最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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武人祭

超モテ期

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 「「ッ!?」」

 「・・・・・・ん?」


 その突然の行動に頭が付いて行けず聞き返してしまった。
 俺以外の奴も驚いていた。
 もっとも、その中でノワールとココアは息子の成長を見守る親のように微笑んで見ているが。


 「なっ!?ななな・・・ひ、非常識ですわ!こんな公衆の面前でーー」

 「私もずっと気になっていました!」

 「あっ、ズルい!だったら私も!!」

 「俺も!」


 あれよあれよという間に告白のラッシュ。
 若干性別がおかしいのも混ざっていた気がしたが敢えて無視する。
 これから授業だというのにどんどんと集まって来て道を塞がれるような形に。
 そしてその告白は驚いている奴らにもおよんだ。


 「メアさん、ずっと貴女の事が好きでした!僕と付き合ってください!!」

 「・・・は?」


 その混乱に乗じようとしたのか、メアにも告白する奴が出て来た。
 メアだけではない。
 金髪でミーナよりちょっと背が高いくらいの少年が近付く。


 「ミーナさん。君に模擬戦で負けて以来忘れられないんだ。胸を締め付けられるような感覚・・・これはそう、きっとこれが恋というものなのだろう!だから受け取ってほしい、僕の気持ちとこの花束を・・・」

 「・・・・・・え」


 そう言った少年は跪いて花束を差し出していた。
 驚いた事にミーナにも告白をする奴がいたのだ。
 ミーナも突然の事で戸惑っている。
 ヘレナにも視線を注いでる輩がいるが、遠目に見てるのがやっとみたいだった。そんなヘレナの反応は少し寂しそうに見えた。
 そんな相次ぐ驚愕をどう跳ね除けてやろうか考えていると、近くからホイッスルのような音が鳴り響き、屈強な男たち俺たちを庇うように囲んだ。


 「静まれぃ!」


 腕を組み怒号のような声で叫ぶ白い学ランを着た巨躯の男。
 その気迫に押されてほとんどの生徒が離れて行った。
 助かった事は助かったが、コイツらは誰だ?この学園の制服にしては白いが・・・他のとこの生徒か?


 「なんだ貴様らは!?不敬だぞっ!」


 俺が聞こうとした事を先に聞いてくれた少年。さっきミーナに告白した奴だ。


 「不敬ぃ?不敬なのはお前らだ!」


 男は怒鳴り、足踏みをするとズンッと軽く地面が揺れる。
 あまりの迫力に少年は「ヒッ!?」と短く悲鳴を上げてしまう。


 「いや、正確には不埒!一人の人間を多くの者が囲い、愛を語る・・・風紀が乱れておるわッ!!俺たち「風紀委員」の目が黒い内はそんな不埒な真似は許さんぞ!!」


 風紀委員。
 向こうと同じなら学校学園の秩序を保とうとするのを目的とする係。
 だから分かりやすく白い学ランなど着ているのだろう。
 すると大男がこっちに振り返った。
 厳つくゴツゴツとした顔立ち、ガーランドに似たものを感じる。

 ・・・ゴリラと言ってるわけじゃないぞ?


 「お前たちもだ。朝から不埒な騒ぎを起こすな!」

 「別に好きで起こしてるわけじゃないぞ?」

 「同じだ。故意であろうがなかろうが、結果騒ぎを起こしてるのだからな」


 ・・・ああ、コイツ頭固い奴か。


 「そうか。悪かったな、近所迷惑な事をして。今後はなるべく控えるよ」


 言っといてなんだが、「俺は何を控えればいいんだ?」という疑問が浮かびそうな言葉を言った気がした。
 とりあえずその場を何とかしたかったから適当に選んだ言葉だったが・・・。


 「「控える」のではなくやめろと言っているのだ!学生が不純異性行為など・・・」

 「別にいいだろ?学生とはいえ男と女だ。誰かを好きになるのに子供も大人も関係ない。好きになるだけなら不純にはならないだろ」

 「学生は勉学のみに力を入れるべきだ!」

 「自分勝手な思想価値観を他人に押し付けるなよ」

 「ッ!」


 俺の言葉が効いたのか、顔を赤くする大男。
 確かに助けてくれた事は感謝するが、だからと言ってコイツの意見に賛同する気はない。


 「学生の本分は勉学以外も学ぶ事。少しだけなら男女の関係を許してもいいんじゃないか?」


 ・・・決して俺自身の言い訳をしてるわけじゃないからな?

 すると男の顔が少し曇る。


 「・・・その少しを見誤るから風紀委員私たちが取り締まっているんだ」


 何故か寂しそうにそう言うと学園の方へ振り返る。


 「とにかく!今は厳重注意で済ませるが、次に見掛けたら反省文を書かせる。・・・知ってるとは思うが、逃げたらもちろん素行不良で成績が下がるからな」


 そう言って正面にいる生徒たちを睨むと、モーゼの海のように学園までの道が開かれた。
 大男と他の風紀委員であろう奴らがその道を堂々と歩む。
 俺もこれ以上は面倒なので、便乗して後を付いて行く。


 「・・・何故付いて来る?」


 大男が振り返らずにそのまま聞いて来た。


 「騒ぎを起こしてほしくないんだろ?ならこうした方が手っ取り早い」

 「・・・なるほど。「好きで起こしてるわけじゃない」と言ったのは本当の事か」

 「当たり前だろ?俺はナルシストじゃないんだ」


 試合などで観戦されるのは仕方ないとして、有名人みたいにキャーキャー騒がれるのは嫌いだ。
 その後も風紀委員たちに付いて行くがやはりココアが気になるようで、大男以外の他の奴らもチラチラとこちらを見てきていた。


 「貴方たちの風紀とやらも乱れているのではなくて?あまり女性をジロジロ見るものではありませんよ?」


 その言葉に心当たりのある奴らがビクッと跳ねて反応する。
 一応今のアイツは笑顔だが、あまりにも見られ過ぎてイライラしている。


 「すまない。しかし誰であろうと人の形をしたものがフワフワと浮いていたら気になってしまうのも理解してくれると嬉しい」

 「あら、言い訳なんて男らしくないですね」


 そう言ってウフフと笑うココア。
 心なしか周囲が暗くなっているが、きっと気のせいではないだろう。だってココアからなんか黒いの出てるもん。
 明らかに怒っているココアの頭に優しく手を乗せる。


 「そう言ってやるな。それにあまり目立つのも良くないってのも分かるだろ?」

 「むぅ・・・」


 「理解はできるけど納得したくない」そんな表情をしていた。


 「まぁ、せめて足を地面に付けるくらいならいいんじゃないか?」

 「足を交互に動かす、というのは億劫なのですけれど・・・ですがアヤト様のためとならば!!」


 えっ、そこまでの覚悟が必要なの?

 意外なココアの決意に多少の罪悪感を感じてしまう。
 するとココアはゆっくりと地面に降りて足を付けた。


 「うーん・・・やはり地に足を付けるというのは違和感が・・・」

 「なんかすまん・・・」

 「いいえ、アヤト様が気にする必要はありませんわ。・・・いえ、そもそもアヤト様が目立つ事を苦手としているのは分かっていた事なのに私が勝手をしたばかりに・・・」

 「いや、そこまで重く考えなくていいんだけど・・・辛かったらやめていいぞ?」

 「ありがとうございます♪ですが慣れれば良いだけの事ですので、アヤト様が気になさらずとも大丈夫ですよ!」


 まだおぼつかない足取りで歩き出すココア。
 その隣にノワールがスッと移動し、脇を少し空けて「掴まれ」と言わんばかりだった。


 「その状態では主人の迷惑になる。当分は私が補助してやろう」

 「・・・ご迷惑をお掛け致します、ノワール様」


 ココアはノワールの意外な優しさに驚きながらも、その腕に捕まる。
 流石に美男美女がやると絵になる。
 他の風紀委員の奴らもその光景に見蕩れていた。
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