神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第二部 雪華の祈り

閑話 傍観者の徒然なること

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 教会の窓から、広場で悲鳴を上げたり、ロゼッタやカイルを睨むアルバートを眺めていたアレスタは、年相応の子供らしい態度を取るアルバートを微笑ましく見守っていた。

「アル、楽しそうだねー」

 神殿ではなかなか見ることの出来ないこんな状態のアルバートを鑑賞していると、いつの間にか隣にマリカが立っていた。鑑賞に夢中になりすぎて気が付かなかった。
 マリカの言葉にはアレスタも同意だった。

「うん、そうだね」

 アレスタは頷きつつ、再び窓から広場を見下ろす。カイルに高い高いをしてもらって、大はしゃぎしている。その声は悲鳴とも呼べたが、それはアレスタには関係の無いことだった。怖楽しい娯楽において、悲鳴は歓喜を表す。それだけ感情が昂っているという証拠だ。そういえば神殿では高い高いも肩車もしてあげたことがなかったなと思い出し、機会があればやってあげたら、彼もきっと喜ぶだろうと思った。

「普段神官やハデス様を気にして抑圧しているから、ああやって子供らしいアルを見られるのも嬉しいよ」

「でも、ハデス様や神官が見たら怒るんじゃない?」

 マリカは悪戯っぽく笑う。アレスタも同じことを考えたようで、苦笑しつつ答えた。

「まあね……でもここくらいはいいんじゃない? ハデス様も帰っちゃったわけだし」

 神殿で年不相応に毅然とした振る舞いを取る彼が旅先でこんなことになっているなど、誰が想像できるだろう。威厳なんて形無しのただの子供だ。

 しかし、アレスタは彼にもそういう日があっても良いのではないかと思えた。

「それで、マリカがこんな早朝に起きているなんて珍しいね。どうしたの?」

「うん、結局徹夜しちゃった」

 マリカは舌を出して悪びれることなく言う。
 昨日せっかく送り届けたのに寝てないという事実にアレスタはほんの少し
 呆れつつも、彼女の行動に思わず苦笑してしまった。

「マリカらしいね。やっぱり添い寝したげたほうが良かった?」

「やーだよ。雪華の髪飾りがせっかく使われているわけだから、ちょっと解析しているところなんだ」

 雪華の髪飾りは普段神殿の宝物殿で厳重保管しているような代物だ。そんな重要なものに何をしているんだと思ったが、魔道具を研究、開発するのは彼女の趣味でもあるため、触れないでおいてやることにした。

「まあ、ほどほどにね」

 アレスタは苦笑しつつ言うが、彼女はそんな忠告など気にもせずに楽しそうに笑う。

「うん! でも、アルが楽しそうで良かったよ。ああいうアルは初めて見たなー。神殿でもあんな風に笑ったり怒ったり騒いだりして良いのに」

「そうだねぇ……でもハデス様が見たら、そのまま部屋に連れて行かれてお説教になりそうだね」

「あ、確かに。ハデス様ならやりそう」

 マリカはくすくすと笑い声を上げる。

「この旅先でだけでも、誰かに気兼ねすることなく過ごさせてあげたいね」

「ところでアレスタ、そろそろ朝の奉納を始めないと、朝が終わっちゃうんじゃない?」

 マリカが窓の外を指差せば、いつの間にか太陽は昇り周囲はすっかり明るくなっていた。そろそろ祈りの時刻だ。

「そうだね。アルを呼びに行ってくるよ」

 マリカは昼まで寝そうだったので、アレスタは一人彼女に背を向ける。
 通り過ぎざまにマリカが大きな欠伸をしたのが見えた。

(マリカのこの生活習慣もなんとかしないといけないんだけど……言っても聞かないしね)

 そんなことを考えながら、アレスタはロゼッタを見送るアルバートの元へと向かった。
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