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12.宿にて
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街歩きを楽しみ、街の名物料理も楽しんで宿に入ると、予想通りルシアンと同室だった。
しかもそれだけじゃなくベッドがひとつしかないし、ソファすらなかった。
これだとどこにも逃げ場がないじゃないか。
「ふざけるな!」
せめてソファくらいある部屋にしろよと言ってやりたい。
「狭いだろ?!」
「狭くない。これはダブルベッドだ」
「言っておくが俺は寝相が悪いんだ!」
「それなら俺が落ちないように抱き寄せてやる」
「そんな暑苦しい寝方、誰がするか!」
イライラしながらそう言い放つと、まあ落ち着けと言われ、取り敢えず風呂でも行こうと誘われた。
ルシアン曰く、裸の付き合いでリラックスする方がお互いに冷静になれて和解しやすいとのこと。
本当か?騙されてないか?
そう思って疑いの眼差しを向けると、これは本当だと言われた。
なんでも兄弟喧嘩の後で一緒に風呂に行くと大抵仲直りできたんだとか。
『同性ならではの解決法だな』と言われるとなんとなくその通りのような気がしてきて、最終的に『触らないなら』という条件で一緒に入ることに。
一緒に脱衣所に行って服を脱いだはいいものの、意外なほど引き締まったルシアンの身体に目が釘付けになる。
(メチャクチャ鍛えてないか?)
着痩せして見えていただけらしく、筋肉のつき方がすごく綺麗で、それは若き日の主人を思い出させた。
「カイ?どうかしたか?」
そんな俺にルシアンが声を掛けてきたから慌てて視線を下方へとやり、なんでもないと言おうとしたのがマズかった。
(デカっ?!)
立派なものを思いがけず目にしてそっと視線を外して自分のものと比べてみる。
(これって、俺のが小さいのか、あいつのが規格外なのか、どっちなんだろう?)
できれば自分のは標準サイズだと信じたい。
「カイ?」
小首を傾げて名を呼んでくるルシアン。
その仕草はどこからどう見ても可愛く見えるのに、アソコはちっとも可愛くない。
立派過ぎるせいで、悔しいがカッコいいとさえ思ってしまう。
「うぅ…悔しいっ」
思わずそうこぼした俺に、ルシアンがプッと吹き出した。
「クッ…ハハハッ!カイ。お前は本当に面白くて可愛いな」
「可愛いなんて言うな!」
ここでそれを言われるのは負けた気がして嫌だった。
なのにそんな俺に何故かこいつはどこか優しい目を向けてきて、『そんなお前が好きだ』なんて言ってくるからたまらない。
そのせいで物凄く恥ずかしくなって、俺は『先に行くから!』と風呂場に駆けた。
その結果、濡れた床でツルリと足を滑らせる俺。
「カイザーリード!」
そんな俺をルシアンが間一髪で抱き止め助けてくれて、ホッとしたような表情にドキッとさせられた。
「気をつけろ」
いつも狙って俺に仕掛けてくるルシアンだけど、今は本当に俺を心配して言ってくれているのをヒシヒシと感じて、なんだか胸がいつも以上に鼓動が弾んでしまう。
調子が狂う。
「ほら。立てるか?」
その言葉に素直に頷くとニコリと微笑まれた。
いつの間にこんな大人っぽくなったんだろう?
元々こんな感じだったか?
(でも考えてみたら前世は今より年上だったよな)
前世での最期の時の姿を思い出す。
詳しくは知らないが、恐らく25、6くらいだったんじゃないだろうか?
そう考えると今よりずっと大人だ。
人歴の浅い俺を子供扱いしたとしてもおかしくはない。
きっとその時の感覚が残っていて、子供っぽい俺を揶揄うのが楽しいんだろう。
(なるほどな)
つまりいちいち過剰に反応してた俺がダメだったってことだ。
ここはひとつ、おっさんを相手にしてるんだと考えよう。
そうだ。そうしよう。
ただのセクハラおっさん野郎と思えば────。
「カイ?」
(無理!!)
背は俺より高くなったのに、童顔だからかどうしても可愛く見える。
(こんな可愛いおっさんなんているか!!)
せめて後数年はそんな風に見れないんじゃないだろうか?
(悔しい!!)
俺はあっさりおっさん扱いする気が失せて、思い切り溜息を吐いた。
しかもそれだけじゃなくベッドがひとつしかないし、ソファすらなかった。
これだとどこにも逃げ場がないじゃないか。
「ふざけるな!」
せめてソファくらいある部屋にしろよと言ってやりたい。
「狭いだろ?!」
「狭くない。これはダブルベッドだ」
「言っておくが俺は寝相が悪いんだ!」
「それなら俺が落ちないように抱き寄せてやる」
「そんな暑苦しい寝方、誰がするか!」
イライラしながらそう言い放つと、まあ落ち着けと言われ、取り敢えず風呂でも行こうと誘われた。
ルシアン曰く、裸の付き合いでリラックスする方がお互いに冷静になれて和解しやすいとのこと。
本当か?騙されてないか?
そう思って疑いの眼差しを向けると、これは本当だと言われた。
なんでも兄弟喧嘩の後で一緒に風呂に行くと大抵仲直りできたんだとか。
『同性ならではの解決法だな』と言われるとなんとなくその通りのような気がしてきて、最終的に『触らないなら』という条件で一緒に入ることに。
一緒に脱衣所に行って服を脱いだはいいものの、意外なほど引き締まったルシアンの身体に目が釘付けになる。
(メチャクチャ鍛えてないか?)
着痩せして見えていただけらしく、筋肉のつき方がすごく綺麗で、それは若き日の主人を思い出させた。
「カイ?どうかしたか?」
そんな俺にルシアンが声を掛けてきたから慌てて視線を下方へとやり、なんでもないと言おうとしたのがマズかった。
(デカっ?!)
立派なものを思いがけず目にしてそっと視線を外して自分のものと比べてみる。
(これって、俺のが小さいのか、あいつのが規格外なのか、どっちなんだろう?)
できれば自分のは標準サイズだと信じたい。
「カイ?」
小首を傾げて名を呼んでくるルシアン。
その仕草はどこからどう見ても可愛く見えるのに、アソコはちっとも可愛くない。
立派過ぎるせいで、悔しいがカッコいいとさえ思ってしまう。
「うぅ…悔しいっ」
思わずそうこぼした俺に、ルシアンがプッと吹き出した。
「クッ…ハハハッ!カイ。お前は本当に面白くて可愛いな」
「可愛いなんて言うな!」
ここでそれを言われるのは負けた気がして嫌だった。
なのにそんな俺に何故かこいつはどこか優しい目を向けてきて、『そんなお前が好きだ』なんて言ってくるからたまらない。
そのせいで物凄く恥ずかしくなって、俺は『先に行くから!』と風呂場に駆けた。
その結果、濡れた床でツルリと足を滑らせる俺。
「カイザーリード!」
そんな俺をルシアンが間一髪で抱き止め助けてくれて、ホッとしたような表情にドキッとさせられた。
「気をつけろ」
いつも狙って俺に仕掛けてくるルシアンだけど、今は本当に俺を心配して言ってくれているのをヒシヒシと感じて、なんだか胸がいつも以上に鼓動が弾んでしまう。
調子が狂う。
「ほら。立てるか?」
その言葉に素直に頷くとニコリと微笑まれた。
いつの間にこんな大人っぽくなったんだろう?
元々こんな感じだったか?
(でも考えてみたら前世は今より年上だったよな)
前世での最期の時の姿を思い出す。
詳しくは知らないが、恐らく25、6くらいだったんじゃないだろうか?
そう考えると今よりずっと大人だ。
人歴の浅い俺を子供扱いしたとしてもおかしくはない。
きっとその時の感覚が残っていて、子供っぽい俺を揶揄うのが楽しいんだろう。
(なるほどな)
つまりいちいち過剰に反応してた俺がダメだったってことだ。
ここはひとつ、おっさんを相手にしてるんだと考えよう。
そうだ。そうしよう。
ただのセクハラおっさん野郎と思えば────。
「カイ?」
(無理!!)
背は俺より高くなったのに、童顔だからかどうしても可愛く見える。
(こんな可愛いおっさんなんているか!!)
せめて後数年はそんな風に見れないんじゃないだろうか?
(悔しい!!)
俺はあっさりおっさん扱いする気が失せて、思い切り溜息を吐いた。
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