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「へぇ~? 彼氏でありながら、一度も汐里の要求に応えたことがないんだぁ」
「なに?」
したり顔で何度も一人で頷き始める石墨に、凌空は良からぬものを感じ取る。
「それって汐里からのサインだったんじゃないの?」
「何を言っている」
「つまり! 汐里は価値観を令和にアップデートできていないジャップオスたちに、日々心を傷つけられていた。それを、彼氏である男さん。アンタに癒してもらいたかった。なのに、男さんは同族を貶されたことに腹を立てて、汐里の気持ちを拒み続けた。それでいて同棲と交際関係の解消はせずに、汐里を束縛し続けた。大学生であるという、貴重な時間を男さんは汐里から搾取した。そう、これは性的搾取なのよ!」
間違いだらけの指摘なのに、石墨はずいぶんと誇らしげだった。
石墨は凌空の話を都合よく無視しているが、凌空は汐里との交際と同棲を解消したかったとすでに述べている。
さらに強姦や売春の強要などを指すパワーワード〝性的搾取〟の、異常な拡大解釈。
女尊男卑を「価値観を令和にアップデート」した正しい価値観と勝手に主張している旨。
テレパシーができないだけで、ありもしない罪を被せる暴挙。
結婚もしていないのに、女性側からの一方的な身体の関係の強要に男性が応じる法的な義務が生じるかのような、物言い。
男性側からの要求は、レイプと十把一絡げに批判するくせに、だ。
以上のように、石墨の指摘は徹頭徹尾、誤りだった。
ちなみに石墨の指摘の前半は、汐里が屁泥ゼミで吹聴していた汐里にとって都合のいい妄言の受け売りである。
最初から汐里は、凌空に身体を許す気はなかった。
自分の気持ちの向いた時だけ凌空にくっつくことはあったが、その先はない。
凌空がバイトに勤しんでいる時間に、汐里は外で作った男とひっそりしっぽりヤっていたのだ。
自分たちは倦怠期にある、と汐里が吹聴した数々のエピソード。
石墨の信じたそれは、すべて浮気を隠すための汐里の虚言だった。
実態は倦怠期どころではないのは、凌空がすでに述べた通りだ。
しかし、汐里が正しいと石墨が妄信したのも無理はない。
思想的に激しい偏りがあり、それがエコーチェンバーにより強固に強化される地獄の掃き溜めの住人は、真実など受け入れないからだ。
仮に汐里を疑った者がいれば、その者は村八分に遭っていたことであろう。
論理的正確性はすべてマンスプレイニングとレッテルを貼られて否定され、女性様の正しさが常に勝るある種の共産主義社会。
それが屁泥ゼミであり、ジェンダー学専攻である。
こんな専攻とゼミを大学が学問の自由と放任するのは、学生と卒業生およびその保護者、さらには学問概念への冒涜に他ならない。
重ねて言うが、そこでは女性様にとって不都合な真実など受け入れられない。
さて。
グロ文学科に転科したことで汐里は、凌空との共通の友人とは疎遠になった。
さらに。
外での汐里を知る者は、ジェンダー学専攻の学生が中心に変わっていった。
都合のいい虚像を信じ込まされ、それを言葉通り受け取ることだけが正義である連中だ。
となれば、凌空に外での汐里の真実を教えてくれる者など、誰もいない。
加えて、凌空の頭は汐里との同棲をいつなら、どうすれば解消できるかでいっぱいだった。
しかも話題の八割が、性嫌悪と男性蔑視ネタの汐里だ。
浮気をしているなど、凌空には考える余裕すらなかった。
すべての状況が、汐里に味方をしている。
ゆえに、石墨の指摘は力強かった。
何を言っても通じない。永遠の平行線。
このやり取りに、凌空が徒労を感じ始めたときだった。
「なに?」
したり顔で何度も一人で頷き始める石墨に、凌空は良からぬものを感じ取る。
「それって汐里からのサインだったんじゃないの?」
「何を言っている」
「つまり! 汐里は価値観を令和にアップデートできていないジャップオスたちに、日々心を傷つけられていた。それを、彼氏である男さん。アンタに癒してもらいたかった。なのに、男さんは同族を貶されたことに腹を立てて、汐里の気持ちを拒み続けた。それでいて同棲と交際関係の解消はせずに、汐里を束縛し続けた。大学生であるという、貴重な時間を男さんは汐里から搾取した。そう、これは性的搾取なのよ!」
間違いだらけの指摘なのに、石墨はずいぶんと誇らしげだった。
石墨は凌空の話を都合よく無視しているが、凌空は汐里との交際と同棲を解消したかったとすでに述べている。
さらに強姦や売春の強要などを指すパワーワード〝性的搾取〟の、異常な拡大解釈。
女尊男卑を「価値観を令和にアップデート」した正しい価値観と勝手に主張している旨。
テレパシーができないだけで、ありもしない罪を被せる暴挙。
結婚もしていないのに、女性側からの一方的な身体の関係の強要に男性が応じる法的な義務が生じるかのような、物言い。
男性側からの要求は、レイプと十把一絡げに批判するくせに、だ。
以上のように、石墨の指摘は徹頭徹尾、誤りだった。
ちなみに石墨の指摘の前半は、汐里が屁泥ゼミで吹聴していた汐里にとって都合のいい妄言の受け売りである。
最初から汐里は、凌空に身体を許す気はなかった。
自分の気持ちの向いた時だけ凌空にくっつくことはあったが、その先はない。
凌空がバイトに勤しんでいる時間に、汐里は外で作った男とひっそりしっぽりヤっていたのだ。
自分たちは倦怠期にある、と汐里が吹聴した数々のエピソード。
石墨の信じたそれは、すべて浮気を隠すための汐里の虚言だった。
実態は倦怠期どころではないのは、凌空がすでに述べた通りだ。
しかし、汐里が正しいと石墨が妄信したのも無理はない。
思想的に激しい偏りがあり、それがエコーチェンバーにより強固に強化される地獄の掃き溜めの住人は、真実など受け入れないからだ。
仮に汐里を疑った者がいれば、その者は村八分に遭っていたことであろう。
論理的正確性はすべてマンスプレイニングとレッテルを貼られて否定され、女性様の正しさが常に勝るある種の共産主義社会。
それが屁泥ゼミであり、ジェンダー学専攻である。
こんな専攻とゼミを大学が学問の自由と放任するのは、学生と卒業生およびその保護者、さらには学問概念への冒涜に他ならない。
重ねて言うが、そこでは女性様にとって不都合な真実など受け入れられない。
さて。
グロ文学科に転科したことで汐里は、凌空との共通の友人とは疎遠になった。
さらに。
外での汐里を知る者は、ジェンダー学専攻の学生が中心に変わっていった。
都合のいい虚像を信じ込まされ、それを言葉通り受け取ることだけが正義である連中だ。
となれば、凌空に外での汐里の真実を教えてくれる者など、誰もいない。
加えて、凌空の頭は汐里との同棲をいつなら、どうすれば解消できるかでいっぱいだった。
しかも話題の八割が、性嫌悪と男性蔑視ネタの汐里だ。
浮気をしているなど、凌空には考える余裕すらなかった。
すべての状況が、汐里に味方をしている。
ゆえに、石墨の指摘は力強かった。
何を言っても通じない。永遠の平行線。
このやり取りに、凌空が徒労を感じ始めたときだった。
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