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27.バンが可愛すぎる! Side.クレール

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晴れて結ばれて、バンと本当の意味で恋人同士になった。

バンとの初めての夜は緊張したけど無事に繋がれた時は凄く感動した。
あのバンが俺を受け入れてくれたって言うだけでどうしようもなく嬉しくて、何度も夢じゃないよなって自問自答したのは良い思い出だ。
大体挿れただけで『初めてが俺で良かった』とか『俺の恋人になれて幸せ』とか可愛い顔で言ってくるんだぞ?
しかも抱いたら抱いたで『好き』って言ってくれるし…!
嬉しすぎて舞い上がって、ちょっと暴走して加減を間違えたってしょうがない。
結果的に寝込ませたのだけは悪かったと思うけど、可愛いバンも悪い。
もう好き過ぎておかしくなりそうだ。

とは言えバンの父親の件は楽観視できないから、隊長達と連携を取ってしっかり対策をとることになった。
主だったメンツにはきっちり話は通ってるし、きっと何とか守り通せるはず。

それから三か月。
伯爵からは問い合わせや探りが多々あったようだが、軍の結束は固い。
『オーバン=ポルテ』という人物は該当なし、で全部通っている。
容姿からの問い合わせもあったようだが、個人情報につき何も答えられないと返したらしい。
俺への個人的コンタクトを取りたいとも言われたようだが、それも却下。
特別任務中につき個人的な時間は取れないと言ってもらうことができた。
まあ特別任務中と言うのは概ね間違ってはいない。
伯爵からバンを守るという特別任務中だからな。

そんなこんなでそっちは良かったんだが、問題はバンとの恋人生活だった。

(いちいち可愛い過ぎるんだ…!)

隠し事がなくなって一気に距離が縮まったせいで笑顔が増えたバン。
スキンシップをとっても前みたいに嫌がらなくなったし、なんならちょっと恥ずかしそうに身を寄せてきたりすることもある。
懐かなかった猫が懐いたらきっとこんな感じか?
もう可愛すぎてたまらない!
なんなら四六時中キスしたいくらいだ。
毎日抱いたっていい。
これまでパーティーなんかで女性相手に培ってきた語彙力が全部死ぬ。それくらい可愛い。

迂闊に抱いてまた抱き潰しても大変だから、ちゃんと話して抱くのは休前日にするって決めた。
これは正直自分で自分をほめたいと思う。
だってバンが可愛すぎるんだ!!
抱けば抱くほど蕩けるような顔で幸せそうに俺を見てくるし、俺に抱かれて嬉しいって全身で言ってるみたいに俺を求めてやまないし!
きっと身体の相性が抜群にいいんだと思う。
あれはいくらでも抱ける!
でも『なあクレール。身体もだいぶ慣れてきたし、たまにはその…休前日以外でもして、いいんだぞ?』なんて罠には引っかかる気はない!
何だあの殺し文句は。
暴走しそうだから上目遣いで抱いて欲しいな的アピールはしないでくれ。

大体ただでさえ休前日も暴走寸前なんだ。
抵抗なくキスを受け入れて、気持ちよさそうに俺の腕の中で頬を染める。
しかも熱い眼差しで俺を見つめて『今日もいっぱい気持ちよくしてほしい』って小さな声で恥じらいながら溢してきたりするんだ。
反則じゃないか?

抱いたら抱いたで『こんなに気持ちいいの、無理』とか恍惚とした顔で言われるし、抱き着きながら『繋がってたらクレールとぴったりくっつけるな』なんて嬉しそうに言ってくるから、暴走しないよう自制するのが大変だ。
いっそ『抱き潰して』って言ってくれたほうが楽かもしれない。
最中のバンはヤバいくらい凶悪に可愛いんだ。

しかもそれだけじゃなく、バンはイキっぱなしになったら激しくされたいみたいで、自分から締め付けて腰を振ってくるんだ。
俺の名前を呼びながら溺れるように求められて、それに応えない男なんていないだろ?
平日に抱いたら途中でやめられなくなるのが目に見えてわかるから無理!

(俺だって抱きたいけど…っ!)

そんなジレンマを抱える俺にきっとバンは気づいていないだろう。

(はぁ…連休が欲しい)

そうしたら三日三晩抱き続けるのに。


***


「伯爵に動きは?」

この三ヶ月、何度も尋ねてきた問いにブルノーがいつも通り返答をしてくる。

「変わりなし。いつも通りイカれてる」

伯爵はバンを取り返すために色んな奴に金をばら撒いて動いていた。

『軍の中にいるのはわかってるんだ!』

そう言って叫んでいる音声も伯爵の息子から手に入れることができたとブルノーは言っていて、諦める様子は全くないとのこと。
とは言えいつまでもこのままでは埒があかない。
何か伯爵がバンを諦めてくれるようなことはないだろうか?
そう思ってブルノーに相談してみたが、伯爵のバンへの執着は異常だから難しいと言われた。
そもそも家出から三年経った今でも諦めていなかったのだ。
見つかった分余計に執着心は増したんだろう。

「いっそ記憶喪失にでもならない限り、バンに執着し続けるんじゃないか?」

その言葉に誰もが頷いてしまうほど、伯爵の狂愛はバンに向けられている。

「屋敷のリフォームも終わったようだ」

バンを閉じ込める為の悍ましい屋敷はさながら鳥籠そのもの。
あんな所に連れていかれたら、絶対に自力では逃げ出せないだろう。

「バンは俺が守る!」

そう強く断言した俺に、隊長が徐に口を開いた。

「よく言った。クレール。その言葉を信じてお前達に提案だ」

隊長の話によると、伯爵の異常性は認められたものの、一個人のためにいつまでも多数の者の手が取られるのは問題だと上層部で話し合いが行われたとのこと。
そこでは『いっそバンを攫わせて現行犯で伯爵を牢に放り込んだらどうか』と言う意見なども出たらしい。
確かに早期解決を図るならそれが一番いいとは思う。
ただその場合バンの心理的負担が大き過ぎるということで、一旦保留になったとのこと。

そこで代わりに出た話が軍のパートナー制度。
これは本来戦死した際にその財産を死後どうするかと決める際、身内や友人ではなく、軍の関係者に全て渡したいと考えた者が使う制度だ。
この制度を使うと指名された人物は所謂配偶者扱いとなって、相手の死後遺産が公的に受け取れるようになる特別処置。
命懸けで任務にあたる軍関係者だけに許された特例だった。

「今回この制度を利用してお前とバンを配偶者扱いしてしまうのはどうかとなった」
「え?」
「この制度を使う利点はいくつかあるが、一つは公的に認められた制度だからバンが…いや、オーバン=ポルテがクレール=オルフィンの籍に入り伯爵家の籍から抜けられるというのが大きい。サインは上司のもので即受理が可能だから伯爵の許可も不要。実家には手紙だけが郵送されるが、そこは伯爵の息子であるアランが上手くやってくれるだろう」

隊長はそこから親の立場より優遇されるパートナーの利点を挙げた。

「パートナーは配偶者と同等の権利を有する。だから万が一今後無理矢理連れ帰られて『バンという者など知らない。息子のオーバンが家に帰っただけだ』と主張されても取り戻す権利はクレールにある。多少強引に押し入っても許されるし早急に手を打てる分バンの安全に繋がるはずだ」

なるほど。それは確かにメリットは大きそうだ。
取り戻したところで最悪伯爵から訴えられてもこちらがきっと勝つだろう。

俺はそれを聞きしっかり考えた上でバンへと目を向けた。

「バン。結婚しよう」

そう言ったら真っ赤になったバンが照れ隠しで『みんなが心配して真剣に話してるのに何言ってんだ?!この馬鹿!』って殴られた。
おかしいな?俺も真剣だったのに…。


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