神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

21.小さな抵抗1

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(何か……何か手は……)

 アルバートは視線を落とす。
 そこにはティーアがいる。
 力無く横たわる彼女は意識はあるようだが抵抗出来るだけの気力はないようだった。
 彼女はリオルに襟首を掴まれずるずると硬い地面の上を引きずられている。
 引きずられたせいで、彼女の足は擦り傷で血が滲んでいて、とても痛ましい姿だ。

 黒い渦がどんどん近づいてくる。
 魔界とはどのようなところだろう。
 アルバートは考える。
 きっと神龍の愛し子ではないティーアのほうが扱いは酷くなる。
 気丈な彼女がリオルの玩具にされる姿を想像する。
 与えられる痛みと苦しみに絶望して、彼女がその瞳から光を無くすのを想像する。

 それは。
 それはとても恐ろしい光景だと思った。

 アルバートは目を細める。
 頭の中に浮かぶのは花畑ではしゃぐティーアの姿と、首を絞められて苦しげに顔を歪める彼女の姿。
 その姿を想うと、胸が締め付けられるように痛むのだ。
 彼女が同じ神殿で生活するかけがえのない家族であり、それがどれだけ大切かな存在なのかを十分すぎるほどに理解していた。
 以前、ハデスから教わったことが頭をよぎる。

(神聖魔法は人間にとってはいかなる傷も治す治癒、魔族にとっては強力な浄化の力を発揮します)

 浄化。
 アルバートは反芻する。
 彼は障壁以外の神聖魔法を使ったことがなかった。
 浄化は高度な術式のため、使い方もまだ教わっていなかった。
 ハデスが使っている姿を見たことがある。

 けれど、ただそれだけだった。

 アルバートは自分の手のひらに神聖魔力を集める。
 それをどうすれば浄化の効果をもたらすことができるのか、アルバートには想像もつかなかった。
 けれどそれが発動できるなら、この状況を打開できるかもしれない。
 仮に発動に至らなかったとしても、発動を錯覚させることができたなら、相手にも隙ができるかもしれない。
 かつて見たハデスの神聖魔法を思い浮かべると、アルバートは魔力を集め、それを一気に放出した。
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