黒衣の魔道士

オレンジペコ

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第二部番外編 シュバルツ×ロイドの恋模様

10.※発覚(前編)

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最近クレイがミシェル王子と玩具の話で盛り上がったらしい。
正直悔しい気持ちでいっぱいだ。
自分も黒魔道士だから玩具には詳しいが、残念ながらそれは女が相手のものに限る。
けれどシュバルツと一緒にそのうち使って遊びたいとは思っていたから興味がないと言えば嘘になる。

「と言うわけで、教えてくれ」

そうして興味津々でクレイへと突撃したのだが、クレイは目を丸くした後物凄く言い難そうに謝ってきた。

「悪いがミシェル王子とアルバートに聞いてくれ。絶対にロックウェルには聞くなよ?俺が酷い目に合わされそうだから」

そんな意外な言葉になんだかモヤモヤしてしまった。
正直ロックウェルなんかには聞きたくもないし、ミシェル王子にも聞くに聞けないというのが実情だ。
向こうが自分を毛嫌いしているのだからどうしようもない。
となると、後はアルバートと言うことになるのだが、あの男はいつだってミシェルと一緒にいるため聞くのは非常に難しいのだ。

「と言うわけで、お前が聞いてきてくれ」
「はぁああぁ?!」

シュバルツが真っ赤な顔で動揺の声を上げるが、背に腹は代えられないのだから仕方がない。

「いいじゃないか。どうせ女にも使ったことがないんだろう?折角の機会だ。アルバートとミシェル王子にじっくり教えて貰って、それをそのまま私に伝えてくれたら後は上手くやってやるから」

そうして笑顔で送り出したのだが、あとで失敗したと思った時にはもう手遅れだった。


***


シュバルツはロイドから頼まれて夕刻渋々アルバートとミシェルの元へと向かった。
正直こんなことを相談する日が来るなんて思ってもみなかった。
何が悲しくて玩具の話を嬉々として聞きに来なければならないのか。

ロイドは自分が白魔道士と言うことを忘れているのではないだろうか?
恥ずかしすぎてたまらない。
新手の嫌がらせとしか思えないではないか。
そして躊躇いがちにコンコンと扉をノックしたのだが、そこに現れたのはアルバートだった。

「シュバルツ様?」
「あ…その、今お時間は大丈夫でしょうか?」

その言葉にアルバートは不思議そうにしながらも中へと促してくれる。
そしてミシェルが自分の分の晩餐もこちらに運ぶよう侍女に頼んでくれたので、食事をしながら話をしてみることにしたのだが…。
内容を聞いてミシェルは真っ赤になるし、アルバートは笑顔で固まるし、やっぱり言うんじゃなかったと穴があったら入りたいほど居た堪れない気持ちでいっぱいになってしまった。

「すみません。突然こんな話を……」
「いや。この場合貴方ではなくあのどうしようもない黒魔道士が悪いので気にしないように」

どうやらミシェルの中でのロイドの評価が益々悪くなってしまったようだが、こればかりは仕方がない。

「どうも先日クレイがミシェル様と話したことを小耳に挟んだようで、気になってしまったようです」

一応僅かばかりフォローを入れてみるが、この程度では焼け石に水だろう。
案の定ミシェルの美しい眉間には不機嫌そうに皺が寄ったままだ。

「ふん。それなら自分で頭を下げてくればいいものを」

(ご尤もです)

そう言われては身も蓋もない。

「まあいい。アルバート、後でシュバルツ殿に実物を見せてやってくれ」
「かしこまりました。ちなみにロイド殿のお好きな体位などはありますか?」
「え?ええ」
「ではそれを踏まえた上で良さそうなものをお勧めさせていただきますので」
「……!助かります!」

そしてホッと息を吐き、後は他愛のない話をしながらおいしく食事を頂いた。




(知らなかった……)

シュバルツはふらふらしながら先程見せてもらった玩具の数々を思い出していた。
その一つ一つを詳しく教えて貰いつつ、好きな体位によって好みの玩具も変わるのだと教えられた。
そしてアルバートに感じやすい体位から色々推察してもらい、最も適した玩具を選んでもらったのだ。
一体どれだけ精通しているのかと驚きを通り越して恐怖さえ感じてしまう。
アルバートのミシェルへの愛が怖すぎる。

(あれはどう考えても黒魔道士顔負けだろう……)

しかも最近クレイから、魔力がなくても魔力注入型の玩具が使えるよう、アイテムまで開発してもらったというから驚きだ。
驚くことにそのアイテムはそのうち商品化して国内で売り出される予定なのだとか。

────何がどうしてそうなった?

そもそも流通ルートをあっさり確保できているところが怖い。
真面目な騎士だと思っていたが、アルバートは実は商売上手なのだろうか?
いやいやそれより一体あの二人はどこまで追求するつもりなのだろう?
突っ込みどころが満載過ぎて、考えるだけで動悸が激しくなる。
とは言え助かったのは事実だ。
これできっとロイドに喜んでもらえるはず────。
そう思って教えて貰ったアイテムと同じものを用意して、その後事に及んだのだが……。


***


(どうしよう……)

あまりの良さにロイドが落ちてしまった────。


最初は物珍し気にその玩具を眺めていたロイドだったのだが、早速試したいといつもの好奇心全開の顔で嬉々としてローションと共にそれを自分へと差し出してきたのだ。
それに対していつものように仕方がないなと付き合うに至ったわけなのだが、後ろを慣らしてゆっくりと中ほどまで挿れた途端にストップがかかった。

「ロイド?」
「う…。待っ…!これ、は…ダメだ」

ジワジワと滲む涙に思わず怯む。

「痛い?抜こうか?」

そう言いながら引き抜こうとしたのだが、それは悲鳴と共に止められてしまった。

「やっ…!引き抜くなッ!うぅ…奥、奥に挿れてくれ……」

そうは言いながらも涙目になってしまっているし、これはやはり抜くべきなのではないか?

「ロイド。無理に試さなくてもいいぞ?」
「ちが…ッ!頼む…から、抜かずに奥に挿れ…て…!」

そんな懇願にも近い声に負けて、せめて辛くないようにと仕方なく一気に奥まで突き上げるとロイドの口から嬌声が飛び出て、そのまま身を震わせながら絶頂に飛んでしまったのだ。

正直衝撃的だった。
アルバートの選定がドストライク過ぎたのだろうか?
恐ろしすぎる!
これは一体どうしたらいいのだろう?

「ダ、ダート!ダート!一体どうしたらいいんだ?起こしていいのか?!」

これはさすがにまずいのではないかと慌ててロイドの眷属に呼び掛けるが、ダートはしれっとしながら問題ないと答えてきた。

【気持ち良すぎて飛んだだけだ。いつものように夢現にでもして誤魔化したらいいんじゃないか?】
「そ、そうか…!」

その手があったと軽く回復魔法を掛けてやる。
それと同時にロイドの意識がゆっくりと浮上してきた。

「んん……」

トロンとしたような目で身を震わせるロイドがなんだか新鮮だ。

「はっ…はぁ…」
「ロイド?大丈夫か?」

優しく声を掛けたところでロイドが自分の姿を認識する。
けれどその表情は早くも夢現状態のようにも見えた。
まだ一度しか掛けていないのだが、これはどうしたものだろう?
正気に返られたら怒られるパターンだから下手なことも言えないし、様子を見るほかない。

「ロイド。とりあえずこれ…抜こうか?」

そうしてそっとそれを抜くために手を動かしたのだが、それに合わせるかのようにロイドが甘い声を上げてそっと手を添えてきた。

「んっ…やっ…」
「ロイド?」

そうして戸惑いながら声を掛けるが、ロイドはふるりと身を震わせるだけでそれ以上のことは言ってくれない。
大丈夫なのか益々心配になってくる。

「ロイド、とりあえず力を抜いていろ。すぐに抜いてやるから」

そして抜きやすいよう足を広げてそっとそれを再度引いたのだが、それによりロイドの口からまた甘い声が飛び出てきた。

「ふあッ…んんっ…!」

いつものような強気な態度が全くなく、ただただ切ない声で震えるロイドに困惑する。
本当に一体どうしたらいいのだろう?
潤む瞳でこちらを見つめてくるその姿はどう見ても誘っているようにしか見えない。
それほどいいということなのだろうか?

そういうことなら────。

痛くないのならと気持ちを切り替え緩々とそれを動かしロイドの様子を観察すると、ロイドは凄く感じているようで、間断なく甘い声をその口から漏らし始めた。

「あ…あぁっ…気持ちいっ…!」

ズッズッ…と中を優しく擦りながら軽い口づけを繰り返していると、ロイドがどこか安心したようにフッと身体の力を抜いたのでそのタイミングで少しスライドの幅を広げてやると歓喜の声を上げて腰を揺らし出す。

「ロイド…気持ちいい?」
「んっんっんっ…!あっ…奥凄っ…気持ちいっ…!」
「じゃあもっと気持ちよくなって」
「はぁっ…!シュ、シュバルツ…!あぁっ!」
「ロイド……」

名前を呼んでくれるロイドが愛しくて、微笑みながら大丈夫だと言ってやる。

「ロイド。大丈夫。どんなロイドでも愛してる。だからもっと乱れて可愛い姿を見せてくれないか?」
「あっあっあっ…!シュバルツ!もっとッ!」
「強くする?いいよ。好きなだけ奥まであげる」

そんな言葉にロイドがそっと腕を伸ばしてきて、そのまま思い切り抱き着いてきた。

「あっ…シュバルツ…!好きだ……ッ!」

その言葉に思わず目が丸くなる。
ロイドは今一体何を言ったのだろうか?
もし夢と勘違いしているのだとしても、その言葉は自分に言ってしまってもいい言葉なのだろうか?

「シュバルツ…。うっ…もっといっぱいしてっ!好きにしてほし…ッ!」
「ロイド……」

こんな言葉を口にしてくれるなんて夢じゃないだろうか?
けれどそれをロイドが望んでくれるのなら、もっともっと気持ちよくなって欲しかった。

「ロイド…任せて」

こうなったら腕によりをかけて気持ち良くさせてみせる。
そうしてこれまで夢現で磨いた腕でロイドの弱点を責め立て、望むままに犯してやった。

「あぁあああっ!シュバルツッ!」

ロイドが身悶えながら自分の名を呼び潤む目で敷き布を握りしめる。

「はっ…はぁ…んんっ!イイっ!も、玩具はいい…から、シュバルツが欲しッ…!」

そんな言葉にたまらない気持ちが込み上げて、自分の身でロイドを可愛がってやると、物凄く嬉しそうにそのまま溺れてくれた。

「あっ…いいっ!シュバルツッ!好きッ!」
「ロイド…そんな言葉を私に言ってもいいのか?」

ロイドには自分とは別の本命がいるはずなのに……。
そんな風に思いながらも繊細な手つきで緩急を付けながらロイドを可愛がる。
胸を捏ねながら時折甘噛みしてやると嬉しそうに腰を震わせ可愛い言葉で甘く囀る。
こんな姿は自分だけしか知らないだろう。

「はぁ…っ。こんな風に抱いていいのは、お前だけ…だ……」

まさかそんな言葉まで口にされるとは思ってもいなかった。
愛しくて愛しくて仕方がない。

「ロイド…もっともっと溺れて?誰よりも愛してるから、どんなロイドも全部見せて欲しい」

だから愛しさを言葉に乗せてそう口にしたのだが……。

「はぁ…私も…夢でしか会えないお前が…好きすぎてもう…我慢できない…!シュバルツッ…!」

そんな言葉に思わず心臓が止まりそうになった。

(え?)

ロイドは一体何を言ったのだろうか?
あまりの言葉に思わず動きを止めてロイドに目を遣ってしまったのだが、そこには乱れながら熱い眼差しで自分を見つめる恋人の姿があるばかり────。

(え?え?何?これって、もしかしてもしかするのか?!)

「あ…ん…。シュバルツ…?」

急に動きが止まったせいで、どこか不安そうに見上げてくるロイドの姿が可愛すぎる。

いつも自信満々なロイドが、夢現の中で自分に甘えてくれる姿を見るのが大好きだった。
だから殊更その中では甘やかし、いつもは言えない言葉を紡いだ。
いつもなら躊躇するようなことだってどんどんやったし、ロイドが望むなら何でも応えてやった。
どんなことでも絶対に無理だなんて口にしない。
中にはわからないこともあったが、上手く伝えて教えてもらい多少背伸びしてでも余裕の笑みでいつだって実行してきた。
そんな自分を────ロイドは好きだと言ってくれたのだ。

「ロイド…もう一回言って?」

それがあまりにも嬉しくて、何度でも聞かせてほしいと思った。

「ね?ロイド……」

ちゅっちゅっと降らせるような軽い口づけを顔に降らせていると、ロイドがそっと頬を染めながらそっぽを向いた。

「……もう言わない」

(何このツンデレ……!)

可愛すぎて仕方がないではないか!

「ん…じゃあ言わなくてもいいから、このままおとなしく私の腕の中で啼いてくれ」
「え?あッ!あぁっ…!」
「ロイド…ロイド…」
「ひぁッ…!シュバルツ!イイッ…イイッ…!」
「うん。ここからこうして突き上げられるのが凄く好きなんだよね?」

ロイドのいいところはもう全部知っている。
だって開発したのは全部自分なのだから。

「はっ…はぁ…シュバルツ…!」
「わかってる」

そうしてロイドの弱いところを何度も責め立てるように突き上げてやると、気持ちよさそうに嬌声を上げた。

「あ────ッ!」

ビクビクと身を震わせ絶頂に飛ぶロイドに思い切り白濁を注ぎ込み、その身を優しく包み込む。

(これは…ロイドを捕まえられた……ってことでいいんだよな?)

ロイドが自分のことを好きだと本心から思ってくれているとしたら…そう考えるだけで嬉しすぎてたまらない。

もしも自分の予想が当たっているとしたら、起きたロイドに何を言ってやったらいいだろう?
まず第一前提として、この件は余程上手く言わないと逃げられるか誤魔化されるかするはずだ。
それだけは避けなければならない。

弱気になるのも下手に出るのも厳禁だ。
そんなことをすればそのままなし崩し的に自分の勘違いと言うことにされて、有耶無耶にされてしまうだろう。
ここはやはりできるだけ余裕の顔を崩さないようにしながら上手く事を運ばなければならない。

とは言えロイドは自分優位に立つのが好きだからやりすぎてもダメだ。
少し翻弄するくらいがちょうどいいはず。
そうして暫く自分なりに考えをまとめて、そっとロイドの眷属へと尋ねてみる。

「ダート…どう思う?」

『ゲームの勝利宣言をしても大丈夫だろうか?』
そんな思いを込めてロイドの身をそっと抱きしめながら尋ねると、ダートは自分の言いたいことを汲み取ってため息をつきながら答えを返してきた。

【好きにしたらいいだろう?大体前から言っているじゃないか。自信を持てばいいんだと】

確かにダートは自分が自信を持てばすむ話だとずっと言っていたし、いつだったかはロイドの想い人を探すのは無駄だからやめておけと呆れたように言っていた。
もしも相手が夢現の自分だったならその言葉は最もだ。
ライバルは他の誰でもない、自分自身なのだから。

「ん~…でも、どんなロイドも好きだから悩むな。偉そうなロイドも、可愛いロイドも、強がってるロイドも全部好きだし…カッコいいロイドも好きだ」

ロイドを想うだけで自然に頬が緩む。
好きにしろと言われてもどうしたらいいのか悩むところだ。

「ロイドはプライドが高いだろう?どんなロイドもそのまま全部全部好きだから、できればプライドを傷つけるようなことはしたくないんだ。だから……」
【…………】

ダートには呆れられているけれど、ここは悩みどころだと思う。

────どう伝えるべきだろう?

折角だから勝利宣言と共に自分の気持ちも沢山伝えたい。
それに加えて夢現の自分が現実の自分と一緒だということも合わせて伝えた方が、きっと逃げられないとわかって観念してくれそうな気もする。
とは言えプライドを傷つけないよう言わないといけないのが難点と言えば難点だ。
ここで一気に勝負を決めるか、様子を見ながら少しずつ攻めるべきか────。
どうするのが一番なのか眷属ならいいアドバイスをくれるのではないかと思ったところで、不意打ちのように唇を奪われた────。

(え?)

自分に口づけをしたのは当然ロイドで、何故かそのまま激しく魔力交流までされてしまった。

「んっんんっ…!?」

そのあまりの心地よさに身も心も蕩けそうなほど気持ちよくなって、さっきまでの余裕がなくなりそのまま流されていく。
そうして暫く互いの魔力を貪り合うように口づけを交わし、やっと離れた時には荒く息を吐いていた。

「はっ…はぁ…」

一体どうしたというのだろう?
ロイドがこんな風に口づけてくることなんて珍しい。
もしかして初めてではないだろうか?
そう思って腕の中のロイドへと目を向けると、いつもの余裕の表情はどこかへと消え、耳を真っ赤に染めながら自分の胸に顔を押し付けている姿があった。

「ロイド?」
「なんでもない!」
「……?」

どこからどう見ても、なんでもないようには見えないのだが……。
けれどロイドはそれ以上何も言わなかったので、もう一度そっと包み込むように抱きしめておやすみと言った。



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