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50.奴隷商

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男達に組み敷かれ、身体中をまさぐられ後ろを指で弄られ慣らされた後、いざ犯されるというところでそれは起こった。

バシッ!!

「なっ、なんだ?!」

結界のようなもので男が弾かれたのだ。

それは明らかな拒絶。
主人以外を拒む魔剣特有の現象だ。

「う…うぅ……っ、ひっく…」
「おい、お前!何しやがった?!」

男達が恫喝してくるが、そんなもの知ったことじゃなかった。
自分を己のものとし使ってもいいのは主人だけ。
それは魂に刻まれた契約なのだから。

身体を丸め、グスグスと泣くことしかできない自分が悲しかった。
魔剣だったらこんな屈辱的な気持ちになることなんてなかったはずなのに、どうして今、自分は人の身なんだろう?

「ルシィ…ルシィ……」

愛する主人に助けに来てもらえない。
いくら叫んでも声が届かない。
側へと呼んでもらえない。
それが悲しくて仕方がなかった。

恋しい主人への一方通行の想いが更に恋情となって、どんどんと胸の内へと募っていく。
想いが足りないから声が届かないのかな?
もっともっとステータスを上げたら助けに来てもらえる?
会いたい。
側に置いて欲しい。
何よりも主人に必要とされたいんだ。
会わないなんて…そんな風に拒絶されたくない。
拒絶されるくらいなら人の身なんて捨てたっていいんだ。

「ルシアン…っ」

(俺はお前の魔剣だろう?)

そして自分と主人であるルシアンに何かが繋がろうとしたところで、ドスッと腹に衝撃を受けて気を失った。


***


【Side.破落戸ごろつき

「っぶねぇ…」

何が何だかわからないが、奴隷の首輪で魔力を押さえているはずの獲物を取り敢えず気絶させることに成功した。
魔力の高まりが尋常ではないほど溢れていたから咄嗟にそうしたのだが、その判断は恐らく間違ってはいないだろう。
あのままだと自分達も危険だった。

「おい、どうする?このままヤッちまうか?」
「そうだな。依頼主は気が狂うほど犯せと言っていたしな」

取り敢えずやることをやっておかないと報酬が貰えない。
そう思い、意識はないが取り敢えず犯そうとしたのに、どうしたわけか挿入しようとすると弾かれ、どうしても挿入することができなかった。

「チッ…」

原因はわからないがこれではどうしようもない。

「しょうがねぇ。売っぱらうか」

依頼主から報酬が貰えないなら他から収入を貰うしかない。
幸いこの獲物の見た目は頗る良い。
しかも話によると敵国であるジュリエンヌ国の者なのだとか。
それならそれで奴隷として売れば貴族にかなり高く売れるはず。
あの国に憎悪を抱いている貴族は多いから、自分達が手を下すまでもなくきっとそこで痛い目に合わされることだろう。
そう思い、俺達は奴隷商の元へと獲物を売りに行った。

「これは極上の商品だな」
「へへへ。なんでもジュリエンヌ国の貴族の坊ちゃんらしいぜ。高値で買ってくれるよな?おっさん」
「しょうがないな。いつもならふざけるなと言うところだが、今回は特別だぞ?」

そうして俺達は存分に色を付けてもらった報酬を手に、満面の笑みで奴隷商を後にしたのだった。


***


【Side.奴隷商】

破落戸共が年若い貴族の男を攫ってきた。
見た目が極上の、まさに商品として特級品ともいえるそんな綺麗な男だった。
しかも話を聞くと隣国ジュリエンヌ国の者だと言うではないか。
これはいい買い物をした。
訳アリのようだがそんなものは関係ない。

本来なら売られた時点でこちらで用意した奴隷の首輪をつけて逆らえないよう洗脳し魔力を抑え込むのだが、この男には破落戸共が先に裏ルートで出回っている非合法な奴隷の首輪をつけていたからそれができなかった。
これでは魔力を抑えることができても洗脳まではできそうにないなと残念に思う。

「仕方がないな」

無理に外せないこともないが、考えてみれば敵国の貴族の男を従順に洗脳するより、そのままの方が客受けするかもしれないと思い直す。

ジュリエンヌ国に恨みを持つ輩は多いし、怯える奴隷を嬲りたい者だって大勢いるだろう。
特に戦時中、王弟ルーシャン殿下の部下だった者ほどその恨みは強いはずだから。

「そうだ。騎士団長のライアン様なら高値で買ってくださるかもしれないな」

オークションにかけてもいいが、先にまずそちらに話を持って行ってみよう。
これがただの綺麗な男というだけの商品だったならこんなことはしなかったと思うが、敵国の者だとわかっているのだ。
戦時中世話になった方々に先に筋を通すべきだろう。
そんな思いで適当に衣服を整えさせて、手枷と足枷をつけ、ついでに口には猿轡を噛ませた上で馬車へと放り込んだ。
途中馬車の揺れで男が目を覚ましたが、その瞳の美しさを見てその商品価値の高さに満足げに笑みがこぼれた。

「本当に素晴らしいな」
「んんっ?!んーんーっ!!」
「状況が分からなくて不安か?安心しろ。お前をたっぷり可愛がってくれそうな方のところへ連れて行ってやる」
「んーんーっ!!」

必死に首を横に振り、目から涙を溢す男を見ながら馬車は予定通り貴族街へとひた走る。
時間的に騎士団長はそろそろ屋敷へと戻っている頃だろう。

そして屋敷へと到着し、そのまま応接室へと通された。
さて、いくらの値が付けられるだろう?
きっと高値で売れるはず。
それが今からとても────楽しみだ。


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