生まれ変わっても一緒にいたい人

把ナコ

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エピローグ

薔薇色の人生

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「今年も美味いビールが出来たな」
「仕込みや温度やいろいろいじってはみたが、やっぱり麦が美味いのが一番美味いビールが出来るな」

天気の良い日は夕日を見ながらベランダで乾杯するのが日課だ。

「そうだな。なんだ、アリはまた黒か」
「そういうヨシはラガーじゃないか」
「美味いから良いんだよ」
「そうだ!枝豆」

茹でておいたのを忘れていた。

「ホイ、さっき取ってきた枝豆とトウモロコシ」
「おおー。どれどれ、んー!美味い!やっぱり枝豆は採れたてが最高だな!」
「そうだな。冬になったら豆腐も作ろう。」
「それは楽しみだ」
「ん?なんだ、トパーズ、トウモロコシでも食いたいのか?」
「にゃぉぉおん」

膝に乗ってヨシュアに食べ物を強請ってきた。

「消化できないから食わせるなよ。トパーズが食える物も持ってくるよ」

トパーズは少し前に迷い込んできた猫の姿をした魔獣だ。見つけた時はただの痩せ細った仔猫だと思って必死に看病をした。今は元気に走り回れるまでになった。
食べ物が獲れなくとも地のエネルギーを吸えば生きられる魔獣が何故あれほど痩せ細っていたのかわからないが、魔獣と気づいた時には既に俺達には情が芽生えていた。


今では人間が食べている物が何であっても欲しがるほど食いしん坊に育ち、家は子供が増えたように賑やかになった。
だが、このまま飼うのであれば、去勢しなければいけない。

10年ほど前から一部の小型な魔獣の生殖機能を無くし、ペット化する文化が王都で流行り出した。
魔獣は単体で、尚且つ充分な食事が取れる環境下ではさほど危険は無い。商売主はそこに目をつけたのだろう。繁殖すると危険なのでペットにする場合は生殖機能を取り除く事が義務付けられている。
ペット医療が進んでいないこの国では今のところ雄のペット化しか許されていない。
手術内容を聞いて下腹に寒気が走ったのは男だからだろう。



今年で70を迎えたヨシュアは孫やひ孫を可愛がる好好爺になっていた。俺も可愛い孫に強請られれば何でも買ってしまうので人のことは言えないのだが。

俺達が育てた広大で総生産の高い土地はヨシュアと俺が死んだ後、国に返還される。
ヨシュアが死んでも管理できる俺がいる間だけは俺が維持するよう通達されている。代わりの領主が来る可能性もあるが、まだこの国はそこまで人手が足りていない。この実入りの良い土地は国にも重宝されている。どうせなら若い領主の方が良いだろうしな。

家族には領地も地位も残せないが、2人で貯めた遺産は子供達に遺せる。
子供達は既に自立し、ちゃんと生活出来ているので俺達からの援助は必要ないとは思うのだが。子を持つ親はいつでも援助したい物なのだ。

それに、領地内で生産している物の技術なども大きな財産だった。俺達が居なくなった後残された領民が、新しい領主や国に搾取されないためにそれぞれ領民達には教育を施し、整備もしている。



そして、この歳になって、嬉しい報告がある。

長女カーネリアンはディアナに似て体の弱い子だった。特に子供の頃は毎日のように熱を出しディアナも使用人も看病に大変だった。

俺は、義父からカーネリアンの幼少期の過ごし方を聞いてその内容に少し疑問を持ち、シェフに食材や調理方法を指示して独自に食事療法を試みた。大したことはしていないが、免疫を上げさせる食事、季節ごとの食材を優先的に食卓に並べた。ディアナは少しでも体に負担のある食材はすべて避けて与えられていたそうだ。しかしそれでは食べられるものが減るだけで摂取できる栄養も減っていく。そこで俺は逆に子供のころから耐性をつけさせることを優先した。

ディアナには残念ながら大きな効果は得られなかったが、カーネリアンには効果があったようで5歳くらいから外で走り回って他所の子供たちと遊びに出られるようになった。初めは妹のサフィーナにさえ走りで後れを取るほどだったが、日を追うごとに体力が付き、年相応の子供の遊びに興じることができるようになった。ただ、やはりもともとの弱さがあるのだろう。風邪をひいても一日で治るサフィーナと違い、一度熱を出すと1週間ほど寝込む体質だった。

早くに結婚をしたがったのも、それが理由としてあったと思っている。

しかし今、カーネリアンは既にディアナの年齢を超え、子供や孫に恵まれ、今日も元気に働いている。
ヨシュアの息子、そして俺の義理の息子でカーネリアンの旦那でもあるハンスは養豚と精肉業を営んでいる。領地内で養豚を営んでいた老夫婦が子供たを戦争で失ったことで後継ぎがいなくなりその代で養豚場を閉める予定だったのを引き継いだ形だ。
今では規模も大きくなり養豚場も複数管理するまでになっている。加工肉販売も上々だ。
加えてハンスは誰に似たのか随分と面倒見がいい。
おかげでカーネリアンを任せても安心できた。

次女のサフィーナは伯爵家の長男に見染められて貰われていった。
当時から姑の地味な嫌がらせが日常的にあったようだが、本人はあまり気にも留めておらず、どうやらブーメランで返ってくる仕打ちに姑のほうが臍を噛んでいたらしい。
サフィーナは誰に似たのか嫌がらせや嫌味を上手く躱す術を心得ている。あれにはなかなか勝てまいよ。
幸い旦那も姑よりサフィーナに傾倒しているようで情勢はサフィーナに大きく傾いている。何より義父が息子よりもサフィーナに仕事の相談をするらしい。それもあって姑は虫の居所が悪いのだろう。
わが娘ながら強かで嬉しい限りだ。本当につらいときはちゃんと泣き言を言ってくれるかわいらしさもある。
サフィーナはたくさんの子供にも恵まれ、長男は既に成人している。父に似て少し女性に弱いようだが、しっかり爵位も継いでくれるだろう。

さて、娘達の自慢もそろそろ終わりだ。


俺達は今日も夕涼みを穏やかに美味いビールと共に過ごした。
俺が手に入れたかった幸せが、ここにある。





な?、俺の人生、薔薇色だっただろ?






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