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第三章
12 ローズの英雄
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「キャっ! キャアアァァァァァ!!!」
後少しでダークマドウに一撃を食らわせられる射程距離に入ろうとしたところで、突然、何もされていないはずのローズが激痛に悶えた声を上げたのである。
それと同時にダークマドウが口を開いた。
「それを放った瞬間、こいつは死ぬぞ。それでもいいなら、やるがいい。」
その言葉を耳にした瞬間、フェイルは技の発動を中断し後方に大きくジャンプする。
「貴様!! その子に何をした!?」
「ふふふ、それで正解だ勇者。私に攻撃しなくとも、その勇者の光を後2秒でも発動させていたら、この娘の心臓は爆発していただろう。」
「俺は何をしたかって聞いてるんだ!!」
「いいでしょう。教えてしんぜよう。この娘の心臓には私の呪いが宿っている。それは勇者の光を感知すると、心臓が破裂する呪いだ。つまり、この子を死なせたくなければ、あなたは勇者の力を使ってはいけないという事。お判りいただけたかな? ふはははははは!!」
勝ち誇ったように高笑いを続けるダークマドウ。
ダークマドウとしては、これを告げる事にこそ意味がある。
もしも何も説明しなかったら、姫が死ぬとわからずにそのまま攻撃を続け、自分が消滅する未来もあった。
だが、その秘密を暴露した今は違う。
今代の勇者についてかなり調べたが、この勇者は心が優しすぎる。
つまり、これこそがダークマドウにとって一番の秘策であった。
一方フェイルは、予想外の事態にかなり焦っていた。
勇者の力を使えない、それすなわち、勇者として得た攻撃手段全てが使えないという事。
当然、素のステータスも非常に高いフェイルではあるが、勇者の力が使えると使えないでは、概ねその戦闘力は3分の1くらいまで下がると言っても過言ではない。
そうなれば、とてもダークマドウを瞬殺するのは難しいだろう。
だがそれよりも、カリーに自分と同じ苦しみを味合わせる訳にはいかかった。
大切な者を亡くす消失感は、とてつもなく辛い苦しみを与え続けてしまうのだ……自分がそうであるように。
それだけは避けなければならない。
故に考える時間を確保するために、一旦後方へ下がったのである。
だがその瞬間、フェイルに注意がいっていたダークマドウの隙をついて、一つの影がその後方の穴から飛び出てきた。
カリーだ!
カリーは隠密スキルを使いながらダークマドウの後方から急接近すると、ローズを肩を掴んでそのまま距離を取って逃げる。
一瞬の隙をついたカリーの行動は、ローズの救出を成功させた。
「何だとっ!?」
突然、ローズが奪われた事に驚くダークマドウ。
ダークマドウは反射的に魔法を放ちそうになるも、それをギリギリで抑えた。
なぜ魔法を放たなかったか……それは、既に距離が大分離れた為、誤射でローズを殺してしまう可能性があったからである。
もしもローズが死んでしまえば、その心臓に埋めた呪いが解除される。
そうなれば、間違いなく自分は勇者に殺される可能性が高い。
その為、一度ここは敵の手にローズを渡す事に決めたのである。
そもそも自分と離れたところで、その呪いはローズが生きている限り消えない。
つまりは、未だに自分が優勢なのには変わりがないという事だった。
「待たせたな、ローズ。もう大丈夫だ、安心しろ。俺がお前を必ず守って見せる!」
ローズの救出できたカリーは優しい笑みをローズに向けて声を掛ける。
その声は喜びに満ちていた。
「カリー!? 来てくれたのね!! 信じていたわ。」
ローズは英雄のように自分を救ってくれたカリーを見て、久方ぶりに胸をキュンとさせ顔を赤らめる。
この三年間、ずっと会いたかった。
ずっと寂しかった。
ずっと……愛し続けていた!
しかし、まだ感動の再開を喜ぶには早すぎる。
カリーとローズは一瞬だけ見つめ合うと、そのままお姫様抱っこをしたまま崖を飛び降り、フェイル達の下に向かうのであった。
後少しでダークマドウに一撃を食らわせられる射程距離に入ろうとしたところで、突然、何もされていないはずのローズが激痛に悶えた声を上げたのである。
それと同時にダークマドウが口を開いた。
「それを放った瞬間、こいつは死ぬぞ。それでもいいなら、やるがいい。」
その言葉を耳にした瞬間、フェイルは技の発動を中断し後方に大きくジャンプする。
「貴様!! その子に何をした!?」
「ふふふ、それで正解だ勇者。私に攻撃しなくとも、その勇者の光を後2秒でも発動させていたら、この娘の心臓は爆発していただろう。」
「俺は何をしたかって聞いてるんだ!!」
「いいでしょう。教えてしんぜよう。この娘の心臓には私の呪いが宿っている。それは勇者の光を感知すると、心臓が破裂する呪いだ。つまり、この子を死なせたくなければ、あなたは勇者の力を使ってはいけないという事。お判りいただけたかな? ふはははははは!!」
勝ち誇ったように高笑いを続けるダークマドウ。
ダークマドウとしては、これを告げる事にこそ意味がある。
もしも何も説明しなかったら、姫が死ぬとわからずにそのまま攻撃を続け、自分が消滅する未来もあった。
だが、その秘密を暴露した今は違う。
今代の勇者についてかなり調べたが、この勇者は心が優しすぎる。
つまり、これこそがダークマドウにとって一番の秘策であった。
一方フェイルは、予想外の事態にかなり焦っていた。
勇者の力を使えない、それすなわち、勇者として得た攻撃手段全てが使えないという事。
当然、素のステータスも非常に高いフェイルではあるが、勇者の力が使えると使えないでは、概ねその戦闘力は3分の1くらいまで下がると言っても過言ではない。
そうなれば、とてもダークマドウを瞬殺するのは難しいだろう。
だがそれよりも、カリーに自分と同じ苦しみを味合わせる訳にはいかかった。
大切な者を亡くす消失感は、とてつもなく辛い苦しみを与え続けてしまうのだ……自分がそうであるように。
それだけは避けなければならない。
故に考える時間を確保するために、一旦後方へ下がったのである。
だがその瞬間、フェイルに注意がいっていたダークマドウの隙をついて、一つの影がその後方の穴から飛び出てきた。
カリーだ!
カリーは隠密スキルを使いながらダークマドウの後方から急接近すると、ローズを肩を掴んでそのまま距離を取って逃げる。
一瞬の隙をついたカリーの行動は、ローズの救出を成功させた。
「何だとっ!?」
突然、ローズが奪われた事に驚くダークマドウ。
ダークマドウは反射的に魔法を放ちそうになるも、それをギリギリで抑えた。
なぜ魔法を放たなかったか……それは、既に距離が大分離れた為、誤射でローズを殺してしまう可能性があったからである。
もしもローズが死んでしまえば、その心臓に埋めた呪いが解除される。
そうなれば、間違いなく自分は勇者に殺される可能性が高い。
その為、一度ここは敵の手にローズを渡す事に決めたのである。
そもそも自分と離れたところで、その呪いはローズが生きている限り消えない。
つまりは、未だに自分が優勢なのには変わりがないという事だった。
「待たせたな、ローズ。もう大丈夫だ、安心しろ。俺がお前を必ず守って見せる!」
ローズの救出できたカリーは優しい笑みをローズに向けて声を掛ける。
その声は喜びに満ちていた。
「カリー!? 来てくれたのね!! 信じていたわ。」
ローズは英雄のように自分を救ってくれたカリーを見て、久方ぶりに胸をキュンとさせ顔を赤らめる。
この三年間、ずっと会いたかった。
ずっと寂しかった。
ずっと……愛し続けていた!
しかし、まだ感動の再開を喜ぶには早すぎる。
カリーとローズは一瞬だけ見つめ合うと、そのままお姫様抱っこをしたまま崖を飛び降り、フェイル達の下に向かうのであった。
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