えっ!? そっち!? いや、骨法はそういう意味じゃ……。◇兎オヤジの見聞録◇

たゆんたゆん

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第2章 辺境伯爵領

第114話 えっ!? 幾ら何でもそりゃねえだろ!?

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 あの乱痴気騒らんちきさわぎの夜から7日が過ぎた。

 ああ、5人とも喰ったさ。

 生娘だった。クロも・・・そうだったとは驚きだったがな。

 つまりだ、冒険者ギルドで絡んで来た時や、キスした時はかなりの勇気を振り絞ってたらしい。それを聞いた俺は、思わず「阿呆あほか」と突っ込んでしまったのはご愛嬌あいきょうだろう。

 今まで身を守るために虚勢を張ってきた訳だが、こうなったらもう虚勢を張る必要はないからと過剰に甘えてくるようになった。擦り寄って愛嬌を振りまく野良猫状態だな。

 そうなればなったで、プルシャンが妙なとこで張り合うんだが、すまん、イサルコ。お前さんにゃ刺激が強かったみてえだな。

 けど、そこは炊きつけた母ちゃんに文句言っとけ。

 俺としてはなあなあで、何も起きない内に分かれる算段だったんだからよ。

 「で、ロザリーさんや、何でお前さんは椅子があるのに俺の膝の上に座ってるのかね?」

 「専有せんゆう。オリーヴに取られる前にわたしが座るのは道理」

 何が道理だよ。ったく。でもまあ、ホビット娘オリーヴちびっ娘ロザリーが俺の膝の上を奪い合うようになったのは間違いねえ事実だ。

 狐人のハーフヴェーラ熊人のハーフソレンヌ、それにヒルダは周りの目を盗んで甘えてくる。

 それはそれで仕草が可愛らしいんで、俺としては満更でもなかったりする。いや、すまん。

 俺もよ、こんなにモテることは生まれてこの方なかったんだわ。正直浮かれてやがるって自分でも思うぜ。街を歩く時に感じる妬みの視線は、癖になりそうだな。

 「開口。あ~ん」

 「阿呆。子どもじゃねえんだから自分で食う」

 朝、まだベッドで寝てるのを抜け出して来たら、ロザリーが付いて来てこんな状況になってるんだが……。この歳で「あ~ん」をしてもらえるとは思わなかったぜ。



 くそ女将。何陰からニヤニヤ覗き見してやがる。



 「あ~ん」

 「あ~はいはい。ぁむ」

 そのまま放っておいてくれそうもないから、差し出されたフォークに刺さった肉を頬張った。

 「眼福」

 それだけで、ロザリーが嬉しそうに微笑むの見て「悪くねえな」と思ってしまうのも、情にほだされたからだろうと思いたい。

 「あ゛ーっ!? ロザリー何してるんっスか!? 代わるっス!」

 そこへ騒ぎの種が降りて来た。

 「拒否。わたしも座ったばかり」「ぐぬぬぬっ」

 「何がぐぬぬぬだ。ほら、オリーヴも横に座って飯食え」「ふああっ!」

 俺らの横に来たオリーヴは、背中を軽く丸め両手を握りしめて悔しがってる。んなに悔しがることか? そう思いながら、わしゃわしゃと髪に手を突っ込んで撫でると変な声を出しやがった。こいつもか。

 「要求。わたしの頭も撫でると良い。ふああっ!」

 「なぁにが撫でると良いだよ。変な声出してねえで飯食え」

 ロザリーも同じように撫でてやると、同じ反応が返って来た。ヒルダやプルシャンも似たような反応をする事があるが……どうなってやがる?



 さっぱり解らねえ。



 ああ、食べながらでわりいな。5人を喰って気が付いたんだが、俺のステータスがちと可怪しいことになってんさ。

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨仙人
 【レベル】Lv100
 【状態】健康
 【生命力】16730 / 16730
 【魔力】16678 / 16678
 【力】3855
 【体力】3738
 【敏捷】4347
 【器用】3825
 【知性】3869

 【ユニークスキル】
  無限収納
  骨法こっぽう Lv30

 【アクティブスキル】
  鑑定眼 Lv6↑1up
  爪戯そうぎLv3

 【パッシブスキル】
  回復強化 Lv10
  耐痛 Lv10
  耐魅了Lv1
  耐火Lv1
  耐磁力Lv1
  偽装Lv2

 【称号】
  竜殺し
 ☆女殺し

 【装備】
  ベルト
  魔法鞄マジックバッグ(容量:2アンフォーラ)
  剣鉈×1
  森躄蟹もりザリガニの草摺
  森躄蟹の籠手
  森躄蟹の脛当て
  森躄蟹の胸当て
  陰徳いんとくの指輪

 【従者】
  ヒルデガルド・セイツ・アイヒベルガー(隷従)
  プルシャン(隷従)
  クローディーヌ・ラウル・アンツォン(従者候補)
  ヴェーラ(従者候補)
  オリーヴ(従者候補)
  ロザリー・メシアン(従者候補)
  ソレンヌ(従者候補)

 【所持金】
  銀貨2枚

 な?

 俺も目を疑ったぜ。



 えっ!? 幾ら何でもそりゃねえだろ!? 女殺しだぞ!?



 「何処のホストだ!?」って心の中で叫んだが、兎オヤジに変な称号付けるなよな。

 「竜殺しに掛けて、女殺しって単なる語呂合わせじゃねえのか?」って言いたくもなる気持ち、解ってくれるか?

 確証はねえが、何処ぞの気紛れな女神様が悪戯で付けたんじゃねえかと、俺は思ってる。そう言ったらよ、ヒルダが「称号というものは個人の願いなど関係なく勝手に付いてるものだ」って言うじゃねか。

 ほぼ確信に変わったね。

 いや、貰ったものにブーたれる気はねえんだが、自分に合わねえものが付いてるとよ、こう、むず痒くなっちまうんだよ。

 けど、こういうもんだと思うことにした。スピカを嫁に貰う以上、女神様たち縁が切れることはねえだろうから、これからもこういうことはあるはずだからな。

 一々いちいち気にしてたら、やってられるかって。

 んな事よりもだ、【従者】欄にクロたちの名前が「(従者候補)」って入ってるんだよ。

 心当たり……は、いっぱい出しちまったってことくらいか。おほん。

 ああ、後は【骨譲渡ほねじょうと】を久し振りに使ったな。その前に【魔骨化まこつか】って新しく覚えた【骨法スキル】を自分に使ってみたぞ。「骨が魔力を帯びるようになる」って説明だったから、どんなもんと思ってな。

 ん~~正直何が変わったのか判らん。

 でも、した事って言ったらその2つだな。

 クロたちの外見に変わった様子もねえし、いきなりステータス値が阿呆みてえに上がったりもしてねえ。本人たちに聞いてみても、「変わってない」って言ってたから大丈夫だろう。

 朝から小難しい事に頭を使うのは苦手な俺は、太腿にロザリーの柔らかさと温もりを感じつつ飯を食うことに専念することにしたーー。





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