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―第六十五話― 一回戦(前編)
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「ちわーっす、サントリナでーす。トーナメント票ができたので、貼りに来ましたよっと」
弁当も食べ終わり、各々が好きなように時間を過ごしていた時、サントリナさんが入ってきた。
……トーナメント制なのか。
私の相手は……。
ブルガレさんか。
ってか、一戦目から私じゃん!
ブルガレさん、強い相手と戦いたいって言ってたから、かなりの力に自信があるのだろう。
……なら、私も出力全開で最初から戦わないといけないかもしれないわね。
◆
「さて、今回の大会最初の試合なわけだが二人とも、準備はいいかい?」
ちょっと待って、観客多すぎない!?
千人近くいると思うんですけど!?
「会場も大盛り上がりですので、相手を殺さない程度の派手なショーをよろしくお願いします」
「盛り上がりすぎだろ! なんでこんなに客がいるんだよ!?」
「そりゃあ、この国の軍隊から希望者、一般人の方々にもたくさん来ていただいておりますから。それに、観客が多い方が気分も上がってくでしょ?」
いや、緊張しますが。
「てなわけで、審判はわたくし、サントリナが務めさせていただきまーす。武器も魔法も基本何でもあり。危険すぎる行為には、俺からの制止が入りますので、お気をつけて。では、さっそく始めていきましょうか。お互い武器を構えて」
緊張がほぐれてないけど、しょうがない。
剣を抜き、攻撃の構えをとる。
先手必勝!
……と、ブルガレさんは考えているんだろうな。
ブルガレさんの格好から察するに、拳闘士なのだろう。
ならば……。
「それでは、俺の合図で試合を開始してください」
深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。
意識を腕に傾け、始めの一手に向かう準備を整える。
「それでは、よーい……スタート!!」
初めに動いたのは、ブルガレだった。
凄まじい速度で距離を詰め、そのまま蹴りを入れてきた。
しかし……。
「ブルガレさん、ごめんなさい」
流すように剣を動かし、蹴りの威力を発散させる。
一撃で私を沈めようとしたみたいですけど、そうはいかないわよ……!
このくらいなら、気絶で済む……はず。
そう考えながら、剣を振り上げ、ブルガレさんに軽く触れさせる。
それと同時に、腕から魔力を放出させた。
「『ストライク・ライト』!!」
小さな炸裂音が鳴る。
その瞬間、ブルガレさんの体が後方へ大きく弾き飛ばされた。
勢いそのまま、大きな音を響かせ、ブルガレさんは壁に激突した。
……ヤバい、少し出力ミスっちゃったかも。
あとで謝っとこう。
「あー、ありゃあ気絶してるな。てなわけで、少し早いですが、勝者はジャスミンでーす!!」
観客席から飛び交う声援を背に、私は足早に闘技場を出た。
◆
「お疲れ、ジャスミン。凄かったね、あの技!!」
「ちょ、ちょっとやり過ぎたかもだけど……」
「だいじょぶだいじょぶ。あの人、体強そうだったし、回復魔法で一瞬で直るわよ。骨折くらい、冒険者なら日常茶飯事じゃない」
「うん、でも……」
「あの人は、強い相手と戦いたいって言ってたし、本望でしょ」
ならいいのだが……。
「あ、次の試合、あのむかつくおっさんの試合じゃない」
むかつくおっさん……グロリオサさんの事だろうか。
「対戦相手は……ガーデニアちゃんね」
何だろう、グロリオサさんから、凄いかませ犬のにおいがする。
「ガーデニアちゃーん! そんな奴はさっさと叩き潰しちゃいなさーい!!」
「ちょ、さすがにそんなストレートな応援はだめでしょ!!」
「それじゃ、お互いに構えをとって」
「よろしくお願いするよ、仮面のお嬢さん」
「…………」
「アッハッハ、無視されてやんの!」
こら、アマリリス!
「それじゃ、よーい……スタート!!」
サントリナさんの掛け声で、二人が同時に飛び出した。
あれだけの言葉を口にするだけあり、グロリオサさんの動きはすさまじかった。
一歩目が地面につくかつかないかの瞬間に剣を抜き、目にもとまらぬ早業で横薙ぎに振るった。
しかし、ガーデニアさんもすごかった。
グロリオサさんが剣を抜くのとほぼ同時に抜き、一瞬で刃を受けた。
その瞬間、とてつもない金属音が闘技場に響き渡る。
あれほど華奢な体のどこからあんなに力が出るのだろうか。
「ガーデニア―! さっさと試合終わらせちゃいなさい!!」
「アマリリス、もうちょっと自重して」
そんな会話をする間にも、試合は動き続けている。
グロリオサさんが素早い突きを連続で繰り出し、それをガーデニアさんが避け続ける。
……って、え?
ガーデニアさんから、攻撃する気配が全く感じられない。
なんというか、面白半分で避けてるだけみたいな……。
一瞬、グロリオサさんの攻撃の手が緩んだ。
その瞬間、ガーデニアさんが身を屈め、拳が──
「はい、そこまで!!」
サントリナさんが、急に二人の間に割って入ってきた。
「…………」
「この勝負、ガーデニアの勝利!!」
「……今回は相手が悪すぎた」
特に異議を唱えるでもなく、グロリオサさんは剣を収め、闘技場を後にした。
「「やっば」」
二人同時に声が漏れた。
「ガーデニアちゃんの攻撃、ヤバすぎるでしょ。あれ、当たりどころが悪かったら死ぬじゃん」
「骨砕けるって、あれ」
ここからでもわかるほどの異常な速度、威力。
……私、あんなのと戦いたくないんだけど。
「あ、次私だ! ごめん、ジャスミン。ちょっと行ってくる!」
「うん、気を付けて」
弁当も食べ終わり、各々が好きなように時間を過ごしていた時、サントリナさんが入ってきた。
……トーナメント制なのか。
私の相手は……。
ブルガレさんか。
ってか、一戦目から私じゃん!
ブルガレさん、強い相手と戦いたいって言ってたから、かなりの力に自信があるのだろう。
……なら、私も出力全開で最初から戦わないといけないかもしれないわね。
◆
「さて、今回の大会最初の試合なわけだが二人とも、準備はいいかい?」
ちょっと待って、観客多すぎない!?
千人近くいると思うんですけど!?
「会場も大盛り上がりですので、相手を殺さない程度の派手なショーをよろしくお願いします」
「盛り上がりすぎだろ! なんでこんなに客がいるんだよ!?」
「そりゃあ、この国の軍隊から希望者、一般人の方々にもたくさん来ていただいておりますから。それに、観客が多い方が気分も上がってくでしょ?」
いや、緊張しますが。
「てなわけで、審判はわたくし、サントリナが務めさせていただきまーす。武器も魔法も基本何でもあり。危険すぎる行為には、俺からの制止が入りますので、お気をつけて。では、さっそく始めていきましょうか。お互い武器を構えて」
緊張がほぐれてないけど、しょうがない。
剣を抜き、攻撃の構えをとる。
先手必勝!
……と、ブルガレさんは考えているんだろうな。
ブルガレさんの格好から察するに、拳闘士なのだろう。
ならば……。
「それでは、俺の合図で試合を開始してください」
深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。
意識を腕に傾け、始めの一手に向かう準備を整える。
「それでは、よーい……スタート!!」
初めに動いたのは、ブルガレだった。
凄まじい速度で距離を詰め、そのまま蹴りを入れてきた。
しかし……。
「ブルガレさん、ごめんなさい」
流すように剣を動かし、蹴りの威力を発散させる。
一撃で私を沈めようとしたみたいですけど、そうはいかないわよ……!
このくらいなら、気絶で済む……はず。
そう考えながら、剣を振り上げ、ブルガレさんに軽く触れさせる。
それと同時に、腕から魔力を放出させた。
「『ストライク・ライト』!!」
小さな炸裂音が鳴る。
その瞬間、ブルガレさんの体が後方へ大きく弾き飛ばされた。
勢いそのまま、大きな音を響かせ、ブルガレさんは壁に激突した。
……ヤバい、少し出力ミスっちゃったかも。
あとで謝っとこう。
「あー、ありゃあ気絶してるな。てなわけで、少し早いですが、勝者はジャスミンでーす!!」
観客席から飛び交う声援を背に、私は足早に闘技場を出た。
◆
「お疲れ、ジャスミン。凄かったね、あの技!!」
「ちょ、ちょっとやり過ぎたかもだけど……」
「だいじょぶだいじょぶ。あの人、体強そうだったし、回復魔法で一瞬で直るわよ。骨折くらい、冒険者なら日常茶飯事じゃない」
「うん、でも……」
「あの人は、強い相手と戦いたいって言ってたし、本望でしょ」
ならいいのだが……。
「あ、次の試合、あのむかつくおっさんの試合じゃない」
むかつくおっさん……グロリオサさんの事だろうか。
「対戦相手は……ガーデニアちゃんね」
何だろう、グロリオサさんから、凄いかませ犬のにおいがする。
「ガーデニアちゃーん! そんな奴はさっさと叩き潰しちゃいなさーい!!」
「ちょ、さすがにそんなストレートな応援はだめでしょ!!」
「それじゃ、お互いに構えをとって」
「よろしくお願いするよ、仮面のお嬢さん」
「…………」
「アッハッハ、無視されてやんの!」
こら、アマリリス!
「それじゃ、よーい……スタート!!」
サントリナさんの掛け声で、二人が同時に飛び出した。
あれだけの言葉を口にするだけあり、グロリオサさんの動きはすさまじかった。
一歩目が地面につくかつかないかの瞬間に剣を抜き、目にもとまらぬ早業で横薙ぎに振るった。
しかし、ガーデニアさんもすごかった。
グロリオサさんが剣を抜くのとほぼ同時に抜き、一瞬で刃を受けた。
その瞬間、とてつもない金属音が闘技場に響き渡る。
あれほど華奢な体のどこからあんなに力が出るのだろうか。
「ガーデニア―! さっさと試合終わらせちゃいなさい!!」
「アマリリス、もうちょっと自重して」
そんな会話をする間にも、試合は動き続けている。
グロリオサさんが素早い突きを連続で繰り出し、それをガーデニアさんが避け続ける。
……って、え?
ガーデニアさんから、攻撃する気配が全く感じられない。
なんというか、面白半分で避けてるだけみたいな……。
一瞬、グロリオサさんの攻撃の手が緩んだ。
その瞬間、ガーデニアさんが身を屈め、拳が──
「はい、そこまで!!」
サントリナさんが、急に二人の間に割って入ってきた。
「…………」
「この勝負、ガーデニアの勝利!!」
「……今回は相手が悪すぎた」
特に異議を唱えるでもなく、グロリオサさんは剣を収め、闘技場を後にした。
「「やっば」」
二人同時に声が漏れた。
「ガーデニアちゃんの攻撃、ヤバすぎるでしょ。あれ、当たりどころが悪かったら死ぬじゃん」
「骨砕けるって、あれ」
ここからでもわかるほどの異常な速度、威力。
……私、あんなのと戦いたくないんだけど。
「あ、次私だ! ごめん、ジャスミン。ちょっと行ってくる!」
「うん、気を付けて」
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