神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第二部 雪華の祈り

42.かくれんぼ2

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「ほーら、高い高ーい!」

「うわっ!? あぁぁぁあ!?」

 アルバートを抱える男は先ほどと同じような言葉を発したが、同じ行動ではなかった。ただ高く上げて下ろすのではなく、宙返りや反復回転などを混ぜられたのだ。スリルがありすぎて怖いほどだった。男は身体能力が高いのか慣れているのか、技術も高かったので余計に恐怖を煽られる結果となる。しかしこの状況ではどうすることもできず、アルバートは涙目になって耐えるしかなかった。

 しばらくすると、男は高い高いに満足したのか、アルバートを肩車した。そしてよく通る大きな声を発した。まるでアルバートだけでなく、草陰に隠れている彼女にも聴かせるかのように。

「残念ながらロゼッタ王女殿下はこの辺りにはいないようだな! 仕方ないから王女が見つかるまで、このまま教会の中を散歩だ!」

「え、えぇっ!?」

 そんなのは嫌だとアルバートが声を上げるも、男は構わず歩き始める。
 アルバートがロゼッタの居場所を言うか、ロゼッタが自ら出てくるまで続ける気であることを察して、アルバートは蒼白する

「やだ! 降ろして!」

 アルバートが暴れると、男はまるで子供をあやすように軽くあしらう。そしてアルバートにだけ聞こえる声音で囁いた。

「ほら行くぞ。聡いお前なら今ので気づいたと思うが、もし知っているんだったら……な?」

「っ……!」

 アルバートは息を飲む。そして心の中でロゼッタに謝罪した。

「ロゼッタ様は……そこの草陰に」

 アルバートが観念して先程ロゼッタが隠れた草陰を指差す。男はにっと笑うと、アルバートを肩車したまま、草陰に近づいた。

「あーもう! アル、なんで言うのよ!!」

 ロゼッタが諦めて草陰から出てくる。ようやく男から解放してもらえたアルバートは、一瞬気まずそうに目を逸らせたが、そもそもアルバートが巻き込まれた原因はロゼッタにあると思い直し、逆に彼女を睨んだ。

「ロゼッタ様が隠れるからでしょう! もうっ……」

 アルバートは拗ねたように頬を膨らませる。そんな二人の様子を見て、男が豪快に笑い声を上げた。

「はっはっは!! 仲良いな! ああ、そうだ、これは協力料だ。受け取れ」

 男はそう言うと、ポケットに手を入れ、中から包み紙をひとつ取り出すと、それをアルバートに握らせた。

「何これ?」

「飴玉だ。甘いんだぞ?」

 そんなことは知っている。しかし一連の中で犠牲になった何かとてつもなく大事なものに対して、報酬が安すぎないだろうか。

 アルバートは不満そうな表情を浮かべ、包み紙を見つめた。男はその心情を察したようだが、あえて気づかないふりをされてしまった。

「俺はカイル・アーガイルだ。ロゼッタ王女の捜索に協力してくれてありがとうな! 王女、帰りますよ」

「嫌よ、春までアルと一緒にここにいるわ!」

「我儘言わないでください、陛下が心配しますよ。ほら、あまり聞き分けがないと抱えて連れて帰りますよ。彼にお別れもしなくていいんですか?」

「もう、わかったわよ!」

 ロゼッタは不満げに頬を膨らませるが、渋々といった様子で了承した。

「またねアル! 今度は白龍の神殿まで遊びに行くわ」

「楽しみに待ってます……」

 アルバートは若干ひきつった笑みで返した。もうこんな騒動には巻き込まれたくはない。神殿で、ハデスや他の神官たちの前でこんな醜態を晒させられたらと思うとゾッとする。そんな蒼白するアルバートを、カイルはまるで面白いものを見るかのように笑いを堪えて眺める。ロゼッタの挨拶が終わると、くしゃくしゃと粗雑に彼の頭を撫でてやった。

「アルも次会う時までにもう少し食っとけよ。お前軽すぎだし、このままじゃ背丈も体格もロゼッタ様に負けたままだぞ」

「なっ……!?」

 余計なお世話だと、アルバートは恨みがましく彼を見つめた。彼はそれに気づかずに豪快な笑い声を上げるとロゼッタを伴って去っていく。

 まるで太陽のように陽気な人たちだとその背を見送りながらアルバートは思った。
 口に含んだ飴玉は、カイルの言葉通り甘かった。
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