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第一部 神龍の愛し子と神聖魔法
09.神聖魔法3
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「アルもやってみましょう」
ハデスに言われてアルバートは頷くと、手のひらからマナになった神秘の力を放出する。
光の粒子はきらきらと輝きながら宙を舞い、周囲を光で満たしていく。
「その粒子を一箇所に集めてみてください」
「こう……かな?」
アルバートは絵を描くように粒子を誘導し、目の前に集める。
彼の手のひらから放出された光の粒子がアルバートの前で球のように丸くなった。
窺うようにハデスを見上げると、彼は笑顔で頷く。
「やり方は合ってます。もう少し密度を上げて、小さな球にしてみましょう。金色の鉛玉のような形になるはずです」
「うん、やってみる」
アルバートは自らの手のひらから溢れた光の粒子で球体を作り出す。
しかし、彼の作り出した球体は砂を丸めたように粒子状の光が見え隠れしていて、触れても実体が無く、何の感触も得られなかった。
「え……どうして?」
アルバートがそう問いかけると、ハデスは優しく微笑んだ。
「それはマナの密度が足りていないからです」
「密度?」
「ええ、密度です。物質化が不完全な状態です。密度が高ければ高いほど物質化した際に強固な物質になります。逆に密度が低いと光のように軽くて、形を留めておくことができません」
「密度……」
「この砂粒ひとつひとつを光の粒子とすると、アルの作り出した球の密度はこのくらいです」
ハデスはそういって懐から四角い器を取り出すと、その中に砂を入れる。
そして砂の中に指を入れると、砂をかき混ぜて見せた。
「密度が低ければ、指は砂の中に沈んでしまいます。反対に高ければこのように指を入れることはできません。指が差し込めないほどの高密度の状態を、マナの物質化と呼んでいます」
ハデスはそう言ってアルバートを見ると、彼は頷いてみせるが、なおも難しい表情を浮かべている。
「密度を上げるにはどうしたらいいの?」
「最初にやって貰ったように、マナを一箇所に集めるのです。アルの球はもっと小さく凝縮させる練習が必要そうですね」
「練習……」
「はい、練習あるのみです。アルならきっとできますよ」
そう言って、ハデスは優しくアルバートの頭を撫でた。
「うん、頑張る」
アルバートはそう言うと、再び手のひらから光の粒子を放出する。
そしてそれを一箇所に集めると、密度を濃くして小さな球体に仕上げる。
しかし、それはすぐに霧散し、空気中に消えていってしまった。
「あ……」
「ふふ、焦らなくても大丈夫ですよ。神聖魔法の習得には五年はかかると言われ、技術の研鑽は一生かけて行われるものです。ゆっくりやっていきましょう」
「うん」
アルバートは頷き、その場にへたり込む。
もう魔力も残っていないようで、その顔色は青白くなっていた。
「アル、少し休みましょう」
ハデスはそう言うと、アルバートの身体を抱き上げ、近くに腰を下ろした。
「え……でも、まだ……」
アルバートは驚いて声を上げてハデスの腕から逃れようとするが、ハデスは有無を言わさずに自らの膝の上にアルバートを座らせる。
「物質化は、マナを奉納する時の数倍の魔力を使います。私たちが身体に蓄えておける魔力量ではすぐに限界が来てしまうのです。ですから、魔法を使う際には自然界のマナを魔力に変えて不足分を補う必要があるのですが…… これも練習が必要そうです
「はい……」
アルバートは頷くと、抵抗を諦めてハデスの身体に体重を預ける。
ハデスはアルバートを抱き締めると、幼い子供を寝かしつけるかのようにゆっくりと身体を揺らした。
優しく伝わる揺れが心地よくて、アルバートは彼の腕の中で微睡んでいった。
アルバートはそれから毎日神聖魔法の修行に励んだ。
しかし、何日経っても習得の兆しは見えず、物質化することは叶わなかった。
◆
「明日、私は魔物の浄化に赴くことになりました」
ある日、ハデスの執務室に呼び出されたアルバートは、ハデスからそう告げられた。
「魔物の浄化?」
「はい、近隣の森で魔物の存在が確認されたため、神聖魔法で付近の浄化を行うことになりました。本来はアルにも同行して経験を積んでもらいたいところですが、危険が伴うので留守番をお願いします」
「……はい」
アルバートは小さく頷いた。しかし唇を引き結び、どこか悔しさを滲ませている。
彼はまだ、神聖魔法はおろか、物質化さえできていないのだ。
同行したところで足手まといになるのは明白だったが、それを彼自身が理解しているからこそ、未熟さを恥じる気持ちがあるのだろう。
「近場なので夜には戻りますが……その間、あなたは神聖魔法の修行を続けてください。神殿の外へはティーアに付き添うよう伝えてあります。留守を守ることも重要な役目です。よろしくお願いしますね」
ハデスはそう言って、アルバートに微笑む。
「わかりました」
アルバートは小さく返事をした。
ハデスに言われてアルバートは頷くと、手のひらからマナになった神秘の力を放出する。
光の粒子はきらきらと輝きながら宙を舞い、周囲を光で満たしていく。
「その粒子を一箇所に集めてみてください」
「こう……かな?」
アルバートは絵を描くように粒子を誘導し、目の前に集める。
彼の手のひらから放出された光の粒子がアルバートの前で球のように丸くなった。
窺うようにハデスを見上げると、彼は笑顔で頷く。
「やり方は合ってます。もう少し密度を上げて、小さな球にしてみましょう。金色の鉛玉のような形になるはずです」
「うん、やってみる」
アルバートは自らの手のひらから溢れた光の粒子で球体を作り出す。
しかし、彼の作り出した球体は砂を丸めたように粒子状の光が見え隠れしていて、触れても実体が無く、何の感触も得られなかった。
「え……どうして?」
アルバートがそう問いかけると、ハデスは優しく微笑んだ。
「それはマナの密度が足りていないからです」
「密度?」
「ええ、密度です。物質化が不完全な状態です。密度が高ければ高いほど物質化した際に強固な物質になります。逆に密度が低いと光のように軽くて、形を留めておくことができません」
「密度……」
「この砂粒ひとつひとつを光の粒子とすると、アルの作り出した球の密度はこのくらいです」
ハデスはそういって懐から四角い器を取り出すと、その中に砂を入れる。
そして砂の中に指を入れると、砂をかき混ぜて見せた。
「密度が低ければ、指は砂の中に沈んでしまいます。反対に高ければこのように指を入れることはできません。指が差し込めないほどの高密度の状態を、マナの物質化と呼んでいます」
ハデスはそう言ってアルバートを見ると、彼は頷いてみせるが、なおも難しい表情を浮かべている。
「密度を上げるにはどうしたらいいの?」
「最初にやって貰ったように、マナを一箇所に集めるのです。アルの球はもっと小さく凝縮させる練習が必要そうですね」
「練習……」
「はい、練習あるのみです。アルならきっとできますよ」
そう言って、ハデスは優しくアルバートの頭を撫でた。
「うん、頑張る」
アルバートはそう言うと、再び手のひらから光の粒子を放出する。
そしてそれを一箇所に集めると、密度を濃くして小さな球体に仕上げる。
しかし、それはすぐに霧散し、空気中に消えていってしまった。
「あ……」
「ふふ、焦らなくても大丈夫ですよ。神聖魔法の習得には五年はかかると言われ、技術の研鑽は一生かけて行われるものです。ゆっくりやっていきましょう」
「うん」
アルバートは頷き、その場にへたり込む。
もう魔力も残っていないようで、その顔色は青白くなっていた。
「アル、少し休みましょう」
ハデスはそう言うと、アルバートの身体を抱き上げ、近くに腰を下ろした。
「え……でも、まだ……」
アルバートは驚いて声を上げてハデスの腕から逃れようとするが、ハデスは有無を言わさずに自らの膝の上にアルバートを座らせる。
「物質化は、マナを奉納する時の数倍の魔力を使います。私たちが身体に蓄えておける魔力量ではすぐに限界が来てしまうのです。ですから、魔法を使う際には自然界のマナを魔力に変えて不足分を補う必要があるのですが…… これも練習が必要そうです
「はい……」
アルバートは頷くと、抵抗を諦めてハデスの身体に体重を預ける。
ハデスはアルバートを抱き締めると、幼い子供を寝かしつけるかのようにゆっくりと身体を揺らした。
優しく伝わる揺れが心地よくて、アルバートは彼の腕の中で微睡んでいった。
アルバートはそれから毎日神聖魔法の修行に励んだ。
しかし、何日経っても習得の兆しは見えず、物質化することは叶わなかった。
◆
「明日、私は魔物の浄化に赴くことになりました」
ある日、ハデスの執務室に呼び出されたアルバートは、ハデスからそう告げられた。
「魔物の浄化?」
「はい、近隣の森で魔物の存在が確認されたため、神聖魔法で付近の浄化を行うことになりました。本来はアルにも同行して経験を積んでもらいたいところですが、危険が伴うので留守番をお願いします」
「……はい」
アルバートは小さく頷いた。しかし唇を引き結び、どこか悔しさを滲ませている。
彼はまだ、神聖魔法はおろか、物質化さえできていないのだ。
同行したところで足手まといになるのは明白だったが、それを彼自身が理解しているからこそ、未熟さを恥じる気持ちがあるのだろう。
「近場なので夜には戻りますが……その間、あなたは神聖魔法の修行を続けてください。神殿の外へはティーアに付き添うよう伝えてあります。留守を守ることも重要な役目です。よろしくお願いしますね」
ハデスはそう言って、アルバートに微笑む。
「わかりました」
アルバートは小さく返事をした。
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