神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

文字の大きさ
104 / 106
第四部 最後の神聖魔法

戦闘開始1

しおりを挟む
 中庭に出ると、井戸の周辺にもゲートが発生していた。
 アルバートは中庭まで出ると門の近くへ歩み寄る。門の奥から金色の瞳がこちらを見ていた。まるで隙を伺う獣のようだ。

 アルバートは風の精霊に呼びかける。彼らと回路を繋ぎ、思考を同調させていく。周囲に無数の青い光が浮かび上がり、それはアルバートを取り囲むように彼の周囲を飛び回った。

 門から魔物が出てくる。一体が現れると、まるで堰が決壊したかのように、魔物たちは一斉に飛び出してきた。それは大きな鳥のような姿をしており、大群で押し寄せてくる。そのどれもが一対の金色の瞳を輝かせていた。

「みんな、行くよ」

 アルバートの言葉と同時に、門に向かって突風が吹き荒れる。それは竜巻のように渦を巻きながら、魔物たちへと迫っていった。魔物たちはその突風に吹き飛ばされるが、すぐに態勢を立て直し、こちらに向かってくる。

(そうだ。それでいいよ)

 魔物たちの狙いが自分に集中したことを確認して、アルバートは再び魔物に向かって手をかざす。突風が吹き荒れ、風は刃のような鋭利な刃物となって魔物たちを次々と切り裂いていく。しかし、さすがに魔法攻撃に態勢があるのか、与えられる傷は浅い。致命傷には至らず、せいぜい怯ませるのが限界だった。

(やっぱり、一度で倒しきることはできないか)

 二撃、三撃とめげずに風の刃を繰り出していく。五撃当てたところで鳥の首が落ち、魔物の死骸は黒い霧となって立ち消えた。

「よし、五回だ」

 アルバートは先ほどよりも多い刃を作り出し、一斉に魔物に放つ。風の刃は執拗に魔物の首を狙って飛んでいき、一体、また一体と首を切り落としていく。

「はあ……はあ……」

 数十体を倒したところで、アルバートは肩で息をする。魔力の消費が激しく、よろめいて膝をついてしまう。彼は魔法攻撃に特化しているわけではなく、まして戦闘訓練を積んでもいないため、一度に多くの魔物を相手取るのは骨が折れる作業だった。

 しかし、魔物たちは仲間が倒されても怯むことなく、次々と門から出てくる。そしてまたこちらに襲いかかってきたのだ。

「くっ……!!」

 アルバートは後ろに下がりながら、風の塊を放つ。魔物たちはそれを掻い潜るように動き回り、その隙をついて襲いかかってきた。

(まずい……っ!)

 寸前のところで身体をねじり、魔物の攻撃を回避する。しかし、避けた拍子に体勢が崩れ、地面に倒れる形になってしまう。

 自らの定めた獲物に生まれた隙を魔物は逃さなかった。金色の瞳が一斉にアルバートを捉え、まっすぐに飛んでくると、その爪を振りかざす。

 間一髪のところで魔物の攻撃を避けたが、その爪が彼の腕をかすめていた。服が裂け、そこから赤い血が滲む。

「くっ……」

 しかし考えている余裕はなかった。痛みに顔をしかめながらも、アルバートはすぐに立ち上がる。

 数が多すぎる。こちらはすでに疲労困憊だというのに、魔物たちは次々と現れ、攻撃を仕掛けてくるのだ。魔物の一部は教会に向かいだしていて、警報を知らせる鐘の音がけたたましく響き渡っている。

(何か……何か方法は……!!)

 アルバートは魔物の群れを押しのけながら考える。しかし、慣れない攻撃魔法の行使はそろそろ限界に近かった。荒い息を吐きながら、彼は膝をつく。そして、そこに魔物たちが襲い掛かる。

(やられる――!!)

 振り上げられた尖った爪が自分を貫く姿を想像して、アルバートは思わず目を瞑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...