俺の高校には『放課後 殺人クラブ』がある件

ジャンマルコ

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お城

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路地裏を出て、明るい場所で俺達は話し合った。

「さっき、イノリを捕まえてた奴らが、初心者は王様のところに行けって、
 言ってたんだけど、おそらく城に行くといいじゃないかな?」

「そうだね、ゲームの王道だもんね、行ってみようよ」

俺達は、街の中心に見えている城に向かう事にした。
石畳の上を歩いていると、海外にいるような気持ちになる。
出会ったばかりの女の子《でありますように…》と並んで綺麗な街を歩くなんて、
なんか、俺、Lvが上がった気がします!

でも、意識せずに、自然に歩こう。
空も見よう。

「イツキって、ゲームはよくするの?」

「ああ、大好きだよ…おおげさじゃなくて、ゲームの為に今は生きてるかな」

「そうなんだ!私もゲーム大好き!ゲームって、リアルと違って夢があるよね!
 なんか、友達とかにゲームやってるって言うと、オタクだーとか、暗いとか言われるけど、
 なんなんだろうね?現実より、絶対こっちの方が面白いのに…」

「ま、いいんじゃない?わからない人は、気にしないでさ…俺達が楽しめればいいよ」

俺は、すこぶる楽しいっす!

「そうだね…せっかく、夢の「ギル2」に参加できたんだもん!楽しまなきゃバチが当たるよね!」

「ああ」

良かった…イノリは結構、普通のやつみたいだ、素直そうだし。
VRMMOって変な奴も多いから、ソロプレーの方が性に合ってたけど、
こんな感じの奴となら、一緒にいても害は少なそうだな。
さっきの男達みたいに、マナーの悪いのもいるって事は、やっぱ厳しい審査も万能じゃないって事だろうし。
システムに慣れるまでは、複数でプレイした方が、レベル上げも楽だし、情報も入って来そうだしな。
ちょっと持ちかけてみるか?

「イノリ…」

「なに?」

「良かったらさ、しばらく一緒にプレイしないか?」

「一緒に?」

「ああ…さっきの奴らに、イノリは一人でプレイする、って言ってたのを聞いたんだけどさ、俺らまだ、Lv1だろ?
 もう少し成長するまでは、二人とかの方が効率いいかなって…もちろん、断ってくれてもいいけど、どうか な?」

イノリは、手をアゴの下に当てて少し考えている。
言うの早すぎたかな?
でも、こういうのは、思った時に言っておかないと、なんか色々考え過ぎて、言えなくなっちゃうんだよな。
特に俺なんか、考え過ぎてしまうタイプだからな。
まぁ…ダメモトだし、断られたっていいんだけど。
別に告白してるわけじゃないんだから、全然いいんだけど。
さっき会ったばっかりで、急に好きになるワケないんだから、別にいいんだけど。
見た感じは可愛いし、今の所は女の子っぽいけど、ネカマの可能性もあるから、断られたって別にいいんだけど。
キャラメイクで、髪がピンクっていうのは、少しなんで?って思うけど、まぁ似合って……

「いいよ!」

「え?…マジで?」

「うん…最初は私もソロプレイ派だから、一人でって思ってたけど、イツキみたいな感じの人となら、うまくやれるかも」

「良かった…断られたら、どうしようって思ってたよ…ハハ」

「うん、ごめんね!私ちょっと考え過ぎなところあるから」

「いや、俺も」

「クスッ」

イノリが笑ってる。
ゲームだってわかってるけど、なんか嬉しくなるな。
現実でも、俺がこのくらい自然に自分を出せたら、もっと楽になるのかな?
っつっても、実際はそうもいかないもんなぁ…
なんでだろ……って、イカンイカン。
また余計な事を考えてる。
素直に楽しもうっと!

俺達は城について、中に入ってしばらく歩き、玉座の間についた。
大きな扉を開けると、王様の姿をした人がパソコンでなんかしてる。

「イツキ…あの人かな?」

「た…ぶんな…なんかイメージと会ってないけど」

入り口で、コソコソ話している俺達に気づいて、王様が大声を出す。

「あ…初めての方ですよね?……どうぞこちらへ!」

おお…王様っぽさナシか。

俺達は言われるまま王様の前に行った。
近づくと、王様は明らかなつけ髭をした、女の人だ。

なんだ?

「どーも、ようこそ「ギルティ&ギルド」の世界へ、わしが王様じゃ…お前達は勇者としてこれか…ぶん…あれ?…え~と…」

王様は、画面を見ながら棒読みで言い、おそらくセリフを見失ったんだろう。
なんだよ、運営はどうなってるんだよ……ったく…

「あの…別にいいっすよ?俺達が今から何をすればいいかだけ、教えてもらえれば…」

「……そう?済みませんね!ちょっと本職の人が急に病欠になっちゃって、あたし初めてこれやらされたんですよ?
 ひどいでしょ?ってのは、関係ないですね…汗汗…」

汗って…

「えっと、なんか二人とも賢そうなんで、細かい設定は、はしょりますね!
 あの……察してください!
 え~私は、いつもは事務職してます、レイナって言います。
 知ってると思いますけど、二人にはこれから、罪人をやっつけてもらいます。
 もし死んだら、月に3回までは生き返れます。
 4回目死ぬと、来月まで復活できませんので、気をつけてください。
 場所は、街の教会に行きますので、よろしく。
 あと、街にある酒場の中にギルドがありますから、仲間とか情報はそこで、どーぞ。
 あと……なんか、あります?」

なんかありますって……てきとーだな、この人。
それに、喋ってるとヒゲが取れるみたいで、何度も付け直してる。
世界観…どうした…

イノリが、質問をする。

「あの、経験値とかお金とかは、どうなるんですか?」

「ああ…ステータスは、見ました?」

「ええ」

「同じです。おかねーって考えてもらえれば、出ますから」

「ああ…そうなんですね」

「物を買いたい時も、お店の人に買いたいって思えば、払えますから」

「はぁ…」

「そして、今二人には3万ルギあげましたので、これで初めの装備を揃えてください……
 あっ、あとコレは重要、ここは『ギルティア』って言う街なんですが、ここには罪人はいなくって、
 罪人のいる『シュラ』までは、船で行きます。
 船は、二時間に一回港から出てますから、時間配分を間違えないように。
 あと、船も直接『シュラ』には着岸しません。
 罪人が船に乗ってくると、危険ですからね。
 皆さんは、船で近くまで行って、空を飛んでから『シュラ』に行ってください」

「飛ぶ!?」

俺達は驚いた。

「ええ、魔法っていう設定で飛べるようになってます。
 ただ、これは行き帰り用になりますので、それ以外では使えません」

イノリが目を輝かせてる。
「魔法で飛べるんだって!イツキ!すごくない!?」

「すげーな…それだけでも、かなり価値ありそうだよね」

「え~……そんなとこかな?
 あの、もしなんかわかんなければ、いつでも来てください。
 もうすぐ、シフトで次の王様が来るので、そっちの方が詳しいと思いますよ」

「あ、はい…イノリなんか聞いとく事ない?」

「うん、とりあえずは」

このレイナに聞いても、仕方なさそうだしな、また気になれば今度来よう。

「レイナさん、ありがとうございました」

「あ、すいませんね…なんか適当で…。
 お詫びと言ってはなんですが、二人とも千ルギだけ、サービスしときますね」

「ああ、どーも、では」

俺達は、城をあとにする。
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