えっ!? そっち!? いや、骨法はそういう意味じゃ……。◇兎オヤジの見聞録◇

たゆんたゆん

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第2幕 深淵の森 序章

第8話 えっ!? これでどうすりゃ良いの!?

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 「おい、嘘だろ――」

 そこに居たのは体高5mはあろうかという、牛に似た角を生やしたバカデカイ蛙だった――。

 さっきの「深淵しんえんぬし」のステータス画面の内容がパッとチャンネルを変えるように変わった。

 俺の眼は立派な牛のような角を生え出させた巨大な蛙から離せられなくなってる。

 というか、コイツにとっちゃ俺も餌だろうから、危機的な状況に変わりはない。

 いや、前門の虎、後門の狼ならぬ、前門の蟒蛇うわばみ、後門の牛蛙うしがえる(?)だわ。

 一体どういうとこだよ、この森は!

 最初の大鼠おおねずみだけで結構驚いたってぇのに、もうお腹いっぱいで吐きそうだよ!

 ◆深淵蛙◆
 【種族】オックスフロッグ
 【性別】♂
 【レベル】?
 【状態】正常
 【生命力】? / ?
 【魔力】? / ?
 【力】?
 【体力】?
 【敏捷】?
 【器用】?
 【知性】?

 【ユニークスキル】
  ?

 【アクティブスキル】
  ?

 【パッシブスキル】
  ?

 【称号】
  ?

 チラッと画面を見たら思った通り「?」マークだらけだった。

 気になったのは、こいつにも“深淵”という言葉が入ってるってことだ。

 この場所のことか?

 地名とか、森の名前とかかもしれないが、憶測の域をでないからこれ以上考えるのを止めた。

 止めざるを得なかったと言うべき……か。

 ああ、危機は脱してなかったってことさ。

 シュルシュルと三又に分かれた舌が巨大な蟒蛇の口から出入りしてるのが見えた。

 「追いつかれちまったな……」

 ピッ ピィィィ~~

 俺の左肩にスピカが降りてきてがっくりと肩を落とす。

 いや、スピカさんや。そんなにちっちゃい体でガッカリすんなよ。

 可愛くて思わず笑いそうになるだろうが。

 バキバキと音がして木の幹に突き刺さった黒い舌が引き抜かれて、その反動で木が折れるのを横目に見た。

 ――俺に来るのか!?

 と思ってたら――。

 グエエ――――ッ!!

 ジャ――――――ッ!!

 獲物がそれぞれ変わったらしい。

 「おい、スピカさんや、このままどさくさに紛れて逃げるぞ」

 ピッ!

 うなずくスピカの仕草に思わず笑みがこぼれたが、この場を離れるというという決定を覆す気はサラサラ無いので、俺たちはそそくさと茂みの中へ飛び込んだ――。



                 ◆◇◆



 俺の感覚ではあれから15分位は走っただろうか、けどいまだに森の中から抜けられずに居る俺たち。

 スピカは食うもの困らんだろうが、俺は困る。

 そもそも兎人間は肉食なのか? それとも草食なのか?

 手に持つ大鼠の肉を見て俺は悩んでいた。

 生食は避けたい。

 近代ニッポンでよわい50まで育ってきた俺は、素材をそのまま食べる行為に慣れていない。

 刺し身は別だが、サバイバルキャンプは苦手だ。

 田舎のじいちゃんに教えてもらったのは主に獣のさばき方で、薬草の見分け方とか調理の仕方なんか聞いてもいない。

 どうしたもんかな。

 そこまで思ってふと思い出し、再度自分のステータスを見てみることにした。

 「ステータス」

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨法使い
 【レベル】1
 【状態】健康
 【生命力】17 / 17
 【魔力】5 / 16
 【力】20
 【体力】5
 【敏捷】14(9+5)
 【器用】16
 【知性】7

 【ユニークスキル】
  無限収納
  骨法:Lv1

 【アクティブスキル】
  鑑定眼:Lv1

 【パッシブスキル】
  回復強化:Lv1

 【称号】

 【装備】

 【所持金】
  0

 「逃げまわってるだけだったからな、何も変わってるとこはないよな」

 まあ判かってた事だけど、もう1つ気になるものをまだ触ってないんだ。

 ――"無限収納"。

 使い方がさっぱり分からん。

 何処にあるのかも分からん。

 何が入ってるのかも分からん。

 ステータスに書いてあるからるには在るんだろうが――。

 「なあ、スピカさんやどうすりゃ良い?」

 ピルルルルル

 機嫌良さそうにさえずるスピカを指の背で撫でてから、色々と試してみることにした。

 「オープン、ラーク、開けごま、無限収納……」

 何にも起きん。

 はあ、使い方ぐらい説明してくれてもいいだろうに……。

 この肉、持ち続けてると手の熱で傷んでくるんだよな。

 こう、ポケットみたいにズボッと入れれば――。

 「え? 空間に手が入った?」

 穴が開いてる……。

 「じゃあ何か? 特に言う必要もなくて、収めたいって思えばいいってことか?」

 ピルルルル

 スピカさんや、そうならそうと言っておくれ。

 って、まだ話しできないんだから仕方ないか。

 ガクッとなりそうなのを懸命にこらえて、穴を広げてみる。

 「おお~、凄いな。真っ暗で何処が底か分からんぞ。ん?」

 視線の先に蓋のない木箱に入った物が見えた。

 取ろうと手を伸ばしたら、勝手に近づいてきたぞ。なる程。こう使えば良いのか。

 両手を突っ込んで箱を抱え出すと、空間から出たところで急に重さを感じることになる。

 おっとっと。中にある間は重さを感じないのか。便利だな。

 それよりも気になったのが50㎝×50㎝×50㎝の木箱の中身だ。

 何かの本2冊。

 薪1束。

 ナイフ2本、鞘付き。

 手斧1本、鞘付き。

 ベルト1本。

 ベルト用ポーチ2個。

 火打ち石2個。

 油瓶1本。

 毛布1枚。

 小さな巾着袋に入った麦粒1袋。

 肉焼き台1基。



 ――えっ!? これでどうすりゃ良いの!?



 中身を取り出して店を開いた俺は、言葉を失った――。





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