神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

20.リオル3

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 リオルに首を絞められて脱力するティーアを見ながら、彼はアルバートに問いかける。

「この人間は、君にとって大事なもの?」

「ティーアを離せ!」

「僕の質問の答えになってないよ。答える気がないなら……この人間はこうしちゃおうかな」

 リオルはそう言うと、更に力を強めた。
 するとティーアの身体がビクビクと痙攣し始め、苦しそうなうめき声を上げる。アルバートはその姿を見て懇願するように叫んだ。

「お願い!やめて!」

 その声を聞いて魔族の口元が緩んだように見えたが、彼はすぐに表情を引き締めると口を開いた。

「じゃあ答えて」

「……大事な人だよ……」

 アルバートの声は小さく震えていたがそれでもしっかりと答えた。
 それを聞いた途端、リオルが興味深そうに笑った気がした。
 彼はゆっくりと手を離すとティーアを地面に下ろした。彼女の身体は力なく倒れ込み、アルバートは彼女に駆け寄る。

「ティーア!大丈夫?」

 アルバートが抱き起こすと、彼女は小さく咳き込み息を吹き返す。
 呼吸が戻ったことに安堵する。
 その様子を見たリオルは口元を綻ばせながら二人の前まで歩み寄る。
 彼はしゃがみ込むと、アルバート目を覗き込むようにして口を開いた。

「神龍の愛し子……それもまだ神聖魔法を満足に使えない雛鳥とは珍しい。君たちはいつだって、成長するまで神殿の結界の中に隠されてしまうからね」

 リオルはそう言いながら手を伸ばし、アルバートの腕を強く掴んだ。
 強い痛みがアルバートを襲い、顔をしかめる。
 しかしリオルはその手を離そうとしない。それどころか、彼の反応を楽しむかのように、彼は握る力を強くしてくる。

「……っ!」

 痛みに耐えかねて、アルバートの口からは思わず声が漏れ出た。
 その反応を見てリオルの口元がさらにつり上がる。

「痛いかい?それは良かった。じゃあ一緒に行こうか」

 彼はそう言って笑みを浮かべると、そのままアルバートを担ぎ上げる。
 抵抗しようと試みるも、力の差は歴然でどうすることもできない。

「いやだ!」

「君に拒否権はないよ。ふふ、ちょっと人界を偵察して帰る予定が、思わぬ収穫だ」

 リオルは楽しげに笑うと、アルバートを担いだのと反対の手でティーアの襟首を掴み、彼女を引きずるように歩を進める。

「離して!」

 アルバートはじたばたともがくが、リオルの腕の力は強く、逃れることができなかった。
 抵抗するアルバートを鬱陶しいと感じたのか、リオルは顔をしかめた。

「こら、暴れちゃだめだよ。いいね?このまま僕と一緒に魔界に行くよ」

 幼い子供に言い聞かせるようにリオルは言う。
 黒い渦に向かって歩き出す足取りには一切の迷いがなく、しまいには鼻歌まで歌い出す。
 アルバートは抵抗するが、リオルの肩から降りることも出来ずに、ただ運ばれていくしかない。

(いやだ!)

 アルバートは唇を噛み締め、悔しげに拳を作った。
 目から涙が溢れ出た。
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