異世界の赤髪騎士殿は、じゃじゃ馬な妻を追いかける

牡丹

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3 .次男モォーズイからの頼み事。

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*****

「ふぅー、疲れた。」

ケイコは、朝早くから夕方遅くまで働き足はパンパン、手はカサカサだ。
ここに来て2週間、仕事にも慣れてきた。
クッキーも口コミで人気が出てきたらしく毎日完売だ。
やっぱりクッキーが売れると気分が良い。
薄暗い廊下を鼻歌を歌いながら部屋に戻りカギを開けようとしたら開いていた。

(泥棒?まさか?)

不審に思いその場を引き返した時、ドアが突然開いた。
背後から身体を掴まれ口を塞がれた。グイッと部屋に引き連れ込まれる。
何とか振り解こうとするがピクリともしない。

手が離れると同時に抱きしめられた。

「すまない。」

絞り出すような声がした。

マーベリックだった!

驚き過ぎて声もでない。
そして耳元で苦しそうな声がする。

「探した。本当に、、すまなかった。
生きてて良かった。。。」

こんな泣きそうな声を聞いたのは初めてだった。

(ああっ、マーベリック!)

懐かしの声に涙が溢れてしまう。
でも、私は勤めて明るく答えるようにした。

「謝る事なんてないわ。
私は異世界人だし、最初から無理があったのよ。
だから、、ね、
これでいいのよ。」

ギュと抱きしめる腕に力が強まる。

「駄目だ、駄目だ。
誓っただろう?俺はお前の側にいるって。
お前も離れないと宣誓しただろう。」

私はマーベリックの腕の中から出ようとあらがう。

「でも、仕方がないのよ!
娘さん、ユイーナさんが結婚出来ないかもしれないのに?、、、無理よ。」

マーベリックはケイコの頬に手を添えた。

「心配しなくて良い。
モォーズイはわかって無いんだ。
2人の思いを優先出来ない家風の一族などに嫁ぐと苦労をするだけだ。
結婚前からユイーナを守れないならその程度の男だったという事だ。」

俺の娘だぞ。理解するさ。と言う。
私はかぶりを振るりマーベリックの胸を手で押し距離を取る。

「私達大人が我慢すればすんなりいくんでしょ?だから私はこのままここに住むわ。決めたの。」

マーベリックの片眉が上がる。
私の腕をガッシリつかむ。

「駄目だ。そんな事は許さない。王都へ連れて帰る。」

「我慢して。私はここにいるから。」

私も負けずに説得をする。

「今回は王命でもある。
お前の意思に関係なく一緒に王都へ連れて帰る。
どうか素直に従っほしい。
頼む。」

「そんな、王命だなんて、、、
私には選択肢はないのね。」

「俺は騎士だ。お前の頼みでも聞けない。」

仕方がない。
この国に住むかぎり王命にな逆らえない。

「わかったわ。仕方ないわ。」

(仕方がない。何もかも仕方がないのね、、)


翌日、日の出前に出発をする。
女将さんは、マーベリックを部屋に入れた事を詫びてきた。

「すまないねぇ。勝手に部屋に入れてしまって。まさかアンタの旦那が騎士様だったとは驚いたよ。私も騎士様には逆らえなくってねぇ。」

「いいえ、こちらこそ色々とありがとう。帰ります。女将さんに出会えて本当に良かったわ!」

ハグをして別れを惜しむ。この人との出会いが無ければどうなっていただろう。
改めてお礼をさせてもらおう。
そして騎士達と共に王都へ旅立った。


*****

王都への帰り道、マーベリックにお願いをした。

「ねぇマーベリック、別れて私を王都の街の家に住ませてもらえない?お家賃は払うから。」

私はまだ諦めて無かった。
マーベリックは片眉を上げて低い声で言う。

「言ってる意味がかわかっているのか?」

「ええ。私が貴方と別れて近くに住めばベストな選択でしょ?」

「お前を愛人にする事は無い。
今回の事は、ただのお前の遠出だ。
貴族は家長の許可を取らずに結婚や離婚は出来ない。モォーズイが勝手した事は貴族の模範に反するから、お前が別れれば模範を乱したとモォーズイに罰を与えねばならない。」

お前は罰を与えたくないだろう。だから、

「お前は遠出をしていた。それだけだ。」

クギを刺されてしまった。

*****


王城へマーベリック達に守られて着くと早速、陛下の執務室へ通された。

「ケイコ、御前へ」

宰相に促され、陛下へ上流階級の挨拶をして頭を下げ御言葉を賜る。

「帰って早々に来てもらいすまない。
ケイコに注意して自覚してもらう事がある。
そなたが他国に奪われれば我が国の科学文明の損失になる。
今後、この様な事が2度と無いように。」

ケイコはドキリとした。そんな事を考えた事が無かったからだ。

「お騒がせして申し訳ありません。」

「うむ。
そこで、お前をマーベリックに託す強固な策を取る事にした。
ケイコの日頃の我が国への貢献により「異世界からの旅人」に男爵の称号を与える。
マーベリックの側に生涯寄り添い決して離れないように。
マーベリック、頼んだぞ。」

何て事でしょう!
それに男爵だなんて。

後ろに控えていたマーベリックが一歩前に出て陛下に御礼の言葉を述べた。

「陛下、この度の御配慮、誠に有難うございます。心から感謝致します。」

「これからもお前と共に国へ貢献してもらおう。」

マーベリックは、ニヤリと笑い、そして、ケイコの手を取り抱き寄せる。

「そうゆう事だ。さぁ、帰るぞ!」
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