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第二部 雪華の祈り
48.祠の森1
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目を開くと、見慣れた天井と青い髪の少女が映った。
救護室のベッドで横になる自分とその傍の椅子に腰掛けるマリカの姿。マリカは舟を漕ぐように眠っている。夜更かしが好きな彼女にとって、日中は眠気のピークになるのだ。健やかな寝息を立てている彼女はしばらく起きないだろう。
まるで悪夢を見ていたような気分だった。しかし、今しがたに見た光景が悪夢でなく現実であることはなんとなく理解できた。
少し横になったからか身体を苛んでいた重みは消えていた。
アルバートはマリカを起こさないよう、物音に細心の注意を払いながらベッドから抜け出した。
(マリカ、ごめん)
心の中で謝りながら、アルバートは救護室を出た。そしてそのまま神殿の外へ出ると、雪道を歩き出す。
「早く……早く行かなきゃ」
小さく呟く声は誰にも届かずに雪に溶けて消える。
教会の裏に足を進めると、雪に埋もれ葉の落ちた木々の群れがアルバートを出迎える。その光景に違和感を覚えた。
数日前、ロゼッタと二人で散策に訪れた際には、緑の葉で覆われた豊かな森だったはずだ。積雪で見た目が変わるのは仕方がないこととして、たった数日で枯れ木のようにすべての葉が同時に落葉するだろうか。まるであの時の自分とロゼッタだけが森の木々が緑で色づいていると思い込んでいたかのようで気味が悪い。
森の中に足を踏み入れ、乱立する木々の隙間を抜けていくと、突然目に映る世界が変わる場所があった。そこに踏み込んだ瞬間に、まるで別世界に迷い込んだかのように景色が塗り替わる。枯れ木だった木々も、深い雪で埋もれていた地面もなくなり、春の森に迷い込んだかのように周囲の景色が一掃される。
彼を出迎えた光景は、ロゼッタと訪れた花畑だった。
試しに今まで歩いてきた雪道を振り返ってみるが、緑の木々に彩られていて先ほどまで歩いてきた殺風景な雪景色は一切ない。
しかし、少し引き返して花畑の外に出ると再び深い雪と枯れ木の森が彼を取り巻いた。
(空間転移……もしくは精神干渉系の魔法?)
森の中に見えない境界線のようなものがあって、そこを超えると景色が変わるようだった。それが同じ場所なのか、別の異界のような場所に迷い込んでいるのかは判別できなかったが、何者かが魔法で形成した空間であることは間違いないと思った。
アルバートは周囲を警戒しつつ歩を進め、祠を目指して緑の木々が生い茂る森に踏み込んだ。
一度訪れたことがあるだけに、祠の前にたどり着くのは簡単だった。しかし、近くなればなるほどアルバートの頭の中でささやきかけてくる声が大きくなる。
扉を開けよとささやきかけてくる。
(うるさい、黙れ)
アルバートはその声に向かって悪態をついた。すると、ささやき声はしばらく定型文を止めてケタケタと笑い声を立てた。
まるで自我のようなものがあるようだと思った。
頭に響く声を聴いていると、数日前に何かが入り込むかのような感覚に襲われた恐怖がフラッシュバックし、全身が震えた。しかし、足は止めない。止めるわけにはいかなかった。
程なくして祠の前にたどり着く。そこは数日前と変わらず、苔が生え、少し崩れかけている。そのすぐ傍に目を向けて、アルバートは目を大きく見開いた。
「アレスタ!!」
夢で見たのと同じ光景だった。
祠の傍には、アレスタがうつ伏せになって横たわっていた。
救護室のベッドで横になる自分とその傍の椅子に腰掛けるマリカの姿。マリカは舟を漕ぐように眠っている。夜更かしが好きな彼女にとって、日中は眠気のピークになるのだ。健やかな寝息を立てている彼女はしばらく起きないだろう。
まるで悪夢を見ていたような気分だった。しかし、今しがたに見た光景が悪夢でなく現実であることはなんとなく理解できた。
少し横になったからか身体を苛んでいた重みは消えていた。
アルバートはマリカを起こさないよう、物音に細心の注意を払いながらベッドから抜け出した。
(マリカ、ごめん)
心の中で謝りながら、アルバートは救護室を出た。そしてそのまま神殿の外へ出ると、雪道を歩き出す。
「早く……早く行かなきゃ」
小さく呟く声は誰にも届かずに雪に溶けて消える。
教会の裏に足を進めると、雪に埋もれ葉の落ちた木々の群れがアルバートを出迎える。その光景に違和感を覚えた。
数日前、ロゼッタと二人で散策に訪れた際には、緑の葉で覆われた豊かな森だったはずだ。積雪で見た目が変わるのは仕方がないこととして、たった数日で枯れ木のようにすべての葉が同時に落葉するだろうか。まるであの時の自分とロゼッタだけが森の木々が緑で色づいていると思い込んでいたかのようで気味が悪い。
森の中に足を踏み入れ、乱立する木々の隙間を抜けていくと、突然目に映る世界が変わる場所があった。そこに踏み込んだ瞬間に、まるで別世界に迷い込んだかのように景色が塗り替わる。枯れ木だった木々も、深い雪で埋もれていた地面もなくなり、春の森に迷い込んだかのように周囲の景色が一掃される。
彼を出迎えた光景は、ロゼッタと訪れた花畑だった。
試しに今まで歩いてきた雪道を振り返ってみるが、緑の木々に彩られていて先ほどまで歩いてきた殺風景な雪景色は一切ない。
しかし、少し引き返して花畑の外に出ると再び深い雪と枯れ木の森が彼を取り巻いた。
(空間転移……もしくは精神干渉系の魔法?)
森の中に見えない境界線のようなものがあって、そこを超えると景色が変わるようだった。それが同じ場所なのか、別の異界のような場所に迷い込んでいるのかは判別できなかったが、何者かが魔法で形成した空間であることは間違いないと思った。
アルバートは周囲を警戒しつつ歩を進め、祠を目指して緑の木々が生い茂る森に踏み込んだ。
一度訪れたことがあるだけに、祠の前にたどり着くのは簡単だった。しかし、近くなればなるほどアルバートの頭の中でささやきかけてくる声が大きくなる。
扉を開けよとささやきかけてくる。
(うるさい、黙れ)
アルバートはその声に向かって悪態をついた。すると、ささやき声はしばらく定型文を止めてケタケタと笑い声を立てた。
まるで自我のようなものがあるようだと思った。
頭に響く声を聴いていると、数日前に何かが入り込むかのような感覚に襲われた恐怖がフラッシュバックし、全身が震えた。しかし、足は止めない。止めるわけにはいかなかった。
程なくして祠の前にたどり着く。そこは数日前と変わらず、苔が生え、少し崩れかけている。そのすぐ傍に目を向けて、アルバートは目を大きく見開いた。
「アレスタ!!」
夢で見たのと同じ光景だった。
祠の傍には、アレスタがうつ伏せになって横たわっていた。
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