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―第十一話― プレゼント

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 えーっと、ジャスミンの家は確かここの角を右に曲がって……。
 ……ここ、どこだ?

 俺は今、絶賛迷子中だった。

「適当な奴に声かけるか」

 ちょうど、適当な奴がいるしな。

「おーい、リーズ!!」
「ローズだ! いい加減、名前ぐらいちゃんと呼べ!!」
「お前、ジャスミンの家知ってるか?」
「ん? 一応知ってるが……」
「よし、こいつを運んでくれないか?」
「は? って、ジャスミンさん!? 何があったんだ!?」
「じゃ、あとよろしくなー」
「おい! リアトリス!!」

 喚き続けるローズを無視し、俺は帰路に就いた。

「……てか、どうやって帰るんだ?」

 迷子なの忘れてた。


◆◆◆


「やあ、ジャスミンちゃん」
「あ、ルビーさん」

 私は、久しぶりにあの部屋に来ていた。

「さて、修行はどうだったかな?」
「はい。リアのおかげで、大分強くなれたと思います」
「うん。それはいいことだ。ところで、最後のは覚えてるかい?」
「最後……。うーん、リアの攻撃をかわし切れなくて……、えーと……」
「いや、覚えてないならいいんだ。よし、アドバイスの時間だ!」
「お、お願いします!」

 少々腑に落ちなかったが、私は素直に頷いた。

「まずは一つ目。今日から三日間は、なるべく魔力を使わないようにすること」
「理由、って聞いてもいいですか?」
「単純に、魔力の使い過ぎ。今の君、魔力がほぼないからね」
「え!? そんなに魔力使いましたっけ……」
「修行自体がハードすぎるんだよ。それに、最後にド派手にやってたしね」
「何のことですか?」
「さて、二つ目に行こうか」

 なんか、はぐらかされたような気がする。

「明日、リアトリス君が君のうちに来ようとして、まったく違うところで迷うから、迎えに行ってあげて」
「わかりました」
「場所は、サンビル一のレストランのところだからね」

 真逆じゃん。

「それでは、最後に一つ。詠唱の時は、なるべくイメージを固めておくこと」
「え?」
「じゃ、また会う時まで」

 最後の最後に訳の分からないアドバイスを投げられたまま、ルビーが指を鳴らし、前みたいに視界が歪んだ。


◆◆◆


「あ、いたいた。おーい!!」

 あれ、今の声ジャスミンか?
 よかった、探す手間が省けた。

「ちょうど良かった。お前を探してたんだよ」
「なんか用事でもあったの?」
「とりあえずついてきてくれ」

 そう言って俺は、半ば強引にジャスミンを目的地まで連れて行った。



「ほら、ここだ」
「ここって、武器屋?」
「ああ、そうだ。おっちゃん、調子どうだ?」
「おお、リアトリスとジャスミンか。注文の奴なら、ついさっき完成したところだぜ」
「おお、ありがと!!」
「注文?」
「お前の言うとおりに作ったが、こんな感じでいいか?」

 そう言って店主が持ってきたのは、純白の鞘に納まった長剣だ。

「おー! さすがの仕上がりだな」
「あたぼうよ! でも、こんな剣を扱えるのか?」
「いいや、これはこいつ用のだよ」

 俺は、その剣をジャスミンに手渡した。

「え!? 私!?」
「ほら、昨日、お前の剣を折っただろ? 代わりというか、お詫びというか……」
「いや、こんな高そうなの、貰えないわよ!」
「もう代金は払ってんだ。俺に返されても、速攻で質に入れちまうだけだからな」

 少々強引な物言いだが、事実、俺にこんな剣を扱えるわけないからな。
 そして、ジャスミンはしばらく悩んだ後。

「ありがとう、大事にするね」

 そう言って、こちらに向かって微笑んできた。

「よかった。俺が丹精込めて打った剣を質に入れるとかいう、物騒な会話が聞こえたからな」
「大丈夫。一割は冗談だから」
「おい、ほとんど本気じゃねえか!!」

 俺たちが馬鹿な会話を繰り広げている間、ジャスミンは剣を抜き、剣身を眺めていた。

「剣の具合はどうだい?」
「なんか、手にしっくりくる感じがするわ」
「そりゃあよかった。……そうだ。リアトリス、お前にも渡すもんがあるんだった」
「あ? なんだ?」
「ほらよ!」
「うわっ!!」

 店主が投げ渡してきたのは、革製の鞘に包まれた短剣だった。

「ほら、お前って、弱っちいだろ? そんなお前でも、多少の戦力になれるようにな」
「……これ、結構いい奴じゃねえのか?」
「あ、お代はいらねえぜ」
「いや、払うよ!」
「いらねえっての。お前のポーションには、いつもお世話になってるからな」
「……今度、割引クーポンでもやるよ」
「ありがとな。それと、その短剣のちょっとした効果について教えてやるよ」
「効果?」
「そいつにはな、少し特殊なコーティングを施してあるんだ。ほら、鞘から抜いて、魔力を流してみな」

 言われたとおりに短剣を抜き、魔力を流してみる。

「おわ!!」
「きゃっ!?」

 横から覗いていたジャスミンと、ほぼ同時に叫び声をあげる。

 剣身が、赤く光り出したのだ。

「そいつは、少量の魔力を込めるだけで、魔法剣と同じ働きをするようになってるん
だ。今は、ただ魔力を込めただけだから、少し切れ味がよくなる程度しか変化しねえが、少し頑張れば、魔法を打ち出したりできるんだぜ」
「……へぇ……。マジでありがとうな。おっちゃん!」
「いいってことよ。これからも頑張りな。それじゃ、毎度あり!」

 店主の豪快な笑い声を背に、俺たちは店を出た。

「えっと、リア。この剣、本当にありがとうね!」
「どういたしまして。ま、大事に使ってくれよ」
「もちろん!!」

 心の底から嬉しそうな表情を浮かべるジャスミンを見ると、俺のほうまで嬉しくなる。
 後でおっちゃんには、ポーションを箱で上げようかな。
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