神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第二部 雪華の祈り

31.旅路2

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「アル、着きましたよ」

 ダーハート教会に到着する頃には、心地良い馬車の揺れと初めての長旅による疲れで、アルバートはハデスの膝を枕にして眠ってしまっていた。ハデスはそんなアルバートを優しくゆすり起こす。

 アルバートは、ハデスにゆすられてはっと目を覚ます。そして慌てて体を起こすと、恥ずかしいそうに顔を背けた。

 少し前までアルバートはハデスの膝がお気に入りで、一日の勤めを終えたあとなどはよくハデスにねだっていた。しかし、最近は恥ずかしがってあまりねだらなくなっていた。

「ふふ……アルはまだまだ甘えん坊さんですね」

「そんなことない!」

 アルバートは顔を真っ赤にすると、ぷいっと顔を背けた。そんな姿も可愛らしい。ハデスは、アルバートの頭を撫でると、アルバートを抱えて馬車を降りる。

 冷たい風が吹き抜けて、アルバートは思わず身震いする。周囲を見回すと、一面の雪景色の中に小さな村が広がっていた。

 点在する家々は真っ白に覆われていて、屋根に降り積もった雪が時折り雪崩となって崩れ落ちる。

 ところどころ雪が踏み固められた場所が道のように続いている箇所があるものの、それも新しい雪が降ってしまえば消えてなくなってしまうであろうことは容易に想像がついた。

 アルバートはハデスに降ろされ両足を地面につけると自らの服の裾をきゅっと握った。まだまだ幼い子供だ。ハデスは笑って裾を掴むアルバートの手を握ってやる。繋いだ彼の手は冷え切っていた。

「寒いでしょう、早く教会に向かいましょう」

 ハデスはアルバートを安心させるように微笑むと、手を握りなおして歩を進める。そして村の中央に位置する建物へと到着した。その建物は集会所のような簡素な煉瓦造の建築だが、寒さをしのぐためか窓は全て閉じられていた。

「ここがダーハート教会です。私の古い知人が司祭を勤めているのですよ」

 ハデスはそう言うと、木製の扉を押して教会の中に入る。重々しい扉が開き、その奥の景色が目に映る。

「わぁ……」

 思わず感嘆の声を漏らしてしまうほどの美しい光景だった。

 天井まで届くステンドグラスから差し込む光に照らされた内部は、白を基調とした荘厳な雰囲気で満ちていた。

「ハデス・イルジアス様、アルバート・グランディア様と白龍の神殿の神官様方がご到着されました!」

 教会に入ると、修道士の声が響き渡った。その声に弾かれるように、修道士たちが一斉に一行を出迎える。

 ハデスは修道士たちの前に立つソルニアの姿を捉えると、相好を崩した。

「ソルニア殿、お久しぶりです。ご健在のようで何よりです」

「ハデス殿こそわざわざお越しいただきありがとうございます」

 二人は握手を交わして互いの健在を喜んだ。
 ソルニアはアルバートに目線を合わせるためにしゃがみこむと、柔らかい笑みを浮かべた。

「こんにちは、アルバート・グランディア様。お会いできて光栄です」

「初めまして、アルバート・グランディアです」

 アルバートは緊張しているのか、少し硬い声で挨拶を返す。その様子にソルニアは一層笑みを深めた。

「開催は三日後。早速準備を始めましょう」
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