えっ!? そっち!? いや、骨法はそういう意味じゃ……。◇兎オヤジの見聞録◇

たゆんたゆん

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第3章 塒と亡骸

第36話 えっ!? そんなに可怪しい!?

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 「だ、か、ら。無けれりゃ作ればいいんだよ。ここにデッカイ風呂をな」

 「し、主君。われは耳が可怪しくなってしまったのだろうか? 今風呂を作る・・・・・・と聞こえたのですが?」

 ああ、ごちゃまぜになってる。の話し方がかしこまっているよりも良いな。

 というか、やっぱりヒルダはあのエルダー・リッチだろう。口調がそっくりだ。外見は言うまでもねえが。どういう事をザニア姐さんたちがしたのか知らんが、随分乱暴な事をしたんじゃねえだろうな?

 勘弁だぞ、後で尻拭うのはよ……。

 「あ~ヒルダ」

 「何でしょうか、主君?」

 「それ。敬語なしな」

 「は?」

 「吾って言ってんのに、敬語だと何て言うかむず痒いんだよ。だから素の話し方でいい」

 「し、しかし」

 「主君って言いたいなら、素に戻せ、良いな?」

 これくらいは主としての威厳を示してもバチは当たらんだろう。図らずも、主従の関係になったんだから、少しは命令することにも慣れとかんとな。

 「ーー分かった」

 ヒルダの吐き出した大きな溜め息と一緒に、言葉が足下に落ちて行ったような気がした。

 「んじゃ、一丁取り掛かるか。まずは、邪魔な死体を回収して場所を確保っと」

 首なしの胴体に触れて、ズルリと空間に引っ張りこむ。

 間髪入れず、ヒルダが追いすがって質問してきた。

 「えっ!? 主君、今のは何だ?」

 「何って、【無限収納】だぞ。ヒルダも持ってるだろ?」

 「主君、何を言ってるのだ。吾が持っているのは【空間収納】だぞ? 容量にも限りがあって、ドラゴンの頭部がやっと入るかどうかだ。それに【無限収納】など勇者だけが持つスキルだと聞いている。主君は勇者なのか!?」

 はっ!? 勇者だけ? ザニア姐さん、それ言っといてくれよ。

 「断じてそれはない。論より証拠だ。【ステータス】」

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨法師
 【レベル】Lv1
 【生命力】1460 / 1460
 【魔力】1443 / 1443
 【力】145
 【体力】147
 【敏捷】155(150+5)
 【器用】147
 【知性】147

 【ユニークスキル】
  無限収納
 ☆骨法 Lv20

 【アクティブスキル】
  鑑定眼 Lv3

 【パッシブスキル】
  回復強化 Lv10
  耐痛 Lv10
  耐魅了Lv1
 ☆耐火Lv1

 【称号】
 ☆竜殺し

 【装備】
  ベルト
  ポーチ×2
  ナイフ×2
  手斧×1(破損)
  解体用骨刀×1(破損)
  森躄蟹の草摺(破損)
  森躄蟹の籠手(破損)
  森躄蟹の脛当て(破損)
  森躄蟹の胸当て(破損)

 【従者】
  ヒルデガルド・セイツ・アイヒベルガー(隷従)

 【所持金】
  0

 「主君……」

 「ほらな? 勇者じゃねえだろ?」

 「色々と言いたいことがあるが、これはLv1のステータスではないぞ。それに、こっぽうし? 吾は聞いたこともない職だ。更に、だ。更に言えば、スキルレベルは上限が10だと決まっている。なのに、何故主君の骨法というスキルはLv20まで上がっている? 勇者ではないということを除外したとしても、主君、これは可怪しい」



 えっ!? そんなに可怪しい!?

 

 「……そんなにか?」

 けど、思い出してみれば【耐痛】スキルがLv10になった時、これ以上は上がらなんじゃっていう俺の推理も当たってたって事だな。

 「うむ。主君だから言うが、これは開示してはダメだ。早急に隠蔽スキルを獲得したほうが良い」

 「ヒルダはそのスキルあるのか?」

 「ふっ、吾もない」

 無い胸を反らすヒルダ。

 「無いのかよっ!」

 思わず突っ込んじまった。

 「ふふふ」

 「ーー? 何が可笑しい?」

 口元に手を当てて女らしく笑う仕草に、生前の面影が見えた気がしたが「骨だよな?」と目を凝らしてき返す。

 「いや、そこの火竜に殺された勇者が吾の親友だったのだが、こういう掛け合いをよくやっていたなと思いだしたのだ」

 意外と重い話だった。



 ーーいや、待て。



 「今、勇者が親友だったと聞こえたんだが?」

 なら、勇者に詳しいのもうなずける。色々勇者のステータスも見てるだろうしな。

 「ああ、モナのことだな。そうだ。勇者召喚でこの世界に来た気高い女性でな。年も近かったのと、容姿もよく似ていた事もあり、姉妹のように過ごしていたのだ。ここに来るまでは……」

 ……今聞く話じゃなかったな。またやっちまった。

 「すまん。古傷をえぐるつもりはなかったんだ」

 「いや、良いのだ、主君。確かに辛い記憶だが、それを補って余りある事を目撃できたのだ。皆の墓前に良い報告が出来る」

 軽く頭を下げると、ヒルダが慌てて胸の前で両手を振る。何だかんだ言って、完全に仕草は女だな。ま、そういう頭でいれば変なことを言わんでも済むか。

 「ヒルダが色々知ってるのに合点がいった。また色々教えてくれ。取り敢えずは、でかい解体用の風呂を作る」

 「うむ」

 そう言いながら、俺は千切れて辺りに転がってる小指と、御首級みしるしも回収しておいた。ちょっとこれで試したいこともあるしな。さてと。

 「【骨形成】」

 俺は足下に広がる白骨の絨毯じゅうたんに手を掛けて、莫迦ばかでかい解体用の風呂を作ることにしたーー。





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