神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

文字の大きさ
2 / 106
第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

02.マナ1

しおりを挟む
 世界創生の時代、人間族と魔族は一つの大陸で暮らしていた。
 しかし、二つの種族の争いは絶えることがなく、世界は常に争いで溢れていた。
 それを憂いた神龍は、世界を二つに分断し、片方を人間族が暮らす人界、もう片方を魔族の住む魔界として分け隔てた。
 神龍自身も白龍シュカと黒龍ディアーナに分け、白龍を人界の守護、黒龍を魔界の守護をになった。
 そして二つの世界の行き来を転移門ゲートと呼ばれる空間移動魔法のみに限定した。
 これにより世界に平和が訪れた。

 白龍シュカは神聖魔法を用いて人界に強力な結界を張った。
 しかし、その結界には弱点があった。
 シュカは自らの力でマナを生み出すことができず、彼女一人の力では結界を維持することができなかったのだ。

 そんな時、シュカは自然界に存在する神秘の力をマナと呼ばれる神聖な魔力に変換できる男と出会った。
 シュカはその男に「私にマナを捧げてください」と頼んだ。
 そして彼は承諾し、彼が捧げた魔力により、世界の結界は保たれた。

「――なので、神龍の愛し子が担う最も重要な役割は、マナの奉納です」

 ハデスは自室で、アルバートを膝に乗せて語り聞かせる。

「マナの奉納?」

 アルバートは首を傾げて、つぶらな瞳がハデスを見上げた。
 聞きなれない言葉に、ハデスが何を言っているのか分からなかったのだ。

「実物を見せましょう」

 彼は自らの手を広げてみせる。
 すると彼の手のひらが淡く光りだした。
 光は小さな粒となり、ハデスの手を離れるとふわふわと空中を漂っていく。

「……っ!!」

 その輝きにアルバートは驚いた表情を浮かべる。

「この光の粒がマナと呼ばれるものです」

 ハデスはそう言うと、さらに手を広げる。
 すると先程よりも多くの光が放たれて部屋中に広がった。
 それはまるで光の粒子のようで、とても美しい光景だった。

「わぁ……」

 アルバートは感嘆の声を上げる。
 ハデスは彼の素直な反応に目を細めると、その粒子をいくつか集めて、光の蝶を生み出した。
 光の蝶はハデスの手のひらからふわりと飛び立ち、アルバートの周りをくるくると舞う。

「すごい……」

 アルバートはその幻想的な光景に目を輝かせる。

「マナは神龍の愛し子にしか生み出すことができません。そしてこれが神龍様に送る力の基本形となります」

 ハデスがそう言うと、光の蝶たちは一斉に彼の元に戻り始める。
 そしてハデスの手に戻ると、その光は消えてなくなった。

「綺麗……」

 アルバートはうっとりとした表情で言った。
 そして不思議そうにハデスの大きな手を触ってみる。
 しかし光は現れず、そこにあるのは少ししわがれた壮年の男の手だけだ。
 それが余計に不思議で、彼の好奇心を掻き立てていた。
 ハデスの手を上から見たり、下から覗き込んだり、触ったりしてくるアルバートを見てハデスは優しく微笑む。

「アルも練習すればできるようになるでしょう。まずは神秘の力をマナに変換する方法を習得しましょう」

 ハデスの言葉に、アルバートは目を輝かせて頷く。好奇心旺盛な様子にハデスも顔を綻ばせた。

「まず、手のひらに意識を集中させてください。そしてそこに光の粒が集まるイメージをするのです」

 ハデスはアルバートの右手を取ると、彼の小さな手のひらをトントンと指先で優しく叩く。
 優しい刺激に釣られるようにアルバートの視線が自分の手のひらに向かう。

 (手のひら……意識……)

 アルバートはハデスの言葉を頭の中で繰り返す。自分の手を広げ、そこに意識を集めていく。
 すると手のひらがじんわりと熱くなり、何かが集まってくるような感覚があった。

「あったかい……」

「その感覚を忘れないようにしてくださいね。次はそれを外に放出します。先程見たような光の粒が手のひらから溢れ出る光景をイメージしなさい」

 ハデスの言葉に、アルバートはこくりと頷いた。
 そして彼は手のひらに集まった光を外へと放つようにイメージをした。
 すると手から光が溢れ出し、それは部屋中に広がる。
 まるで噴水のように噴き出す光の粒にハデスは思わず目を見開く。

「これは……!!」

「できた!」

 そんなハデスの様子には構わず、アルバートは嬉しそうに言った。

「まさか一度で成功させるとは……通常、マナを出せるようになるまでに五年の修練が必要なのですが、いやはやあなたには驚かされました。では次はその光を自在に操れるように練習をしましょう」

 ハデスは優しく微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...