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15 弱点 ※
しおりを挟む「奥は嫌か、それなら動くほうがいいか?」
「ま、だ、待って、まだなれてなっっああっっっ!!」
両方の尻臀に尖った冷たい指が食い込む。
尻を左右に広げられるように押さえられて、体をゆっさゆっさとリズミカルに上下させられると、ジョーの肩にしがみつくだけで精一杯になってしまった。
「ひい"い"ぃ"っ!あ"っあっーっ」
ぐっぽぐっぽと音を立てて、自分の尻がジョーの魔羅を受け入れている。
気持ちいい。
ジョーの冷たい体が気持ちいい、冷えた魔羅で体の中を愛されるのが気持ちいい。
与えられる何もかもが快感に繋がって、必死で目の前で揺れている頭にしがみついた、その時。
「あ、やべ」
「っえ?」
不意に顔が濡れた感覚がして、ぐらりとジョーの体が傾いた。
「ちくしょう、しまったぁ」
布団の上にジョーを押し倒したような体勢になってしまい焦るおれをよそに、ジョーの様子がおかしい。
力が入らないのか、もがくように腕を動かしていたかと思えば、四肢を投げ出してぐにゃりと伸びてしまった。
おれの中にある魔羅も力をなくしている。
「ジョー?」
「みず、み、水くれ、さらがっ」
水と皿……頭!?
そういえば、河童って頭の皿の水がなくなると弱るとか聞いたことがあるような、ないような。
おれが必死になってしがみついてしまったせいで、ジョーの頭の皿の水がこぼれたらしい。
皿って言われても、凹んでなかった気がするんだが、どういう仕組みになっているのかは不明だ。
慌てて尻から抜いて、力の入らない足を震わせて、生まれたての子鹿になった気分を味わいながら、シャツを羽織って部屋の外にある共同洗面所へ向かった。
洗面所までこんなに距離あったか?と泣きそうになりながら、おれが持ち込んだ歯磨き用のプラカップに水を汲んで、倒れているジョーのところに戻ってから、水道水で良いのか……?と悩みつつ差し出した。
「ジョー、水だ」
「……ぁあ……かっこ悪いなぁチキショウ」
上半身を助け起こそうとしたけれど、ジョーの体は岩のように重くて動かせなかった。
分厚い甲羅のせいだろうか?
仕方なく、寝ていても皿にかかるようにカップをゆっくりと傾けていくと、注いだ水が消えていく。
斜めになっているのに溢れていない、全て吸収されたようにすら見えたので、皿をものすごく見つめていると、冷たい腕に抱きしめられた。
「雰囲気なくなっちまったけど、続きしても良いかー?」
無意識なのか「よっこらせー」と言いながら体を起こしたジョーの、柔らかい状態の魔羅を見る。
力なくぐんにゃりしているところは、本当にうなぎのようだ。
河童の頭の皿は体を横や斜めにしても水はこぼれないけれど、おれがしがみつくとこぼれる?
股間の魔羅は、普段は生えてない(かもしれない)けれど、使うときは生える?
河童の生態が謎すぎるけれど、覚えておくべきだろう。
おれの方が身長があるから、ジョーと向かいあって座るような体位は駄目、と。
ジョーに抱きつかなければ良いけれど、中を愛撫されたら、なぜ抱きついたら駄目なのかなんて、考えられなくなるだろう。
少し悩んでから、来いよと両腕を広げるジョーの前に背中を向けて座った。
「これで、良いか?」
布団に手のひらをついて腰を上げ、膝を開いて上半身を倒す。
雌犬のような姿勢で、自分から尻を晒すのは恥ずかしいけれど、ジョーに倒れて欲しくない。
「駄目だ」
「え」
「シゲの顔が見えねぇじゃねえか」
「でも、皿が」
「皿ぁ?そんならラップでも張るか?」
「え?!」
河童の頭の皿って、本当にお皿扱いなのか?!と驚いて振り向いたおれに、ジョーがニタリと笑う。
からかわれたのだと気がつき、同時に、おれが深刻に考えすぎないように茶化しているのだと気がついた。
「シゲがでろでろに気持ちよく溶けてる顔を、正面から見てえ」
「恥ずかしいから嫌だ!」
そんなものは見られたくない。
誤魔化されないぞと声をあげると、ジョーがカラカラと笑った。
「しっかり者の嫁もらっちまったな」
「……うん」
「あー?嫁で良いのか?」
「二度も言わない」
「言わねえもなんも〝うん〟しか聞いてねえからな!?」
そっか、嫁かぁ!と満面の笑みになるジョーの顔が見られない。
散々逃さねえとか嫁にするとか言ってたくせに、なんでそんなに嬉しそうなんだ。
……自分から嫁にしてほしいなんて言えるわけがない。
「シゲのお披露目で、意地っ張りってのも付け加えねえとな」
「だからそのお披露目ってなに、ああっ」
くるりと体を回されて向かい合ったかと思えば、視界が急転して背中に布団が触れる。
抗う間もないうちに、膝を曲げられて太ももが左右に押し広げられる。
知らない間に再びガチガチになっていた魔羅の、ぬめる先端をぐりぐりと入り口に押し付けられて力が抜けた。
「早く子作りしてぇよなあ?」
「あ、あっ、ああ"あ"ぁあ"あーっっ♡」
入り口も中も、ゆっくりと冷たい肉に押し広げられる快感の中で、返事なんてできるはずがなかった。
ジョーの部屋から一歩も出ずに、年越し番組はかけられていたけれど見る余裕がなく、初詣にも行かずに、二人きりで肉欲に爛れた年末年始を過ごしている間、仕事のことを忘れていた。
忘れていたというよりも、快感に溺れて他のことが考えられなくなっていた、というか。
日にちも時間の感覚も無くなって、年越しの瞬間まで繋がったままで過ごしていたようで、つけっぱなしのテレビから聞こえる「明けましておめでとうございます」を聞いたジョーが「しまった、姫初めが!」と騒いでいた。
悲しそうに言っているけれど、今この時も、おれの腹の中にはジョーの魔羅が収まっている。
姫始めって……なぜこの状態で、新年初のご飯を炊いて食べたいって?
この建物はアパートかと思っていたら、ジョーのような独身妖専用の単身者寮のようなものらしい。
風呂トイレは共同で、食事は台所付きの食堂で自炊だという。
築年数不明の古い木造で、火器の使用は火事の原因になるので、部屋での炊事や喫煙は禁止されているという。
ケーキのろうそくの使用は、特別に許可を取ったと聞いた。
本来なら住んでいる本人以外、入ってはいけない独身寮に、唯一連れ込める例外。
それが嫁。
つまり嫁になると決まってる相手のみを、連れ込むことが許されている。
独身寮って、そういうものなのか?と思いつつ。
つまり、初めてここに来たクリスマスの日には、すでにおれはジョーの嫁だと認識されていたという事で。
何度も逃さねえとか言われてたけど、ジョーは初めから本気だったのだ。
思考能力がグッズグズのドロッドロになっている三日目突入あたりで説明されたので、本当に聞いた話なのか自信がない。
風呂は、一階にある共同だという大きな湯船に連れていかれるけれど、誰にも会ったことがない。
食べるものは、誰かが暖かい食事を部屋の前まで三食とも運んでくれるので、それを〝あーん〟で食べさせられる。
いつも和食だけど、ジョーは基本的に生野菜をかじっている。
……本当に独身寮ってこういうものか?
ジョーに奥を突かれて、気持ちいい場所をなぶられていると、何もかもがどうでもよくなってしまい、最後まで詳しく聞けなかった。
そんな感じで、年越しから新年で、ほとんど何かした覚えのないまま、底が見えなくて怖いほどの快感に溺れている間に終わった。
例年とは違った意味で、ありえない経験だった。
寝落ちの時は刺さった状態、目覚ましは奥まで刺される衝撃。
誰にも言えないひどい生活だったけれど、ジョーが言うには「最高のハネムーンだったな」と……最高?
朝も夜もなく、延々と終わらないセックス三昧がハネムーンで最高だと?
妖の常識を教えてもらいたい。
……いや、ハネムーンって何をするものだ?
仏前式までならともかく、寺の仕事をするのにハネムーンの知識は必要ないから、人の常識でもこれが普通なのかもしれない。
応援ありがとうございます!
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