77 / 333
第1章 西挟の砦
第61話 えっ!? どんだけ莫迦正直なんだ!?
しおりを挟むそこに見えたのは、裸で乱交を繰り広げ、酒らしきものを呷って騒ぐ輪の中心で、手足を綱紐に縛られ四方に馬に引かれようとしてる全裸の美女の姿だったーー。
四つ裂きかよ。
「ああ、クソッ! んなもん見せられて放っておける訳無えだろうがよっ!!」
「「「なんだっ!?」」」
物陰から飛び出して、剣鉈を振るう! 野郎どもの声が聞こえたが知らん!
幸い、レベルが上がってるお蔭で、馬が走りだす前に全部の綱紐を断つことが出来た。
「がはっ! がはっ! ごほっ!」
「「「「団長っ!」」」」
地面に落ちて、咳き込む素っ裸の美女の周りに、おんなじように素っ裸の女たちが駆け寄って来た。乱交で組み敷かれている女たちとは違うようだな。
「兎人族だと!?」「ぎゃははは! 綱切られてやがる!」「どっから湧いて出やがった!?」「増援か!?」「見ろ、雪毛のおっさんだぜ」「いや、人気はねえ」「お前ら、残念だったな! ちょっと命が伸びただけだぜ?」「可愛がってやるからよ!」「ぎゃははは!」
莫迦どもの耳障りな笑い声が、俺を苛立たせる。
「ごはっ。す、すまない。誰かは、知らないが、がはっ。た、助かった。礼を言う」
「そりゃどうも。お楽しみだったんなら、悪いことしちまったかと思ったが、問題ねえみたいだな」
「貴様っ!」「待て、グニー!」
掴みかかろうとしてくる女を仲間の女が抑えてくれた。それなりに眼福だが、体の表面に見える擦り傷や痣、筋肉を見る限り兵士か傭兵のどっちかだろう。運悪く捕まった口か?
それよりも。
「なあ、あんたら盗賊か?」
周りをむさ苦しい野郎どもが、武器を片手に環を作って逃げれないように寄り始めた。ボリボリと後頭部を掻きながら、気怠そうに訊いてみる。どんな反応が帰ってくるかーー。
「我らをあんな奴らと一緒にするな!」
別の女が吠えた。おぉ怖っ。
女の方は見る限り人族ばかりのようだな。
「すまんね。状況が呑み込めてない中で、そこの姉ちゃんが裂かれそうだったからよ出てきちまった。確認だが、あんたら含めた姉ちゃんたちは皆仲間か?」
「いや違う。仲間も居るが、女たちは皆ここにいる盗賊に連れてこられた被害者だ」
団長と呼ばれた姉ちゃんが手首を摩りながら答えてくれた。まだ手足の感覚が戻らなんだろう。
「それを言えばあんたらもだろう。どうせ、正義を振りかざして正論をぶつけたら、人質出されてミイラ取りがミイラになっちまった口だな」
「「「「「ーーーーっ!」」」」」
そう行った途端、物凄い形相で睨まれた。
えっ!? どんだけ莫迦正直なんだ!?
「おお怖え。んなに睨むなって」
穿られたくない傷に塩を塗っちまったようだ。
「「「「「…………」」」」」
「んだよ。当たってるのか? かぁー目出度い頭だね。ま、それだけ聞けりゃ十分だ」
「お、おい! 何処へ行くつもりだ!?」
「決まってる。おいたが過ぎる莫迦どもにお灸を据えにさ」
「き、きゅう?」
あら、灸も通じないのか。参ったね、こりゃ。
「兎のおっさんが格好付けて、無様に死ぬのを見たら心も折れるだろうさ」「ぎゃはははっ! 違いねえっ!」「おっさん、黙って引っ込んでりゃ死ななかったのによ。運が悪かったな!」「兎人の腿肉は俺が貰う」「お、大将珍しくやる気じゃねえか!?」
盗賊の中にも獣人が居るってことか。
食み出し者は何処に行っても居るってこったな。
だが、やって良いことと悪いことがあるだろうがよ。
「ま、お節介の押し売りだ。気にすんな。あと、出来りゃあの話だが、他の姉ちゃんたちを保護してくれると助かる」
「待て! 何を言ってる!? この人数に1人だと!? いくら獣人といえど、死にに行く気か!?」
「ああ、心配してくれんのかい? ありがとさん。運が良けりゃ死なねえだろうさ。ま、行ってくらぁ」
背中に投げ付けられる声に振り返らずに答えると、手を振って姉ちゃんたちと距離を取る。ま、下衆の考えそうなことだが、どうせ「殺されたくなかったら」って事をやりに来るんだろうよ。それまで持てば良いがな。
「何だぁ? 腰の獲物は使わねえのかよ!?」「ぎゃははは! 笑い過ぎて腹が痛え!」
ざっと見て4、50人は居そうだな。大所帯の盗賊か。
頭は何処だ? 莫迦どもにゆっくり歩いて間を詰めながら、周囲を観察する。有り難い事に兎の目は360°の視野があるんだぜ。ちらっと見るだけで大体の配置が見て取れるが、それらしい男は見えねえ。
逃げたか? まあ良い。
久し振りに、思いっきり行かせてもらおうかね。
「因幡流古式骨法術、ハクト。推して参る」
誰に聞かせるでもなく、気持ちの切り替えのおまじないのように小声で名乗りを上げると、俺は無造作に男たちの振り下ろす白刃の下に一歩踏み出したーー。
1
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる