17 / 333
第1章 深淵の湖
第14話 えっ!? これ骨なの!?
しおりを挟むぐ~~~~
【骨法】の詳細を見て呆然としていたら、腹が鳴った。
確かに、何も食ってない。
朝食を仕入れに行こうとしたら、襲われたんだから食ってる暇もなかったな。
というか、何処かで解体しないことには肉にも与れん。
けどこのナイフじゃ解体は心許無い、よな。
「お!?」
そこまで考えて思い当たった。
【骨法】の骨形成を試せばいいんじゃないか?
近くの枝に引っ掛けておいた頭蓋骨を1つ手に取る。
「【骨形成】。おおっ!?」
そう意識して、手に取った頭蓋骨を挟み潰すように力を加えると、折れずにぐにゃりと潰れた。
えっ!? これ骨なの!?
そう思いたくなるくらい柔らかく、粘土のように簡単に大人の頭くらいの大きさの骨粘土が出来た。
「色々試してみるか。【骨錬成】。おおっ!?」
密度を高めるやつだ。
使ってみると、ソフトボール大の塊大まで縮んでしまった。
密度が高まるってこういうことなんだろう。
「【骨形成】」
どれくらいの時間粘土のような柔らかさを保っているのか分からないが、これで短刀もどきを造ってみることにした。
ベルトに差してるナイフより大きな形になりそうな気配だ。
グリップは軽く握って手の形を馴染ませ、鍔をナイフと似たような形に仕上げる。
後は刀身だ。
今考えてるのは解体でも使えて色々と使い勝手の良い短刀。
当然、鞘はない。
刃渡り20cmくらいの短刀が出来た。
刃の部分はナイフで何となく削って鋭くしてみる。
10分も掛ってないと思うけど無骨だがそれなりの短刀が出来た気がするぞ。
何せ初めての骨粘土細工だ。
「結構良いんじゃないか? スピカどうだ?」
ピルルルル ピルルルル
両肩を行ったり来たり嬉しそうに囀る姿に目尻が下がる。可愛いなぁ。
ガサガサッ ピッ
足元で落ち葉を踏みしめる音がした。スピカの警戒する声が俺の気を引き締める。
腹は減ってるけど、のんびりしてる暇はない。
ここは危険と隣り合わせの森だ。
常在戦場、だな。
「おいおいおい、何だよ、あのでけえザリガニは……」
◆深淵森躄蟹◆
【種族】フォレスクレイフィッシュ
【性別】♀
【レベル】150
【状態】興奮
【生命力】7227 / 7627
【魔力】7873 / 7873
【力】7570
【体力】7619
【敏捷】7799
【器用】7620
【知性】7846
【ユニークスキル】
?
【アクティブスキル】
?
【パッシブスキル】
?
【称号】
?
思わず凝視したせいで【鑑定眼】が発動してしまったみたいだ。
でも、それで良かった。
全部じゃないまでも、相手の情報が手に入ったんだ。活かさなきゃ勿体無い。
体の長さと同じ3mくらいの触覚が動いてる。
あと、言わせてくれ。
ーー蜘蛛か!!
と思えるくらい足が長え。
蜘蛛と同じ8本足に、プラス2本の巨大な鋏。何だか鋏の縁が妙に光沢が良い。
ん? 前足の4本には小さな鋏があるのか?
何にしても重たい胴体を地表から1mくらいの高さで支えてるんだ、細いとは言え相当な筋肉だろうな。
キチキチキチキチ
変な音が聞こえる。何だ?
「気付かれた!? 鳴き声か! おわっ!! 伐ったのかよ!」
森ザリガニの2本の鋏が霞んだかと思った次の瞬間、俺が居る木が大きく傾いたんだ。
あの鋏は挟むだけじゃなく、外側にも刃物が付いてるってこった。
「なんてこった」
この森の生物は出鱈目過ぎるだろうがよ。
毒突きたくなるのを堪えて、枝から飛び降りる。
真下に降りると、あの刃鋏に細切れになるのが目に見えてるからな。距離は取る。
レベル差は50近くあるのは判った。
でもステータスの数値が倍以上の開きがあるのはどう説明してくれるんだ。
「ここの生物の成長率は桁が違うってことか? 足も早えっ!?」
ザリガニの前進は遅い、という俺の常識が瞬く間に粉砕された。
俺が着地した頃には10m近く距離を取ったはずなのに、今はもう3mくらいの間しか無い。
ーー逃げられない。
と言うか、逃げても次の問題にすぐぶち当たるに決まってる。
「ザリガニもエビもカニも、骨はねえ。けど、外が骨なら問題ないはずだ、ろっ! 【骨抜き】ぃぃぃぃっ」
どうやら兎の動体視力も上がってるらしく、霞んで見えてた刃鋏の斬撃をなんとか躱しながら懐に飛び込めた!
兎じゃなきゃ今頃斬殺死体が転がってるだろうな。
腹の下に潜りながら、右側だけの腕と足の付け根の外骨格を抜きながら走り抜ける。
レベルが上がった所為か、失敗したような感覚はない。
思った通り、外骨格もちゃんと“骨”扱いだ。
ずんーー
と地面が揺れた。
案の定、足の付け根にある殻取っ払うと重さに耐え切れなくなったらしい。そりゃそうだろ。
この殻の内側に筋肉が付いてたんだからな。
足元に来とった殻を転がすと、ぶつかり合ってカラカラっと乾いた音を響かせる。
「へっ、朝飯はザリガニコースと洒落こむか!」
ピルルルルー
後は一方的な剥ぎ取り作業だ。
スピカの歌声をBGMに、俺は森ザリガニの解体を始めるのだったーー。
1
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる