俺の高校には『放課後 殺人クラブ』がある件

ジャンマルコ

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酒場

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城を出て、王様 兼 事務職のレイナさん(なんだそりゃ)に言われた通り、俺達は酒場にあるギルドに向かった。

鉄と木で作られた無骨な建物で、天井も高く、広さもかなりある。
イノリも酒場の意外な大きさに驚いている。

「すごーい…こんなに広いんだね…なんかイメージでは居酒屋みたいな小さいとこだと思ってたよ」

「確かに広いな…うちの学校の体育館くらいはあるだろうな…」

俺の言葉にイノリが反応する。

「うちの学校…イツキって、学生なんだ」

「ああ…まぁ隠すような事でもないから、言うけど…俺は高校生だよ」

「わぁ…おんなじだよ!私も……高校生なの」

やりぃ!

「へぇ…見かけた時に、同い年くらいかなって思ってたんだけど、やっぱりそうだったんだな」

「うん…なんか、見た目はそのままで行こうって決めてたから、変えなかったんだ」

「ハハ…それもおんなじ」

「クスッ…気が合うかもね」

「だな」

ちょーいい感じじゃん!
ホクロが口元にあるから、そうじゃないかってピンときてたけど、なんかキモがられると嫌だから、
言わないでおこう。
舞い上がってても、冷静な俺だ。
好きだぞ、俺。

「イツキ、あそこがギルドのカウンターだよ、行ってみよ」

イノリは俺の腕を掴んで、ギルドカウンターに引っ張っていく。

早くもボディタッチ発生!
フォトショ機能は……ないか。

カウンターでは、うさぎの耳をつけて金髪のくるくるヘアーの女の子が、対応してくれた。

「ルーキーさんですね!どーも、ギルドの受付嬢、アヒルです」

うさぎだろ…

イノリは、うさ耳に見とれてる。

「あのー…うさ…アヒルさん、俺達はまず何をしたら…」

「えっと、先にここに名前を書いてください。
 その後に、コレを渡しておきますので、読んで項目を決めて○をつけたら、また来てくださいね。」

うさ…アヒルは、簡単な説明が載っている紙をくれた。……ややこしい。

俺達は、名前を書いた後、酒場のテーブルに座ると、今度は猫耳をつけたロールヘアのメイドがコーヒーとケーキを持ってきた。

「どうぞ!当店「朱美No2」よりルーキーさんへのサービスだニャ!」

なんだその名前…

イノリは気にせずに喜んでる。

「わぁ!どうも、ありがとうございます!」

「頑張ってくださいニャ!稼いだら、ここでお祝いしてニャ!」

そうするニャ!
恥ずかしさはないのかニャ?
仕事が終わったら、深いため息をつくんだろうニャ!

俺は、説明書に目を通す。



   ギルドでは、様々な情報を提供しています。
   登録しているメンバーなら、パーティーに紹介できます
   初めの武器をプレゼントします

   ○剣 ○斧 ○槍 ○ハンマー ○短剣

   職業が選べます

   ・セイバー (武器の攻撃力が2倍)
   ・アーマー (防具の防御力が2倍)
   ・モンク  (速さ、素手の攻撃力が2倍)
   ・ヒーラー (道具使用効果が2倍)

   一言メモ:装備は死んだら罪人に取られてしまいますので、死なないでね
   
   詳しくは、受付嬢まで!

なるほど、初期のジョブは4種類か。
Lvに応じて増えていくタイプだな。
魔法使い系は、あとからか…。
装備がなくなるって事は…最初は金も少ないから、これがポイントになりそうだ。


「イツキ…死んだら装備なくなっちゃうんだね…」

「そうみたいだな…じゃあ、毎回揃え直さなきゃいけないのか…簡単には死ねないって事だな」

「だね…ああ私、職業なんにしようかな~?
 やっぱり、無難にセイバーかなぁ」

「でも、装備の事を考えると、モンクもありって事だよ」

「ヒーラーだと、パーティーに有利かもね…あ~ん…悩んじゃうなぁ…」

確かに、悩ましい。
だが、これがゲームの醍醐味だ。
嬉しい悩み。
現実では、滅多にないんだよなぁ。
現実の悩みは、本当に苦しい事、面倒な事ばっかなんだ。
同じ悩みなのに、なんでこうも違うんだろう。

「ねぇ…イツキ…どうする?」

「ん?……ああ、ごめん……他の事考えてた」

「そうなんだ……あのさぁ、ちょっと思ったんだけど…」

「何?」

「さっき、しばらく一緒にいようって言ったでしょ?
 あれって、二人でパーティーを組もうって事なんだよね?」

「ああ…その方が早めに強くなれると思わない?」

「だよね!……じゃあ、あたしヒーラーにしよっかな?
 そしたら、イツキが何を選んでもサポートできるし、パーティーっぽくない?」

「そうだけど……いいの?別に、セイバーが二人だって戦えないワケじゃないぜ?
 好きなの選んでいいよ?」

「ううん、あたしヒーラーになるよ!誰かを助けるの、素敵だしね!」

「そうか……じゃあ俺は、無難にセイバーにしておくよ。
 まずは、普通の味ってのが、俺のやり方だから。
 きっと、またLvが上がれば、新しいジョブも増えるだろうしな」

「決まりだね!…ねぇ武器は何にする?」

「俺は、無難だから剣にするよ」

「じゃあ、私は援護用で、リーチの長い槍にしよっと!
 楽しいね!なんかワクワクしてきちゃった!」

「ああ、俺も!よし……とりあえずは、決まったからカウンターに行こう」

二人でカウンターに向かった。
アヒルが受付をしてくれる。

「決まりましたね!では、まず剣と槍をお渡ししますね。
 それと、お二人はパーティーを組まれるんですか?」

イノリは俺を見てうなずく。
可愛いな、コイツ……なんか、小動物系だからか知らないが、抱きしめたくなってきたぞ。
ただの性衝動か…?

……あとにしよう。

「…はい、まずは二人でやってみようと思います」

「わかりました、パーティーの名前とか決めてます?」

あ、それも決められるのか。
イノリを見ると、首をかしげている。

「それって……後でも決められますか?」

「はい、ではひとまず二人の名前、『イツキとイノリ』にしておきますね」
 
フォーク歌手みたいになったな…
 
「では、軽く説明をしますね。
 これからは、何をしても構いません。
 戦いに行くのなら、防具と道具をお店で揃えてください。
 船は、港から出てますので…お城の南側です。
 
 ただ、お二人はまだルーキーさんなので、道場で戦い方を教わる事をお勧めします。
 場所は、街の中に看板がでてますので、その通りにどうぞ。
 あくまで、自由参加となってます。

 何か質問はありますか?」

イノリと目を合わせると、首を横に振ってる。

「とりあえず、大丈夫です」

「では、がんばって罪人をたくさん処刑してください……あっ、ピョン!」

最後だけ、キャラ守ったのか……つーか、ガァーって言えよ、アヒル。
太らして肝臓とり出したろか。
ん?別の鳥か?

俺達は武器を抱え、ひとまず街へ出た。


今言える事は、俺の戦いは、まだ始まらない……
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