チート装備のヤンデレ女勇者〜追放された幼馴染を探すのは、魔王を倒すより難しい〜

キミちゃん

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12 シャナクの勇姿

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「なんだありゃ! 壁だあー! 海に壁が見えるぞぉー!」


 ビビアン達が乗る船の、物見台から声が上がる。

 その声は大きく、船内にある船長室にも伝わった。


「どうした! 何が見えるって!?」


 船長室から飛び出すヒゲモジャの船長は、その声を聞いて急いで外に出ると物見台に登る。


「あれは……壁じゃねぇ! すげぇ数のモンスターだ! 急いで迂回しろ! オメェら面舵いっぱーい!!」

 
 船がその壁に近づくにつれ、その全容がハッキリ見え始めた。


 目の前に映るのは、壁ではない。

 あれは、海の天災と呼ばれる


    【大魔王イカ】


であった。


 長年船に乗って生きてきた船長ですら、直接目にするのは今回が初めてだ。

 だがその言い伝えは、船乗りの間では有名である。

 それを見た者で、生き残った者は殆どいない。

 過去に【大魔王イカ】が海に現れた時、十台の船が海の藻屑となった話は、船乗りにとって悪夢として伝えられている。

 しかし、今回の悪夢は


   【大魔王イカ】


だけに限らなかった。

 【大魔王イカ】の周りには、その下位種である

   【クラーケン】

を筆頭に、無数のモンスターが集まっている。


 正に海のモンスターハウス状態だ。


「船長! 無理です! 間に合いません!」


 船員達は、鬼気迫る勢いで叫ぶ。

 既に何人かは、生存を諦めていた。

 そんな船員達を必死で鼓舞する船長。


「馬鹿野郎! それでも海の男か! やるんだよ! やらなきゃ、みんなまとめてお陀仏だ!」


 その声を聞き、船員達は大急ぎで引き返そうと必死になったが、不幸な事にその魔物の群れは、此方にグングン近づいてきた。


 しかし、そこにまさかの救世主が現れる。


 【ギガナゾン】


 突如、船に響く呪文の声。

 そこに現れたのは、旅の賢者であった。

 その男が魔法を唱えると、海が大爆発する。


 海に轟く、特大の爆発音。

 更にその賢者は、魔法を続けて放った。


 【ゴンベギラ】


 その魔法は、最上級の火炎系範囲魔法。

 広大な海が一気に燃えさかる。


 そして赤く染まる海では、モンスター達の悲鳴が響き渡った。


「ぎゃーー! グェーー!」


 船にいる者達は、その光景を生み出した救世主に視線を向ける。


 そう、その救世主こそ、ビビアンの従者


   賢者シャナク


そのものであった。

 
   シャナク が あらわれた!
   しかし まもののむれは
   まだ こちらに きづいていない!

 
 シャナクは、モンスターとの距離があった事から、その後も次々と魔法を連発する。

 賢者にとって反撃が来ない距離にいるモンスターなど、ただの的でしかなかった。

 そして海に集まっていた天災級のモンスター達は、為す術なく次々と塵となり、魔石に変わっていく。

 シャナクにとって、海に落ちた魔石を回収できない事だけが、唯一の不幸だった。


 シャナクの勇姿に湧き上がる船上。


「賢者様だ! 賢者様が来てくれたぞ!」

「助かる! 助かるぞ!」

「賢者様ばんざーーい!」


 船員達はシャナクが次々と大魔法を連発し、モンスター無双している姿に歓喜した。

 そして当の本人も、脳みそからアドレナリンがドバドバ出るほど大興奮である。


 ぎ、ぎもぢぃぃぃ!


 シャナクは、ビビアンと旅を始めてからずっと活躍の場が無かった。

 それが今まさに、ここは彼だけの独壇場となっている。

 今この時こそ、シャナクにとって人生で一番輝いている瞬間であった。


 周りの声援が、シャナクに力を与える。

 シャナクは、それに応えるように次々大魔法を連発した。


 ギガナゾン!

 ゴンベギラ!

 ブリザック!


 その魔法によって、次々とモンスターが消えていく。


 その光景を見て、シャナクは震えた。


 エ、エクスタシーー!!

 フォォォーー!


 しばらくすると、シャナクは自分に酔い始める。

 今の私は最強であると……。

 距離があって反撃されない事から、調子に乗ってしまった。

 そして調子に乗りまくったシャナクは、もっと目立ちたくなり、物見台の上に上がっていく。


「私が賢者シャナクだぁ!! どこからでもかかってこんかーーい!」


 シャナクは今までの鬱憤を晴らすが如く叫ぶ、


 今までが悲惨すぎたせいで、その反動がここにきていた。


 たがしかし、結果としてこのシャナクの働きが、船を救ったのは事実。


 このシャナクの卑怯な……否! 


 計算し尽くされた魔法により、海に現れた殆どの魔物は殲滅されるのであった……。

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