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第一部 アストラス編~王の落胤~
86.王宮の噂
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コツコツと歩を進めるロックウェルに、カイン始め皆の意識が集中していく。
「さて、今日はどれくらいの修練が積めているのか確認させてもらおうか」
そうやって用意された椅子へと腰かけたロックウェルに皆が深く礼を執り、ではと声が上げられた。
拘束魔法、対抗魔法、回復魔法、防御魔法など次々披露していく者達にロックウェルは満足げに視線を向ける。
「…確かにコーネリアから聞いた通り、皆励んでいるようだ」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「ちなみにコーネリア、お前に問う。お前は私の大事な友人である黒魔道士クレイについて、どう思っている?」
「私でございますか?」
「ああ」
その問い掛けにコーネリアは少し考えた末に短く答えた。
「黒魔道士として優秀な者と伺っておりますので、一度会って人となりを確認してみたい…。そう思っております」
その答えにロックウェルはなるほどと頷いた。
「カイン。お前の発言を許す。お前はクレイに会って、どんな印象を受けた?」
「…はっ。実に黒魔道士らしく、不遜で相容れない者と言う印象を受けました」
「…そうか」
そんな二人の言葉に昨日の者達が改めて声を上げる。
「ロックウェル様。昨日の件につきましては我々にも落ち度がございましたが、あちらにも非があるのは明白。どうぞ今一度クレイの王宮出入りに対する認識をお考え直し頂ければと思います」
その言葉にロックウェルは面白そうに笑った。
「お前達は何か勘違いをしていないか?」
「勘違い…とは?」
第二部隊の者達が首を傾げて見つめてくる中、ロックウェルは改めてその言葉を口にする。
「クレイは元々王宮を敬遠していたのだ。陛下からの再三の呼び出しを断った件はお前達の耳にも入っているだろう?」
「……」
「それを無理やり引っ張りだし、協力させ、ハインツ王子の教育係にまでさせたのは他の誰でもなく陛下や私だ」
その言葉に皆がハッとしたように顔をこわばらせる。
「つまり、クレイが望んでここに来ているわけではない」
「…と言うことは…」
「お前達の言っていることはただの戯言。クレイからすればとばっちりに過ぎないのだ」
「……」
「あの男に余計なことを吹き込んで王宮に来なくなったなら、王族や私を敵に回すと…そう頭に叩き込んでおくのだな」
そこまで言うとカイン始め他の者も認めざるを得ないとばかりに項垂れてしまった。
「とは言え私も鬼ではないからな。目に余る行動があれば言ってくるといい。天然な奴だが、助言してやることくらいはできるだろう」
そうやって微笑んでやると皆ホッとしたように頭を下げる。
「ありがとうございます」
「では一通り見させてもらった上での指導を始める!ドルイット、防御魔法の持続力が足りていないぞ!クール、お前は魔力の放出が雑だ!もっと丁寧に!フィリップ、お前は対抗魔法を唱えるのが遅い!シャーロット、……」
そうして次々に指摘を始めたロックウェルに皆が尊敬の念を向けながら呪文をまた唱え始めた。
「白魔道士の扱いはやっぱり思った通りの展開だったな」
「まあ白魔道士同士扱い方は熟知してるし、特段変わったこともないか」
ロックウェルに付き添ってきた二人は溜息をつく。
「まあでもさっきのクレイのは面白かったな」
「確かに。まさかあんな魔法があるとは」
「水晶化の魔法もそうだったが、我々が知らない魔法を他にも色々知ってそうだよな」
交流を持ったらきっと楽しいだろうと二人は楽し気に盛り上がる。
そこで今まで黙っていた一人が呆れたように溜息を吐いた。
「お前達は本当に能天気だな」
「なんだよアレス。お前だって面白いと思っただろう?」
「まあな。だが、俺が面白いと思ったのはリーネだ。正直あんな風に他者の力をあっさりと認めて利用するのは意外だった」
その言葉に確かにと二人も頷きを落とす。
彼女はとことん実力主義だ。
同じ第一部隊の黒魔道士でも、格下だと判断すれば話すらしない。
認めている相手ともどこか笑顔で牽制し合っているイメージがあった。
そんな彼女がいつの間にかクレイを認めていたのは不思議でならなかった。
「あれは…惚れたかな?」
「そう言えばシリィがリーネに対して怒っていたことがあったが、取り合いでもしたのかも…」
「え?じゃあクレイの相手って…」
ひゃーっと二人が楽しげに騒ぐ。
「…お前達はさっきのアレで察さなかったのか?幸せ者だな」
やれやれと溜め息を吐きそのまままた黙ってしまったアレスにブーブーと文句を言うと、二人はまた楽しげにシリィの失恋飲み会でも開くかと盛り上がっていった。
***
それから程なく、王宮魔道士達は表向きは大人しくなっていたが、黒魔道士排除派の貴族は密かに動きを見せていた。
その貴族の屋敷には今日沢山の白魔道士や貴族の姿が見られ、それぞれが意見を出し合っている。
「…黒魔道士を王宮から排除する手順としては、問題を起こした第三部隊からまず崩し、次に第一部隊の黒魔道士を追い出す形をとるのが一番だと思うが…」
「そうだな。外部者であるクレイは王が目を掛けていると言う話もある上、ルドルフ王子やハインツ王子などとも懇意と聞く。ましてや魔道士長とも友人同士なのだ。ここは下手に突つかず、上手く利用させてもらった方がよいのではないか?」
「……どういう意味だ?」
「たとえば王宮に黒魔道士はクレイだけで十分だと言うことにしてしまう────と言うのはどうだろう?」
「ああ。彼はそれだけの魔力と実績のある黒魔道士だったか。それなら王族お抱え魔道士として据えて、他の黒魔道士を一掃してしまうと言うのは手かもしれないな」
「最終的にクレイを陥れたら王宮には黒魔道士が誰一人としていなくなると言う算段か。悪くはない」
「ではそうすることにしよう…」
貴族への賛同者は皆思い思いにコクリと頷きあった。
「まずは第三部隊をどう崩すか…だな」
そんな言葉と共に内部者が声を上げる。
「第三部隊はカルロの件で新隊長が第一部隊から派遣されたと聞きました」
「では隊長本人も第一部隊から第三部隊に実質降格され不満を抱いている可能性が高いと?」
「はい。他にも第三部隊内に色々火種は燻っている様子。崩すのなら今が絶好のチャンスです」
「ふむ…」
「新隊長は女と聞いた。何かスキャンダルな噂でも流布してしまえばあっという間に潰れるのでは?」
「ああ。それは名案だ」
「一部ロックウェル様の女ではないかと言う話も聞き及びましたが…」
「なるほど。…ロックウェル様は数々の女性と浮名を流しておられた。一つそれが増える分には構わないかもしれないな」
では速やかにそちら方面で揺さ振ってみようと話を纏め、その後は宴会へと移行していった。
***
「……」
「…ですって」
「え~?!そんな…」
王宮内のあちらこちらで噂話が横行している。
ロックウェルはそれが不満でしかなかった。
何が悲しくて関係を持ったこともない相手と噂を流されなければならないのか────。
しかも自分の恋人であるクレイはそんな噂をどう思っているのか、今まさに自分の隣を歩きながら王宮はやっぱり面倒な場所だなとため息を吐いている。
「お前はこんな噂なんでもないだろうが、リーネはさすがにストレスが溜まっているみたいで、昨日も愚痴を溢しに来たぞ」
どうやらリーネはあの日からこっち、もうすでに何度もクレイに会いに来ているらしい。
色々アドバイスなども受けながら第三部隊内を徐々に纏めていっているのは認めてやるが、今回の噂がクレイに会う口実になっているのが正直腹立たしくて仕方がなかった。
リーネが意図的に流したのかと疑いたくなってしまうほどだ。
クレイは今のところ夜は確実に自分と会ってくれているし、話してくれる内容についてもヒュースが事細かに入れてくれる報告内容と変わらないから大目に見てはいるが、時にはそこにロイドも加わっているようなのでイライラは増すばかりだ。
「…私だってリーネと噂されるのは苦痛だ。正直どうせ噂を流されるならお前とがいい」
「はっ?!何を言ってるんだ!寝言は寝てから言え!」
そんな恥ずかしい噂が流れた時点でもう王宮には二度と来ないと言い出したクレイにロックウェルは慌てて弁明する。
「いや!今のは物の例えだ。私が悪かった」
今の発言は迂闊だった。これでクレイがまた王宮から足を遠のかせては元の木阿弥だ。
また会う頻度が下がってしまう。
「…………」
「クレイ。そんなに怒るな」
どうしようと思っていると、クレイがそっと自分を窺うように見上げてポツリと言葉を溢してくる。
「…もし…どうしても噂が消えないなら、俺が一度だけ女装して皆の前で口づけしてやってもいい」
「え?」
「新しい女ができたと…別の噂が流れたら今の噂だって消えるだろう?」
どうしてもと言うならそう言う手もあるからと言ってくれたクレイを思わず抱きしめたのは仕方がないと思うのだが、離せと言ってその後ギャイギャイと怒られた。
そんな二人の元にシリィがやってくる。
「ロックウェル様。何を廊下の真ん中で騒いでいるんです?クレイをからかうのはやめてあげてくださいね?」
呆れたようにため息を吐いたシリィにほら見ろと怒り、クレイはあっという間に腕の中から脱出してしまった。
「クレイ。元気そうで良かったわ」
「ああ。特に問題はない」
そう言ってふわりと笑ったクレイにシリィが言い難そうに口を開く。
「あの…あのね?クレイに恋人が出来たって聞いたんだけど…それってリーネ…じゃないわよね?」
「…?リーネはただの友人だ」
あっさりと言い切ったクレイにシリィがホッとしたように胸をなで下ろす。
「そう。良かった。あの日二人でキスしてたから、もしかしてと思っちゃって…」
「そんなに心配しなくても俺の恋人はリーネとは程遠い奴だぞ?」
「…うぅ。恋人がいるのは本当なのね」
「ああ」
「そう…。でも…友達ではいてくれる?」
「別に構わないぞ?」
「本当に?」
「ああ」
そんなクレイにシリィが嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
「困ったことがあればいつでも言ってくるといい。シリィが望むなら何でも力になってやるから」
「もうっ!クレイは本当に天然ね!」
「…?言われている意味が分からない」
「だから罪作りだって言っているのよ!」
もうもうっ!と怒りながらもどこかそのやりとりを楽しんでいるシリィを見ながらロックウェルは思う。
本当にクレイはどうしようもない奴だなと。
「…クレイ。話が終わったなら、この噂払拭に一刻も早く手を貸してもらいたいんだが?」
サッサと二人の話を終わらせてやりたくて後ろから抱きついてやると、何の話だと振り向いてきた。
「だから、リーネとの噂をさっさと終わらせたいから、今日にでも女装してくれと言っている」
その話を聞いてシリィが叫び声を上げた。
「なっ…!やけにくっついていると思ったらそんな内緒話をお願いしてたんですか?!」
「シリィ…こら。大きな声を出すな」
クレイが窘めるとシリィは慌てて口を紡ぐが、次のクレイの言葉で思わず目を瞠ってしまう。
「別に俺は構わないが、化粧道具一式は以前はロイドが全部用意してくれていたから持っていないんだ」
用意してからになるから今すぐは無理だと嘆息するクレイに、気が付けばシリィは声を上げていた。
「そう言うことなら私に任せて!すぐに用意してあげるから!」
「え?」
そうしてシリィはそのままクレイを引っ張って自室へと連れていくと、自分の化粧品をずらりと並べ始める。
「あ、でも衣装とウィッグだけはどうしようもないわね」
困ったと言い出すシリィに眷属がひらりとやってきて用意しましたと置いていく。
「レオ。仕事が早いな」
【クレイ様の女装姿はまだ見たことがありませんので、楽しみで…】
「ああ。そう言えばお前は前回見ていなかったな」
そして取り敢えず化粧前に先に着替えたのだが…。
「どうしてこんなひらひらの服にした?」
普通に女黒魔道士の衣装でいいのにとクレイが文句をつけるが、その令嬢のようなドレスはとてもしっくりと似合っていて、ウィッグをつければどう見ても貴族の娘そのものだ。
【噂払拭ということでしたので、魔道士の衣よりはこういった服装の方が良いかと判断いたしました】
その言葉になるほどと納得はいったが、正直動きにくくて仕方がない。
「じゃあお化粧もしちゃうわね」
そう言ってシリィが楽しそうにクレイに化粧を施し、出来た!と声を上げてロックウェルへと満足げに見せてくる。
そのあまりの出来栄えにロックウェルはついポロリとその言葉を口走っていた。
「クレイ…結婚してくれ」
「ふ、ふざけるな!誰が男と結婚するか!」
真っ赤になって怒るクレイにシリィがクスクスと笑う。
「クレイ。それだけ綺麗ってことよ。これなら誰にもバレないんじゃないかしら?」
「…そうかな?」
「ええ。多分執務室まで腕を組んで歩くだけで十分噂払拭になると思うわ」
「腕を組むのは恥ずかしいな…」
「じゃあ何日かロックウェル様と朝一緒に仲良く歩く?別にそれでもいいとは思うけど…」
「朝一緒に歩くだけで噂払拭になるのか?」
「ええ。もちろん」
「?よくわからないがそっちの方が簡単そうだからそっちにする」
「そう?じゃあ暫く化粧道具一式は貸しておくわね」
「助かる」
そうしてにこりと笑ったクレイにロックウェルはほくそ笑んだ。
クレイは全くわかっていないようだが、これは好都合だ。
毎朝一緒に歩くと言うことは、夜を仲良く過ごしましたと言うことを周知するにはもってこいのシチュエーション。
部屋を出る前に口づけで酔わせておけば色気も出て尚真実味が増すだろう。
「じゃあそれで明日から宜しく頼む」
そう言ってやると案の定クレイは全く考えることなく了承してくれた。
「取りあえず今日はそのまま執務室に向かいますか?」
シリィがそう尋ねてきたので、そうだなと答え、念のため軽く打ち合わせをする。
「名前も特別必要ないかとは思いますけど、何か考えておきます?」
「クレイでいいんじゃないのか?」
「それだとバレバレでしょ?クレアとかクローディアとか何かそういうのにしておいたらどうかしら?」
それならそれほど違和感なく受け答えできるのではないかとシリィが言ってきたので、クレイは暫し考えてじゃあクレアにすると答えた。
「ロックウェル様もそれで大丈夫ですか?」
「ああ。別に構わない」
「じゃあクレアは私の友人兼ロックウェル様の恋人で、貴族の娘。これで行きましょう」
「わかった」
そうして三人揃って執務室へと向かった。
「ロックウェル様!そのご令嬢は?!」
早速そのまま執務室へ入ると開口一番皆が声を上げてきた。
「シリィの友人で、私の恋人だ。リーネとの噂を聞いて心配しているようだったから、暫く噂払拭のために朝一緒に来ることにした」
「え~?!こんな美人を隠していたなんて…!」
「…クレア。じゃあまた」
そう言って甘い目線でクレイを見遣ると、それを合図とばかりにスッと礼をとって下がっていく。
「なんだ。ロックウェル様の相手ってリーネじゃなかったのか」
「リーネはクレイが好きなんだろう?それならリーネとクレイが恋人同士なんじゃないのか?」
「…クレイはリーネとは付き合ってないって言っていたわ。恋人は別にいるって言っていたわよ!」
プイッとシリィが怒ったように言い放ち、そんなことよりも仕事だと皆を促してくる。
「ほら!しっかりやらないと第二部隊や第三部隊の魔道士に第一部隊こそ色ボケで弛んでるって言われちゃうでしょう?!」
その言葉に皆が笑いだした。
「確かに!」
「上手いこと言うなぁ。シリィ!」
あははと一気に和んで皆がそれぞれ仕事をし始める。
「ロックウェル様。他国から魔道士交流会の話が来ておりますが…」
「ああ。会場はアストラス王宮でいいのか確認を取っておいてくれ」
「はい。ではこちらは…」
「ロックウェル様。トルテッティ国と接する関所で魔道士同士のトラブルが増えていると報告が上がっておりまして…」
こうしていつも通りの日常は緩やかに過ぎて行った。
「さて、今日はどれくらいの修練が積めているのか確認させてもらおうか」
そうやって用意された椅子へと腰かけたロックウェルに皆が深く礼を執り、ではと声が上げられた。
拘束魔法、対抗魔法、回復魔法、防御魔法など次々披露していく者達にロックウェルは満足げに視線を向ける。
「…確かにコーネリアから聞いた通り、皆励んでいるようだ」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「ちなみにコーネリア、お前に問う。お前は私の大事な友人である黒魔道士クレイについて、どう思っている?」
「私でございますか?」
「ああ」
その問い掛けにコーネリアは少し考えた末に短く答えた。
「黒魔道士として優秀な者と伺っておりますので、一度会って人となりを確認してみたい…。そう思っております」
その答えにロックウェルはなるほどと頷いた。
「カイン。お前の発言を許す。お前はクレイに会って、どんな印象を受けた?」
「…はっ。実に黒魔道士らしく、不遜で相容れない者と言う印象を受けました」
「…そうか」
そんな二人の言葉に昨日の者達が改めて声を上げる。
「ロックウェル様。昨日の件につきましては我々にも落ち度がございましたが、あちらにも非があるのは明白。どうぞ今一度クレイの王宮出入りに対する認識をお考え直し頂ければと思います」
その言葉にロックウェルは面白そうに笑った。
「お前達は何か勘違いをしていないか?」
「勘違い…とは?」
第二部隊の者達が首を傾げて見つめてくる中、ロックウェルは改めてその言葉を口にする。
「クレイは元々王宮を敬遠していたのだ。陛下からの再三の呼び出しを断った件はお前達の耳にも入っているだろう?」
「……」
「それを無理やり引っ張りだし、協力させ、ハインツ王子の教育係にまでさせたのは他の誰でもなく陛下や私だ」
その言葉に皆がハッとしたように顔をこわばらせる。
「つまり、クレイが望んでここに来ているわけではない」
「…と言うことは…」
「お前達の言っていることはただの戯言。クレイからすればとばっちりに過ぎないのだ」
「……」
「あの男に余計なことを吹き込んで王宮に来なくなったなら、王族や私を敵に回すと…そう頭に叩き込んでおくのだな」
そこまで言うとカイン始め他の者も認めざるを得ないとばかりに項垂れてしまった。
「とは言え私も鬼ではないからな。目に余る行動があれば言ってくるといい。天然な奴だが、助言してやることくらいはできるだろう」
そうやって微笑んでやると皆ホッとしたように頭を下げる。
「ありがとうございます」
「では一通り見させてもらった上での指導を始める!ドルイット、防御魔法の持続力が足りていないぞ!クール、お前は魔力の放出が雑だ!もっと丁寧に!フィリップ、お前は対抗魔法を唱えるのが遅い!シャーロット、……」
そうして次々に指摘を始めたロックウェルに皆が尊敬の念を向けながら呪文をまた唱え始めた。
「白魔道士の扱いはやっぱり思った通りの展開だったな」
「まあ白魔道士同士扱い方は熟知してるし、特段変わったこともないか」
ロックウェルに付き添ってきた二人は溜息をつく。
「まあでもさっきのクレイのは面白かったな」
「確かに。まさかあんな魔法があるとは」
「水晶化の魔法もそうだったが、我々が知らない魔法を他にも色々知ってそうだよな」
交流を持ったらきっと楽しいだろうと二人は楽し気に盛り上がる。
そこで今まで黙っていた一人が呆れたように溜息を吐いた。
「お前達は本当に能天気だな」
「なんだよアレス。お前だって面白いと思っただろう?」
「まあな。だが、俺が面白いと思ったのはリーネだ。正直あんな風に他者の力をあっさりと認めて利用するのは意外だった」
その言葉に確かにと二人も頷きを落とす。
彼女はとことん実力主義だ。
同じ第一部隊の黒魔道士でも、格下だと判断すれば話すらしない。
認めている相手ともどこか笑顔で牽制し合っているイメージがあった。
そんな彼女がいつの間にかクレイを認めていたのは不思議でならなかった。
「あれは…惚れたかな?」
「そう言えばシリィがリーネに対して怒っていたことがあったが、取り合いでもしたのかも…」
「え?じゃあクレイの相手って…」
ひゃーっと二人が楽しげに騒ぐ。
「…お前達はさっきのアレで察さなかったのか?幸せ者だな」
やれやれと溜め息を吐きそのまままた黙ってしまったアレスにブーブーと文句を言うと、二人はまた楽しげにシリィの失恋飲み会でも開くかと盛り上がっていった。
***
それから程なく、王宮魔道士達は表向きは大人しくなっていたが、黒魔道士排除派の貴族は密かに動きを見せていた。
その貴族の屋敷には今日沢山の白魔道士や貴族の姿が見られ、それぞれが意見を出し合っている。
「…黒魔道士を王宮から排除する手順としては、問題を起こした第三部隊からまず崩し、次に第一部隊の黒魔道士を追い出す形をとるのが一番だと思うが…」
「そうだな。外部者であるクレイは王が目を掛けていると言う話もある上、ルドルフ王子やハインツ王子などとも懇意と聞く。ましてや魔道士長とも友人同士なのだ。ここは下手に突つかず、上手く利用させてもらった方がよいのではないか?」
「……どういう意味だ?」
「たとえば王宮に黒魔道士はクレイだけで十分だと言うことにしてしまう────と言うのはどうだろう?」
「ああ。彼はそれだけの魔力と実績のある黒魔道士だったか。それなら王族お抱え魔道士として据えて、他の黒魔道士を一掃してしまうと言うのは手かもしれないな」
「最終的にクレイを陥れたら王宮には黒魔道士が誰一人としていなくなると言う算段か。悪くはない」
「ではそうすることにしよう…」
貴族への賛同者は皆思い思いにコクリと頷きあった。
「まずは第三部隊をどう崩すか…だな」
そんな言葉と共に内部者が声を上げる。
「第三部隊はカルロの件で新隊長が第一部隊から派遣されたと聞きました」
「では隊長本人も第一部隊から第三部隊に実質降格され不満を抱いている可能性が高いと?」
「はい。他にも第三部隊内に色々火種は燻っている様子。崩すのなら今が絶好のチャンスです」
「ふむ…」
「新隊長は女と聞いた。何かスキャンダルな噂でも流布してしまえばあっという間に潰れるのでは?」
「ああ。それは名案だ」
「一部ロックウェル様の女ではないかと言う話も聞き及びましたが…」
「なるほど。…ロックウェル様は数々の女性と浮名を流しておられた。一つそれが増える分には構わないかもしれないな」
では速やかにそちら方面で揺さ振ってみようと話を纏め、その後は宴会へと移行していった。
***
「……」
「…ですって」
「え~?!そんな…」
王宮内のあちらこちらで噂話が横行している。
ロックウェルはそれが不満でしかなかった。
何が悲しくて関係を持ったこともない相手と噂を流されなければならないのか────。
しかも自分の恋人であるクレイはそんな噂をどう思っているのか、今まさに自分の隣を歩きながら王宮はやっぱり面倒な場所だなとため息を吐いている。
「お前はこんな噂なんでもないだろうが、リーネはさすがにストレスが溜まっているみたいで、昨日も愚痴を溢しに来たぞ」
どうやらリーネはあの日からこっち、もうすでに何度もクレイに会いに来ているらしい。
色々アドバイスなども受けながら第三部隊内を徐々に纏めていっているのは認めてやるが、今回の噂がクレイに会う口実になっているのが正直腹立たしくて仕方がなかった。
リーネが意図的に流したのかと疑いたくなってしまうほどだ。
クレイは今のところ夜は確実に自分と会ってくれているし、話してくれる内容についてもヒュースが事細かに入れてくれる報告内容と変わらないから大目に見てはいるが、時にはそこにロイドも加わっているようなのでイライラは増すばかりだ。
「…私だってリーネと噂されるのは苦痛だ。正直どうせ噂を流されるならお前とがいい」
「はっ?!何を言ってるんだ!寝言は寝てから言え!」
そんな恥ずかしい噂が流れた時点でもう王宮には二度と来ないと言い出したクレイにロックウェルは慌てて弁明する。
「いや!今のは物の例えだ。私が悪かった」
今の発言は迂闊だった。これでクレイがまた王宮から足を遠のかせては元の木阿弥だ。
また会う頻度が下がってしまう。
「…………」
「クレイ。そんなに怒るな」
どうしようと思っていると、クレイがそっと自分を窺うように見上げてポツリと言葉を溢してくる。
「…もし…どうしても噂が消えないなら、俺が一度だけ女装して皆の前で口づけしてやってもいい」
「え?」
「新しい女ができたと…別の噂が流れたら今の噂だって消えるだろう?」
どうしてもと言うならそう言う手もあるからと言ってくれたクレイを思わず抱きしめたのは仕方がないと思うのだが、離せと言ってその後ギャイギャイと怒られた。
そんな二人の元にシリィがやってくる。
「ロックウェル様。何を廊下の真ん中で騒いでいるんです?クレイをからかうのはやめてあげてくださいね?」
呆れたようにため息を吐いたシリィにほら見ろと怒り、クレイはあっという間に腕の中から脱出してしまった。
「クレイ。元気そうで良かったわ」
「ああ。特に問題はない」
そう言ってふわりと笑ったクレイにシリィが言い難そうに口を開く。
「あの…あのね?クレイに恋人が出来たって聞いたんだけど…それってリーネ…じゃないわよね?」
「…?リーネはただの友人だ」
あっさりと言い切ったクレイにシリィがホッとしたように胸をなで下ろす。
「そう。良かった。あの日二人でキスしてたから、もしかしてと思っちゃって…」
「そんなに心配しなくても俺の恋人はリーネとは程遠い奴だぞ?」
「…うぅ。恋人がいるのは本当なのね」
「ああ」
「そう…。でも…友達ではいてくれる?」
「別に構わないぞ?」
「本当に?」
「ああ」
そんなクレイにシリィが嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
「困ったことがあればいつでも言ってくるといい。シリィが望むなら何でも力になってやるから」
「もうっ!クレイは本当に天然ね!」
「…?言われている意味が分からない」
「だから罪作りだって言っているのよ!」
もうもうっ!と怒りながらもどこかそのやりとりを楽しんでいるシリィを見ながらロックウェルは思う。
本当にクレイはどうしようもない奴だなと。
「…クレイ。話が終わったなら、この噂払拭に一刻も早く手を貸してもらいたいんだが?」
サッサと二人の話を終わらせてやりたくて後ろから抱きついてやると、何の話だと振り向いてきた。
「だから、リーネとの噂をさっさと終わらせたいから、今日にでも女装してくれと言っている」
その話を聞いてシリィが叫び声を上げた。
「なっ…!やけにくっついていると思ったらそんな内緒話をお願いしてたんですか?!」
「シリィ…こら。大きな声を出すな」
クレイが窘めるとシリィは慌てて口を紡ぐが、次のクレイの言葉で思わず目を瞠ってしまう。
「別に俺は構わないが、化粧道具一式は以前はロイドが全部用意してくれていたから持っていないんだ」
用意してからになるから今すぐは無理だと嘆息するクレイに、気が付けばシリィは声を上げていた。
「そう言うことなら私に任せて!すぐに用意してあげるから!」
「え?」
そうしてシリィはそのままクレイを引っ張って自室へと連れていくと、自分の化粧品をずらりと並べ始める。
「あ、でも衣装とウィッグだけはどうしようもないわね」
困ったと言い出すシリィに眷属がひらりとやってきて用意しましたと置いていく。
「レオ。仕事が早いな」
【クレイ様の女装姿はまだ見たことがありませんので、楽しみで…】
「ああ。そう言えばお前は前回見ていなかったな」
そして取り敢えず化粧前に先に着替えたのだが…。
「どうしてこんなひらひらの服にした?」
普通に女黒魔道士の衣装でいいのにとクレイが文句をつけるが、その令嬢のようなドレスはとてもしっくりと似合っていて、ウィッグをつければどう見ても貴族の娘そのものだ。
【噂払拭ということでしたので、魔道士の衣よりはこういった服装の方が良いかと判断いたしました】
その言葉になるほどと納得はいったが、正直動きにくくて仕方がない。
「じゃあお化粧もしちゃうわね」
そう言ってシリィが楽しそうにクレイに化粧を施し、出来た!と声を上げてロックウェルへと満足げに見せてくる。
そのあまりの出来栄えにロックウェルはついポロリとその言葉を口走っていた。
「クレイ…結婚してくれ」
「ふ、ふざけるな!誰が男と結婚するか!」
真っ赤になって怒るクレイにシリィがクスクスと笑う。
「クレイ。それだけ綺麗ってことよ。これなら誰にもバレないんじゃないかしら?」
「…そうかな?」
「ええ。多分執務室まで腕を組んで歩くだけで十分噂払拭になると思うわ」
「腕を組むのは恥ずかしいな…」
「じゃあ何日かロックウェル様と朝一緒に仲良く歩く?別にそれでもいいとは思うけど…」
「朝一緒に歩くだけで噂払拭になるのか?」
「ええ。もちろん」
「?よくわからないがそっちの方が簡単そうだからそっちにする」
「そう?じゃあ暫く化粧道具一式は貸しておくわね」
「助かる」
そうしてにこりと笑ったクレイにロックウェルはほくそ笑んだ。
クレイは全くわかっていないようだが、これは好都合だ。
毎朝一緒に歩くと言うことは、夜を仲良く過ごしましたと言うことを周知するにはもってこいのシチュエーション。
部屋を出る前に口づけで酔わせておけば色気も出て尚真実味が増すだろう。
「じゃあそれで明日から宜しく頼む」
そう言ってやると案の定クレイは全く考えることなく了承してくれた。
「取りあえず今日はそのまま執務室に向かいますか?」
シリィがそう尋ねてきたので、そうだなと答え、念のため軽く打ち合わせをする。
「名前も特別必要ないかとは思いますけど、何か考えておきます?」
「クレイでいいんじゃないのか?」
「それだとバレバレでしょ?クレアとかクローディアとか何かそういうのにしておいたらどうかしら?」
それならそれほど違和感なく受け答えできるのではないかとシリィが言ってきたので、クレイは暫し考えてじゃあクレアにすると答えた。
「ロックウェル様もそれで大丈夫ですか?」
「ああ。別に構わない」
「じゃあクレアは私の友人兼ロックウェル様の恋人で、貴族の娘。これで行きましょう」
「わかった」
そうして三人揃って執務室へと向かった。
「ロックウェル様!そのご令嬢は?!」
早速そのまま執務室へ入ると開口一番皆が声を上げてきた。
「シリィの友人で、私の恋人だ。リーネとの噂を聞いて心配しているようだったから、暫く噂払拭のために朝一緒に来ることにした」
「え~?!こんな美人を隠していたなんて…!」
「…クレア。じゃあまた」
そう言って甘い目線でクレイを見遣ると、それを合図とばかりにスッと礼をとって下がっていく。
「なんだ。ロックウェル様の相手ってリーネじゃなかったのか」
「リーネはクレイが好きなんだろう?それならリーネとクレイが恋人同士なんじゃないのか?」
「…クレイはリーネとは付き合ってないって言っていたわ。恋人は別にいるって言っていたわよ!」
プイッとシリィが怒ったように言い放ち、そんなことよりも仕事だと皆を促してくる。
「ほら!しっかりやらないと第二部隊や第三部隊の魔道士に第一部隊こそ色ボケで弛んでるって言われちゃうでしょう?!」
その言葉に皆が笑いだした。
「確かに!」
「上手いこと言うなぁ。シリィ!」
あははと一気に和んで皆がそれぞれ仕事をし始める。
「ロックウェル様。他国から魔道士交流会の話が来ておりますが…」
「ああ。会場はアストラス王宮でいいのか確認を取っておいてくれ」
「はい。ではこちらは…」
「ロックウェル様。トルテッティ国と接する関所で魔道士同士のトラブルが増えていると報告が上がっておりまして…」
こうしていつも通りの日常は緩やかに過ぎて行った。
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