えっ!? そっち!? いや、骨法はそういう意味じゃ……。◇兎オヤジの見聞録◇

たゆんたゆん

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第2章 辺境伯爵領

第105話 えっ!? 変食!?

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 「主君ーーっ!」「「「ハクト――ッ!」」」「「「ハクトさ~んっ!」」」

 「おわっ!? 何だ!? ちょっ、どわーーっ!?」

 死体から出る血としょんべんの臭いが鼻を突く中、ゆっくりと体を起こして、座り直したところへ肉の塊が7つ飛んできた。受け止め損ねてそのまま倒れちまう。

 いや、【粉骨砕身】でパワーアップしてるから受け止められねことはねえとは思ったんだが、力の加減を間違うととんでもねえ事になりそうでな。抵抗しなかったってのが正しいのさ。

 それを良いことに、顔や肩を触られまくる……。



 おいっ待てって、くすぐってえだろうがよ!



 「主君! 大事ないか!?」「ハクト大丈夫!?」「あんたの頭が潰れちまったのかと思ったんだよ!?」「ハクトさん、生きてるっスね!?」「吃驚びっくりさせないでください~」「オークジェネラル強敵。ハクトが倒せなかったら絶望」「ぶ、無事で、よ、良かったです!」

 一度に話しかけんな! 誰が誰だかさっぱり分らん!

 「ぶわっはっはっ!! や、やめ、擽ってえっ!! ま、まだオークが残ってるだろうがよっ!」

 こらえ切れなくなって、吹き出しちまったぜ。というか、お前らまだ全部終わった訳じゃねえだろうが。気い抜き過ぎだってえの。

 「問題ない。ガイが居る」

 つんつんとちびっ娘ロザリーに頬を突かれ、指差す方向に目を向けたら、居たよ。白い全身鎧フルプレートで身を固めた騎士が白い斧槍ハルバードを振り回して、襲ってくるオークをぶった切ってる奴が、な。

 てか、普通にガイって馴染なじんでねえか?



 早くね?



 てか、俺の出る幕ねえじゃねえかよ。

 「ふぅ。【解除】。いつつっ。【骨接ほねつぎ】。【骨接ぎ】。【骨接ぎ】。【骨接ぎ】」

 ああ、【粉骨砕身】な。熟練度レベルが10になったら、【解除】出来るようになったんだわ。勿論、今までどおり全身骨折の危険は付いて回るんだが、使用時間が短いと罅割ひびわれ程度で済むようになったのさ。

 100分フルタイムで【粉骨砕身】を使ったら、間違いなく死ねる程の全身複雑骨折が襲ってくるんだが、調整できるようになったのは大きいぜ?

 我慢できる程度の痛みに耐えて、【骨接ぎ】を数回掛ければ回復できるんだからよ。

 残りの討伐はガイのやつに任せておけば良いか、と思った時だったーー。



 《レベルが上がりました》



 「は?」

 例のアナウンスが頭の中で響き渡ったのさ。

 『は?』

 スピカが左肩に降りて来て首をかしげた。可愛い。

 1つだけ上がったのかと思ったら、念仏のように同じアナウンスが頭の中を流れ始めたじゃねえか。

 《レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。 ーーーーーーーーレベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました》

 他のもんが不審がらねえように、ひたいを押さえながら短く説明しておく。

 「すまん。レベルが上がったらしい。ちょっと待っててくれるか?」

 「仕方ないねえ」「オークジェネラルを討伐すれば上がるのは当然」「問題ないっスよ」「どれくらい上がるのかしら~」「だ、大丈夫でしゅっ! あ……」

 恐らくだが、俺だけじゃなくヒルダとプルシャンの頭ん中で同じことが起きてるはずだ。

 時間にして5分くらいか。相変わらず、抑揚のないアナウンスを聞き続けるのは苦痛以外の何物でもないな。

 久し振りにレベルが上がったのは良いんだが、どれくらい上がったかは後で確認だ。

 《【骨法こっぽう】のレベルが上がりました》

 おっと。こっちもか。あの時と同じだな。

 《【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました。ーーーーーーーー【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました》

 このアナウンスは2分も掛からずに終わった。10回? 9回位か?

 《【骨盗ほねとり】の【熟練度】が3になりました。【骨槍ほねやり】の熟練度が2になりました》

 熟練度が上がるのはありがたい。今までのも結構時間かかったからな。

 けど、ここまで来たらあれ・・こらえねえと……。

 そう思った瞬間ーー。



 「「「いっ!?」」」



 「いってえええぇぇぇー―――ーーっ!!!」「「いったあああぁぁぁーーーーーーいっ!!!」」



 俺たち3人の絶叫が森にこだましたーー。



                 ◆◇◆



 俺は今、オークの集落の中に生えてる大きな木の幹に背中を預けて、自分の【ステータス】を見てる。他の面々は、討伐サインだというオークの耳刈りをしてるとこだ。

 オークの肉は食べれねえし、皮も骨も使い道がないらしい。まあ、あの姿はそうだわな。

 で、アンデッドにならないように焼却が基本なんだと。なら、俺が全部貰うと言っておいた。

 「えっ!? 変食!?」っスか!?」

 と、ちびっ娘ロザリーホビット娘オリーヴに驚かれたが、即座に否定しておいた。んな訳あるかい。

 それをしちまったら、完全な人喰いだろうがよ。

 俺の中では、オークこいつらは人だ。魔族とは言うが、人の姿だからな。今回は無理だったが、分かり合える奴も居るんじゃねえか、という思いもどっかにある。

 ま、骨は俺が使ってやるからよ。成仏してくれや。

 ちびっ2人にジト目で怪しまれたが、固有ユニークスキルのことを何となく匂わせ、追求を逃れて今に至るってとこだな。

 んで、俺の【ステータス】はこうなってた。

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨仙人
 【レベル】Lv100 ↑99up
 【状態】健康
 【生命力】16730 / 16730 ↑2130up
 【魔力】16678 / 16678 ↑2248up
 【力】3855 ↑2405up
 【体力】3738 ↑2268up
 【敏捷】4347(3847+500) ↑2392up(+種族特性1Lv×5)
 【器用】3825 ↑2355up
 【知性】3869 ↑2399up

 【ユニークスキル】
  無限収納
 ☆骨法こっぽう Lv30 ↑9up

 【アクティブスキル】
  鑑定眼 Lv5
  爪戯そうぎLv3

 【パッシブスキル】
  回復強化 Lv10
  耐痛 Lv10
  耐魅了Lv1
  耐火Lv1
  耐磁力Lv1
  偽装Lv2

 【称号】
  竜殺し

 【装備】
  魔法鞄マジックバッグ(容量:2アンフォーラ)
  ベルト
  剣鉈×1
  森躄蟹モリザリガニ草摺くさずり
  森躄蟹の籠手
  森躄蟹の脛当て
  森躄蟹の胸当て

 【従者】
  ヒルデガルド・セイツ・アイヒベルガー(隷従)
  プルシャン(隷従)

 【所持金】
  銀貨2枚


 どうゆう計算でステータスは上がってんのかね?

 阿呆みたいに、ボーンと上がってる訳でもねえし。ま、このレベルでこうならと、勝手に俺の中では収まってたりする。これで、桁が1つ2つ多かったら「どうなってやがる!?」って突っ込んでただろうがな。

 あと、こっちの度量衡が未だにさっぱり解らん。

 おりを見て教えてもらわねえと、そろそろ恥かきそうだな。



 「おーーいっ! ハクトーーッ! ちょっとこっちに来てくれるかーーいっ!!」



 そんな事をぼんやり思っていると、虎女クロの声が血生臭ちなまぐさい集落に響き渡ったーー。





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