近江一族物語1『融合』

七々虹海

文字の大きさ
5 / 59

あの出来事

しおりを挟む
 登下校もいつも一緒。
 登校班というものはなく、各自バラバラに登下校する学校。最初は母さんがついてきてくれて、帰りも途中まで迎えにきてくれた。
 小学一年生の一学期まで。
 それからはいつも二人での登校。帰りは友達も途中まで一緒。分かれ道でバイバイしてからは二人だけの時間。双子って、『二人だけの時間がないとダメなんだ』って自覚させられる一番落ち着いて、一番満たされる時間。
 声に出さなくても二人だねって、お互い思ってるのが伝わってくる。繋いでる手に力が入るいつもの時間。


 小学4年のある日。
 あれは、珍しく雪が降った日の次の日の事だった。お揃いの長靴を履いていつもよりゆっくり帰る帰り道。
 凪が足を滑らして転んだんだ。雪道で、俺たちはいつものスキンシップで手を繋いでたのに、凪が転ぶのを防げなかった。
 新雪がたくさん積もる地域なら雪に少し埋もれるくらいだったのだろう。この辺りは滅多に雪が降らない、降っても数センチ程度。次の日にはほぼ溶けてしまっていることが多い。雪というより凍った地面だったんだ。

 ほとんど雪の溶けたアスファルトの地面に手をつく羽目になった凪は、ズボンの膝の辺りはジーンズで守られていた。
 手袋をしていたが雪を触りたくて素肌を出した手のひらからは、赤い血が出ていた。
 舐めとけば治る。駆け回ってはよく小さな怪我をした俺が覚えた方法。
 膝を着いたまましかめっ面をしている凪の横にしゃがんで手を取り舐めた。
 血が止まりますように。凪の怪我がすぐに治りますように。口にしたその瞬間の衝撃。


 自分の傷口を舐めた時には感じた事のない背筋がビリっとする感じ。これは何なんだろう。
 擦りむいてちょっと剥けた薄い手のひらの皮が口に入ってしまった。異物、ではなかった。ほんとに小さな皮だったけど歯と歯で挟んで遊んでみて、ゴクン。喉を通っていったら自分の体内に凪の一部が入って、俺の体の一部になる。あっ、こうしたら一つに戻れるんだ…。
「晴空?もう血とまったよね?苦かったんじゃない?ペッってして」
凪が不思議がってる。
「大丈夫だよ。もう飲み込んじゃった。帰ろう。帰ったら絆創膏貼ってあげるから」
「うん」

 傷になってない方の手をひいて、そのまま繋いで帰った。さっきの感覚はなんだったんだろう。ドキドキする。心臓の辺りを触ったらいつもよりトクントクンと煩く速く動いてる感じがした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...