだ」

 恥ずかしさをこらえて向かい合い、布団に正座したジョーの肩につかまって立ち上がる。
 嬉しそうな顔で、反応しているおれの股間を見ないでくれ。
 両脚を大きく開いて途中まで腰を下ろせば、ジョーの手がその先を誘導してくれた。

 硬くて冷たい先端が、尻の穴に触れたのを感じただけで、太ももが震えた。
 思いだせなくても、体は昨夜初めて知った受け入れる喜びを覚えているのだろう。

「入れるぞ、シゲ」
「う、んっっあ、あ"あ"あ"あ"っっ」

 人の性器とは違って先端がコブ状に膨らんでいない上に、全体的なイメージはウナギを思わせるような黒くて太い魔羅がズプズプと腹の中に埋め込まれていく。
 ジョーの体液と愛撫で緩みきっていた尻の穴は、排泄する場所ではなく性器を受け入れる〝けつまんこ〟に変わり、太くて長い魔羅を喜んで迎え入れ、咀嚼するように蠢いて中で食い締めているのを感じた。

 入口が気持ちいい、潰される前立腺が、擦られる壁が、貫かれる奥が、どこもかしこも気持ちいい。
 どこもかしこも気持ちよくて、どこが気持ちいいのか分からなくなっているから、ひたすらに気持ちいい。

「ああ"っジョー、おっきぃいっ」
「シゲ、可愛いシゲ」
「ひぁっ、奥っやめ、ゴリゴリしないでぇっ」

 チカチカと目の前が明滅する。
 ゆっくりと体を降ろされ、冷たい太ももが尻臀に触れると、冷たくて硬い太杭に腹の中を貫かれている喜びに、体がわなないた。

「気持ちいいかー?」
「奥はやだ、ん、んんっっぅ!」

 ゆさゆさと軽く揺さぶられるだけで、ジョーの魔羅の先端が奥をくにゅぐぬっと押し込んでくるのを感じる。
 腹の奥って、こんなに感覚があるものなんだろうか?と思いながら、あふれてしまいそうな快感に負けないように歯を食いしばった。

 昨夜の記憶は細切れで、快感に溺れていた記憶しか戻ってきていないから、この先が分からない。
 昨夜みたいに、記憶を飛ばしたくない。
 ジョーと話したこと、一緒にしたことを、全部覚えておきたいから。
 
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