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第三章 商会を束ねる者
第六十四話 気付き
しおりを挟む僕がゴーレムと、ギル兄がマニアと戦った激闘の一日。
あれから数日が経った。
ギル兄は動けない身体で帰る事もままならず。僕が背負ってその場を脱する事に成功した。脱出の際に、カエラさんが階段を下りてくる所で合流する事が出来た。
合流したばかりの時は凄く泣きそうな表情をしていて、安堵と共に来る感情の波に涙を流すかと思ったけれど、カエラさんは自分の顔を張ると僕と一緒にギル兄を背負ってくれた。
彼女の中でも、何かが変わったのだろうか。
そこから、ギル兄を病院に預けてカエラさんを家に返して、僕は一人で宿に戻った。
ギル兄は動けずに苦しそうな表情で僕に手を伸ばしては「先に行け」と告げる。きっと、旅を続けろという意味だとは思うけれど、出来ればギル兄と一緒に旅は続けたい…。
病院では光魔法による回復をしてもらったけれど、ギル兄の身体は魔法に対する耐性が強過ぎて影と闇以外の魔法による回復は意味が無いのだとか…それでギル兄は影魔法での回復が上手かったんだ。
全てが終わった訳じゃないけれど、この街での出来事が終わりを迎えた…そんな気がしていた。
――第六十三話―― 気付き
☆ギル視点
入院生活ってのは傭兵時代にもあったけれど暇で暇で仕方が無い、何もする事が無いだけなら良いけれど、見知った奴が傍に居ない環境っていうのはそれだけでストレスになる。
マニアとの戦いの後、動けなくなった俺はそのままこの病院に入院、魔力の使い過ぎから衰弱した身体は魔力その物を回復させる事も遅くなる。故にしばらくは動けない。
とはいうのも、今回の事は俺があの魔法を使ったから招いた事で、俺としてはアルには先に別の街に向かって欲しい…。
そうした方が、あいつも旅の経験が付くしな。出来ればずっと一緒に居てやりたかったけど、これは良い機会なのかもしれない。
身体もロクに動かせないし、何かを望む事も出来やしない…正直、時間を持て余している。
この時間をアルの修行に使ってやれたら良かったのだけれど、この前、見舞いに来てくれた時にメモ用紙に修行内容を書いておいたし取り敢えずは大丈夫だろう。
一人で旅に…アイツは行けるのだろうか。
行け…ちまうのかな。
一人になって思い出すのはアルの事ばかりだ。自分の弟子だから、そんな言い訳で表面を塗り固めても、そいつは簡単に落ちるペンキだ。自分の悲しみとか、後悔とかの涙で簡単に剥がれ落ちる。
俺はアルの事を、弟子という存在以上で見ている。
親友の息子だぜ、なのに俺は、あいつの真っ直ぐな所や、放っておけない所とか、背負った運命に決してめげない前向きな部分も受け身になると弱い所も何もかも…。
嗚呼、分かった。
俺はこの数週間、傍でアイツの成長を見守って来た。見守ってきて、何度も感じた事があるんだ。
俺はアルを、手放せなくなってきているって事実に。
そうか、簡単な事だ。俺は怖かったんだ。手元にいるアルが離れていくのが、だからきっと、今のこの考えも嘘だらけ、アイツが一人で旅立って欲しいと考えておく事で、それをアイツに否定してもらう事を期待していたんだ。
もう誤魔化せるもんじゃない、俺があいつに抱いているこの気持ちは―――紛れも無く。
だとしたら、俺も傍に居る訳にはいかねぇな、アリスの選択は正しかった訳だ。俺も今なら気持が分かる。
きっと、アルに手を出してでも、俺はあいつの心を欲してしまう。まっすぐで、可愛くて、純真で、だけど…それだけじゃない、怒るし、憎悪だって抱くし、そういう素直なアルが…。
修行にも取り組む時にまっすぐで、自分の置かれた環境にへこたれねぇで、だけど時折弱さを見せて、それでも前を向く。そんなアルが…。
俺は、好きなんだ。
年齢差はどれだけだ?馬鹿みたいな年齢差だ。
性別だって同性、とはいえ好きになったら仕方ない、アルの事を考えると胸の奥が暖かくなる。考えているだけで幸せって思える様な落ち着きを得るんだ。
これが好きってことだよな、これが守りたいって想いの延長線上に存在する大切な感情だよな。
…一緒に居てぇなぁ。
だけど、アルが成長する為には一人旅とか、自分で仲間を作る事が大切になって来る。
好きだ。好きだから一緒に居たい、だけど俺と一緒に居るって安心感は、あいつの成長を阻害する要因になる。
アリスもこんな気持ちだったんだろうな、はは…あいつ、大人だな。俺よりもずっと大人だ。
好きだぜ、アル。
誰よりも好きだ。
細かなエピソードなんて必要ない、俺はお前と旅をして、お前の頑張りを見て、お前のこれまでの一歩一歩の積み重ねを見て恋をした。
決定的なエピソードが無いのが俺らしい…。
さぁ、アルに選択肢を迫ろうか、答えが一つの残酷な選択を。
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アル視点の「嫌だと差し剣だ」→叫んだですか?
ご指摘ありがとうございます。確認いたしまして修正させて頂きました。お読み下さり、誠にありがとうございますです。
退会済ユーザのコメントです
IFなのですよ!もしもの世界のお話なのでアル君は相変わらず被虐体質なのですよ!
…まぁ、もう予想付いてるかと思いますがこれからさきのえっちっちーなシーンでは場合によってSとMのアル君を書かせて貰う事になるかと思うです!僕としてもそれを楽しんでもらえたら幸いなのですよー!ご感想、ありがとうございました!
このタイトル昔アリスソフトで出てたので変えたほうがいいのでは?
知ってる人がいて感激の中でやっぱりそうですかねという気持ちなのです!!!お読み頂きご意見頂き同士発見の流れを感謝で表せばいいのか分からないです!!とにかくありがとうございます!