神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

22.小さな抵抗2

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「神聖魔法『浄化』、君使えるの!?」

 放出される光の粒子にリオルは慌てたようだった。彼はティーアを手放し、アルバートを投げ捨てると、彼から距離を取る。
 その隙をついて、アルバートはティーアに駆け寄った。

「ティーア、走れる?逃げるよ!」

 そしてティーアを抱き起こすと早口で叫ぶように言う。幸い、彼女は意識を取り戻していたようだった。

「う、うん」

 ティーアは頷くとアルバートの手を取り立ち上がる。
 ティーアは少しふらついていたが、立って歩くことができた。
 アルバートはそんな彼女の手を握ると、リオルから離れようと必死に駆け出した。

「逃がさないよ」

 そう言うと同時に、リオルは空中に何かを描くように自身の目の前で指を踊らせる。
 すると、瞬く間に虚空に魔法陣が浮かび上がり、円陣の中央から鋼鉄の鎖が飛び出す。
 鎖はアルバートとティーアの身体に絡みつき、その動きを拘束した。

「ぐっ……」

 鎖に縛られ、二人は地面に倒れ込んだ。
 その様子を見てリオルは満足そうな笑みを浮かべると一歩ずつゆっくり二人に近づいて来る。
 その足取りには余裕があり、焦りは全く感じられなかった。
 まるで獲物を捕らえた狩人のような態度で二人の前にしゃがみ込む。
 そして冷たい視線をアルバートに向けて口を開いた。

「さっきの、浄化じゃなかった。ハッタリだね?すごいね、この僕を騙すなんて」

 リオルはそう言って笑うが、その目は全く笑っていなかった。

「でもさ、この僕に反抗したんだ。相応の報いは受けてもらわないとね」

 リオルはそう言うと、ティーアの服をはだけさせ、首筋を露わにする。

「まずはティーア、君からだよ」

「やだ……」

 ティーアは弱々しく首を振りながら抵抗するが、リオルは彼女の言葉など聞こえていないかのように首筋を指先で撫で上げる。
 そして顔を近づけると、その柔らかな肌に歯を立て、強く噛みついた。

「っ!!」

 首筋に走る鋭い痛みに彼女は悲鳴を上げた。

「痛い?」

 リオルはそう問いかけるが、返事はない。
 彼女はただ痛みに耐えるように歯を食いしばり、その目からは涙が流れていた。
 その様子を見て、彼は笑い声を上げる。
 楽しそうに、愉快に、狂ったように笑った。

「いいね!その顔だよ。その苦痛に歪んだ顔も、僕に手も足も出ずにただ蹂躙されるしかなくて無力感で苛まれる姿も……ああ本当にたまらないよ」

 リオルはうっとりとした表情でティーアを見つめながら言った。
 そして彼は再びティーアに噛みつく。
 まるで彼女の血肉をすすっているかの光景にアルバートは蒼白した。

「ティーア……ティーア!!」

 アルバートは自身の拘束を解こうと必死にもがくが、リオルが魔法で生み出した鎖は強く締め付けていて、びくともしない。
 それでも彼は諦めず、何度も名前を呼び続ける。
 それが不協和音に聞こえたのだろう。
 リオルは顔をしかめると、ティーアから顔を離しアルバートの顔を殴りつけた。

「うるさいよ」

 その瞳は冷たく、怒りに満ちていた。
 アルバートの口の中に血の味が広がる。強い打撃に脳が揺れ、視界が明滅した。

「アル。君の順番はまだだよ。そこで黙って見ててね」

 そう言うと彼はもう一度彼女の首筋に歯を立てた。
 今度は先程よりも深く犬歯が食い込み鮮血が流れると、彼女は悲鳴に近い声を上げて身をよじらせる。
 しかし身体は鎖で拘束されているため逃げることは叶わない。むしろ動けば動くほど強く締め付けられて痛みが増すようだった。
 そのため、もがくティーアの身体には痛ましい鎖のあざがいくつも浮かび上がっていた。

「アル……逃げ……」

 ティーアは今にも消え入りそうなほど小さな声音で言葉を紡ぐ。
 しかし途中で意識が途切れたのか、彼女の言葉は最後まで続かなかった。

「そんな……ティーア……!!」

 アルバートは叫ぶが、彼女は反応しない。
 リオルは愉快そうに笑い声を上げる。
 その表情は優越感と快楽で満ち溢れていた。
 アルバートはリオルを睨んだ。
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