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9.告白
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辿り着いた街は別荘に向かう途中にある小さな街だった。
こういった街をあと二つ三つ通り過ぎた先にジェレアクト家の別荘はあるらしい。
冬の寒い時期限定で素晴らしいライトアップも見られるんだとか。
お祭りも楽しみだけどそれも実はちょっとだけ楽しみだったりする。
ルシアンの話によると、庭園だけじゃなく屋敷にまで魔石を取り付けて光らせているらしいから、きっと凄く綺麗だろうなと心を浮き立たせていた。
そんな風にウキウキと案内されるままにルシアンと街を歩いていると、鍛冶屋を見つけた。
ショーウィンドウには魔剣が飾られている。
ちなみに一口に魔剣と言っても様々だ。
王家や貴族家において先祖代々受け継がれているような有名な名剣もあれば、名工により生み出される新たな魔剣もある。
前世で隣国の将軍だったルシアンが使っていた魔剣は多分国宝級のものだったと思う。
それに対して前世での俺は2代前の当主が名工に打たせた魔剣で、魔剣としてはまだまだ若かった。
しかも当時の国は平和そのもの。
そのため俺はずっと力を発揮することなく屋敷の中で飾られていたんだ。
でもそんな俺の前に立ち、小さな頃から目を輝かせて話しかけてくれていた主人。
『カイザーリード。君は本当に綺麗だね』
『いつか君を手にして、一緒に戦ってみたいなぁ』
『カイザーリード。力を貸してくれるか?』
ずっと見守ってきた子供が大人になり、大事な場面で俺の力を必要としてくれたのが嬉しくて、俺はそれはもう張り切って主人のために力を引き出し戦った。
主人は俺を労わりながらもその力を遺憾なく振るわせてくれて、本当に主人として素晴らしかったと思う。
だからもっともっと一緒にいたかった。
その人生をずっと先まで共に歩みたかった。
それがまさか子供としてでも叶ったのは嬉しいことではあったけど、何の因果かまさか生まれ変わった先で敵対していた奴と婚約してしまうなんて────。
「カイ。どうかしたの?」
猫を被ったルシアンが柔らかく笑いながら俺に笑顔を向けてくる。
人目があるところではこれが普通らしく、俺の前でもあまりその猫を脱ごうとはしない。
「別に。その猫をずっとかぶってればいいのになって思ってただけだ」
「フッ…。どっちの俺も嫌いじゃないくせに素直じゃないなぁ」
「……っ?!誰がだ!俺はお前なんて嫌いだ!」
なにせ前世の俺を叩き折った奴なんだから。
好きになるはずがない。
なのにこいつはスッと耳元へと唇を寄せ、秘密を明かすかのように意味深に言うんだ。
「俺はお前が好きだ」
「……っ?!」
「言ってなかったが、前世でお前を目にした瞬間から俺はずっとお前に惚れてる」
「は?!」
「お前を手に入れるために一緒に転生したんだ。だから…俺から逃げられると思うなよ?」
「はぁあああ?!」
突然の思わぬ告白に驚いて突き飛ばした俺を見て、ルシアンがどこか楽し気に笑う。
それを見るだけで本気だったのか冗談だったのかが一気にわからなくなった。
「そうだ、カイ。この旅行中は起きてから寝るまでずっと一緒だから、いっぱい仲良くなろうね?」
(これはもしかして共寝まで狙われてないか?!)
これまでのルシアンの行動から考えて、まず間違いない気がする。
そしてその考えを裏づけるかのようにまたスッと身を寄せられて、耳をくすぐるようにしっとりとした声で言ってくるのだ。
「カイ。この旅行でどっぷり俺色に染めてやるから覚悟しろ」
「~~~~っ?!」
「これまでを取り戻す意味でも、絶対に手離す気はないから」
果たして俺は無事に貞操が守れるんだろうか?
思わずそんな心配をしてしまいながら、俺は真っ赤な顔で『大丈夫、大丈夫だ。俺はあんな奴、絶対に好きになったりはしない』と必死に自分に言い聞かせたのだった。
こういった街をあと二つ三つ通り過ぎた先にジェレアクト家の別荘はあるらしい。
冬の寒い時期限定で素晴らしいライトアップも見られるんだとか。
お祭りも楽しみだけどそれも実はちょっとだけ楽しみだったりする。
ルシアンの話によると、庭園だけじゃなく屋敷にまで魔石を取り付けて光らせているらしいから、きっと凄く綺麗だろうなと心を浮き立たせていた。
そんな風にウキウキと案内されるままにルシアンと街を歩いていると、鍛冶屋を見つけた。
ショーウィンドウには魔剣が飾られている。
ちなみに一口に魔剣と言っても様々だ。
王家や貴族家において先祖代々受け継がれているような有名な名剣もあれば、名工により生み出される新たな魔剣もある。
前世で隣国の将軍だったルシアンが使っていた魔剣は多分国宝級のものだったと思う。
それに対して前世での俺は2代前の当主が名工に打たせた魔剣で、魔剣としてはまだまだ若かった。
しかも当時の国は平和そのもの。
そのため俺はずっと力を発揮することなく屋敷の中で飾られていたんだ。
でもそんな俺の前に立ち、小さな頃から目を輝かせて話しかけてくれていた主人。
『カイザーリード。君は本当に綺麗だね』
『いつか君を手にして、一緒に戦ってみたいなぁ』
『カイザーリード。力を貸してくれるか?』
ずっと見守ってきた子供が大人になり、大事な場面で俺の力を必要としてくれたのが嬉しくて、俺はそれはもう張り切って主人のために力を引き出し戦った。
主人は俺を労わりながらもその力を遺憾なく振るわせてくれて、本当に主人として素晴らしかったと思う。
だからもっともっと一緒にいたかった。
その人生をずっと先まで共に歩みたかった。
それがまさか子供としてでも叶ったのは嬉しいことではあったけど、何の因果かまさか生まれ変わった先で敵対していた奴と婚約してしまうなんて────。
「カイ。どうかしたの?」
猫を被ったルシアンが柔らかく笑いながら俺に笑顔を向けてくる。
人目があるところではこれが普通らしく、俺の前でもあまりその猫を脱ごうとはしない。
「別に。その猫をずっとかぶってればいいのになって思ってただけだ」
「フッ…。どっちの俺も嫌いじゃないくせに素直じゃないなぁ」
「……っ?!誰がだ!俺はお前なんて嫌いだ!」
なにせ前世の俺を叩き折った奴なんだから。
好きになるはずがない。
なのにこいつはスッと耳元へと唇を寄せ、秘密を明かすかのように意味深に言うんだ。
「俺はお前が好きだ」
「……っ?!」
「言ってなかったが、前世でお前を目にした瞬間から俺はずっとお前に惚れてる」
「は?!」
「お前を手に入れるために一緒に転生したんだ。だから…俺から逃げられると思うなよ?」
「はぁあああ?!」
突然の思わぬ告白に驚いて突き飛ばした俺を見て、ルシアンがどこか楽し気に笑う。
それを見るだけで本気だったのか冗談だったのかが一気にわからなくなった。
「そうだ、カイ。この旅行中は起きてから寝るまでずっと一緒だから、いっぱい仲良くなろうね?」
(これはもしかして共寝まで狙われてないか?!)
これまでのルシアンの行動から考えて、まず間違いない気がする。
そしてその考えを裏づけるかのようにまたスッと身を寄せられて、耳をくすぐるようにしっとりとした声で言ってくるのだ。
「カイ。この旅行でどっぷり俺色に染めてやるから覚悟しろ」
「~~~~っ?!」
「これまでを取り戻す意味でも、絶対に手離す気はないから」
果たして俺は無事に貞操が守れるんだろうか?
思わずそんな心配をしてしまいながら、俺は真っ赤な顔で『大丈夫、大丈夫だ。俺はあんな奴、絶対に好きになったりはしない』と必死に自分に言い聞かせたのだった。
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